十四 エピローグ
それから三日間、弘樹はワタルの部屋に通いつめた。
そしてドラマーのもつとびきり優れたリズム感覚で、出てくるゴキブリを次々と退治する。
野次馬半分で見にきた哲哉は、もしも自分のうちに出たときは、弘樹に駆除を手伝ってもらうことを決意する。
あらかたいなくなったところで、最後の仕上げにワタルは害虫駆除を行った。
それが功を奏し、以来今日までゴキブリに遭遇することはない。
哲哉と沙樹は弘樹のアドバイスに従って、自分の部屋のベランダにおいた鉢植えに殺虫剤をかけた。
哲哉は出てきたゴキブリを難なく退治したが、沙樹はまたもや顔に飛びつかれる。
あまりの恐怖に大声で悲鳴を上げてしまい、事件と早とちりしたマンションの管理人さんに迷惑をかけてしまった。
沙樹のゴキブリ嫌いはこうしてますます度を増していくのだった。
台風は思わぬところに爪痕を残し、去っていった。人知を越えたところにまで災害を引き起こす自然の力に、驚異と同時に偉大さを感じずにはいられない哲哉だった。
「また一つ、教訓が増えたな……って、んなわけ、ねーだろ! ったく」
そうですね。おそまつさまでした。
—終わり—
最後までお読みくださってありがとうございました。
基本的に書くことのない後書きですが、今回は少し入れておいた方がいいと思い、書いています。
サスペンスなのに「ヒューマンドラマ」になっている理由は、最後まで読んでいただけたらわかると思います。
まさかこんなオチで「サスペンス」や「ミステリー」を名乗ると、推理小説を書いてらっしゃる方に申し訳ないですものね。
沙樹の経験は、作者の実体験でもあります。正直、死ぬかと思いました。
どのあたりが実体験なのかは、読まれた方のご想像にお任せします。
それから「〇〇が高層マンションの上の方にいるわけないじゃないか」という細かいツッコミが入りそうですが、これはフィクションですので、それも込みで楽しんでいただけたら幸いです。
須賀マサキ 拝