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シナリオ1 誕生

《メインシナリオ『誕生』を達成しました》

《シナリオ達成ボーナスが与えられます》


 と、まあそんなこんなで俺は異世界に転生。

 所持しているのは送ることができないらしいスローライフのための産業系スキル。そして、神からのご褒美ということでもらった戦闘系や分類の分からないスキル。

 で、正直俺の選んだスキルのほとんどは『シナリオ』とかいうのがある所為で、この人生では役に立たないと思われるのだが、


 「あぶあぶあぶあぁ~(諦められるわけねぇよなぁ)」


 主人公っぽいかっこいいセリフを言ったつもりなのだが、現在赤子な所為でめちゃくちゃ閉まらないな。あと、お口の閉まりも悪い。めちゃくちゃよだれが垂れる。


 「ん~。ヴェンく~ん、どうしたのかなぁ~?」


 「お?ヴェンがどうかしたか?」


 「いや、今楽しそうにしゃべってたからねぇ~」


 「ほぉ~ん。楽しそうならよかったな」


 俺が気合を入れた声を聞いて、母親が近づいてくる。そしてそれに続いて父親もやってきた。

 2人の会話にある単語からわかるように、今世の俺の名はヴェン。正式にはヴェンフォードルムうんたらかんたらみたいに何かもっと長いらしいのだが、今その説明をする必要はないよな。

 それよりも、


 「元気な子でよかったぁ~」


 「そうだな。これで家もまだまだ安泰だな」


 「小さな農家なんだから、あんまり安泰とか関係ない気もするけどねぇ~」


 「別にいいだろそれは」


 「ふふふ~」「ハハハッ」


 なんか仲良さそうに話している2人。なんと、我が家は農家だったりする。スローライフを求めていた俺としては非常にうれしい転生先ではあるのだが、素直に喜べないのもまた確かだ。

 なにせ、『シナリオ』があるからな。

 絶対どこかのタイミングで不幸なことが起きると思う。


 「あうぅ~」


 「あっ。こっち見たぁ~」


 「どうした?遊んでほしいのか?」


 ただ、いくら不幸な目に合うとしても乗り越えられるものにはなっているはずだ。それこそ、今から生き残るための努力を続けていれば必ずどうにかなるはず。物語の主人公が何もできずに負けるだけじゃ面白みに欠けるし意味はないだろう。

 ならば、今からあがき続けるさ。たとえスローライフは簡単に手が届かないとしても、生き延びて圧倒的な力さえ手に入れられればいつかは必ず届くはずだから。


 「あぶぅ~」


 「よし。じゃあ今日はちょっと散歩行ってみるか」


 「あぁ~。良いねぇ~。私も一緒に行くぅ~」


 「おぉそうか。それなら3人で出かけるか」


 いつの間にか散歩に出るということに話がまとまったようで、俺は父親に抱えられ外へ出て散歩に付き合うことになる。まあ特にいま俺がやることへ支障はでないから、運ばれながらも気にせず俺の能力の確認をしていった。

 まず1つ目は『土魔法』


 「ん?いつもより土が乾いてるな」


 「そうなのぉ~?」


 「ああ。昨日は雨だったっていうのに、おかしいな……」


 父親は早速違和感に気づいたようだ。俺が土魔法を使って、歩いている場所の近くの土から少し水分を出したのだ。なんだか土魔法というにはやっていることが水魔法でもいいのではないかと思うようなものだが、できるのだからいいだろう。

 できることは脱水以外にも、土を生み出したりぬかるませたり柔らかくしたり固くしたり隆起させたり沈降させたり。土や地面の関わることなら色々とできる。

かなり便利なスキルではあるのだが、


 「あうぅ~」


 「おぉ?もう疲れた顔してるぞ」


 「早いねぇ~」


 体に感じる疲労感。

 魔法を使用するには魔力というものを消費する必要があるらしく、まだたいしてその魔力を持っていない俺はすぐに魔力がなくなって魔法を使えなくなってしまう。

 ただ、魔法は使えばスキルのレベルも上がるし、魔力も大量に消費すれば少しずつではあるが増えていくようだ。続けることは大事だな。


 で、魔法が終わったからって俺の未来のための鍛錬は終わらない。

 他にも『成長促進』という半径2メートル以内にある生まれてから半月以内の生物の成長速度を微上昇させるスキルとか、『植物鑑定』という見た植物に関することがなんとなくわかるスキルとか、『土属性強化』というその名前の通り土属性を強化するスキルとかを使っていく。

 正直土魔法以外は何か事件が起こっても使える気がしないし土属性強化に至っては俺が属性自体をよく理解していないため何の意味があるのかも分からないが、やっておいて損はないはずだ。


 ちなみに神からのご褒美でもらったスキルの中の1つで、戦闘に使えるスキルは『強打』だ。これの効果が強く相手を倒すことで通常より高いダメージを出すとともにスタンという状態異常にする効果があるらしい。が、正直言ってこれに関しては試しにくいんだよな。たまに寝ている毛布なんかを叩いているが、こういう抱えられている時などは親を叩くわけにもいかないし本当に使える機会が少ない。

 と、まあそんな風にしておれの生後数か月の間は過ぎていった。



《『土魔法』のスキルレベルが2になりました》


 「あぅ‼」


 「ん、どうした?達成感あふれる顔して」


 「うれしい事でもあったのかなぁ?」


 スキルのレベルアップがあったりとかもした。毎日欠かさず鍛錬していることもあり、数週間のうちに土魔法や成長促進といった農業関係の俺のスキルはレベル2に。さらに数か月するといくつかのスキルがレベル3にまでなった。

 ちなみに、このスキルのレベルというものに関しては神から一切説明を受けていないため転生した後に存在を知ったし、今もまだ具体的な内容は完全には理解できていない。漠然とスキルはレベルが上がれば強化されるんだな~くらいのイメージしか持っていない。

 将来はそのあたりの知識もしっかり身に着けて、なんてやりたいと思うところなのだが、今残念ながらそんなことを言っている場合ではない。

 実は現在少々緊急事態である。


 「早く渡せぇ!」


 「誰が渡すか!たとえ村長であっても息子を渡したりなどしない!」


 「ふざけるな!俺の娘の命がかかってるんだぞ!」


 「だからと言って俺の息子が代わりになる必要はないだろ!命の価値は平等だ!」


 「何を言ってる!村長の俺と小作農のお前、立場の違いはしっかりと存在している。子供にもその立場の差があるのは当たり前だろ!」

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