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シナリオ16 語り

 「え、えっと。智龍様、すごいですね」


 「そうでしょうとも。しかし、智龍様の偉大さはそのお姿だけで決まるものではありません。智龍様はですね………………」


 俺の智龍ちゃんトークが炸裂する。

 フルールには2度目の智龍ちゃんトークではあるが、普段から村の者たちに語っている俺にとって2回目というのは大した問題ではない。何度だって楽しませるネタは持っているんだよ!くらえ!俺の智龍ちゃん愛!!


 「………………ヴェ、ヴェン!?ちょっと待つのじゃ!そんなところで妾の話をされると恥ずかしいじゃろ

!!」


 「おや。それは申し訳ございません。今いいところだったのですが」


 2分くらい語ったところで、智龍ちゃんに羞恥で止められてしまった。かなり盛り上がっていた場面だったので、俺の話を聞いていたフルールや護衛、さらには智龍ちゃんと話をしていた侯爵までもが残念そうな顔をしている。

 侯爵はせっかく智龍ちゃんと話せる機会だっていうのに俺の話に引き寄せられるとは。けしからんやつだな。処すか?


 「いや確かにいいところじゃったけども!じゃけどもその所為でよけに恥ずかしいんじゃが⁉………というかヴェン。おぬしそんなに話がうまかったんじゃな。話が多少弾むのは分かっておったが、そこまでとは知らなんだわ」


 「ハハハッ。かくいう私も今回は村の視察だけのつもりだったのですが、あの少年に智龍様のお話を聞かされてお会いしたくなりましてな」


 「そ、そうじゃったのか?侯爵までとは………しかし、確かにあんな語り方をされるのも会いたくなるのも分かるのじゃ。妾も自分のことながら会いたくなってしまったのぅ」


 「ハハッ。智龍様にも認められるとは、彼の才能は本物ということですな」


 智龍ちゃんに俺の語りが認められた。

 スキルの力であるのは間違いないのだが、智龍ちゃんに褒められるのはうれしい!とっても嬉しい!推しに褒められるなんて最高だぜ!!


 「おほめいただき光栄でございます。これからも智龍様の素晴らしさを広めるためさらなる精進をしてまいります」


 「い、いや!恥ずかしいんじゃが!?それ以上の語りで妾のことを語るとか、想像するだけでも怖いのじゃ!妾にありえんほど期待を寄せるものが増えるじゃろ!」


 智龍ちゃんはやはり恥ずかしがっている。これ以上俺の腕が上がれば、1度話をすればたとえ智龍ちゃんに敵意を持つ相手でも智龍ちゃん信者に変えられるのではないかと思うほどであるのも確かだ。

 しかし、


 「しかし、どれほど言葉を並べようと智龍様の本来のすばらしさを表すには到底届きません。この程度でしか伝えられない非才を恨むばかりです」


 「いや十分じゃ!十分じゃよ!というかそこまででやめるのじゃ!もう妾羞恥心で殺されそうなのじゃ!!」


 智龍ちゃんは恥ずかしがって、両手で顔を覆い隠すようにしている。なんというか、言葉では表せないくらいとてつもなくかわいい。尊い。一生推せる。MTT

 だが、そこまで思えるのは俺だけのようで、侯爵などはまだ、


 「くふふっ。智龍様も、そういった感情はあるのですか」


 「親しみやすい方なのですね」


 笑って親しみを感じている程度だった。

 まだまだ推す心が足りんな。が、親しみを感じるだけでも十分智龍ちゃんを推すうえでの芽は出ている。これから精進してもらいたいところだ。

 なんてほめるようなことを思ってしまったからだろうか、


 「ふむ。ここまでの才能を腐らせてしまうのもおしいし、我が家専属の噺家にでもなるかね?」


 侯爵から勧誘を受けた。

 侯爵家専属ということは、おそらく公爵たちが話を聞きたいなんて思った時に呼び出されて語るということになるのだろう。つまりそれは。

 智龍ちゃんと離れ離れにされるってことだああああぁぁぁぁぁ!!

 頭沸いてんのか!ふざけんなこの○○侯爵ぅぅぅ!!!!!


 「非常に光栄なお話ではありますが、私といたしましては智龍様に一生を捧げたいと考えておりますので」


 「おや。そうか。残念だがそれならば仕方がない。気が変わったらいつでも歓迎しよう」


 「ありがとう存じます」


 内心ブチギレだが、表面上は穏やかに断っておく。

 智龍ちゃんを引き合いに出されると侯爵も無理に勧誘はできないようで、さすがに手を引いたな。智龍ちゃんナイスだ。その存在だけでも俺のことを守ってくれる最高の守り神である。


 なんて俺たちが会話していたのだが、


 「ちょ、ちょっと待つのじゃ!せっかく誘われてるんじゃし、もったいないじゃろ。妾に一生を捧げるくらいなら侯爵のところに行った方が良いと思うんじゃが」


 智龍ちゃんによる悲しい言葉である。信じられない。


 「ち、智龍様。それは私など必要ないということなのでしょうか。これまでの努力もすべて、必要なかったと………」


 俺はまさしく絶望といったものを味わう。

 崩れそうになる膝を必死に固め、智龍ちゃんの前で粗相をしないように必死に耐えた。


 「い、いやいやいやいやいや!そんなことは言ってないのじゃ!ヴェンのことはめちゃくちゃ必要じゃから!な?じゃから泣くな。妾が悪かったから………」

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