表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/17

【第六話】氷の少女様

 ポコン                                                                                 メッセージの通知音。相手は小春。

 『なに』

 『明日ちょっと話があるから私の席に来てくれる?』

 『いいけど。このまま話すのじゃダメなの?』                     『ダメだから来てって言ってるんじゃない』

 『そか。了解』

 絶対だぞという風体のスタンプが送られてきたので、敬礼マークのスタンプを貼り付けた。

 

「おはよう」

「おはよう隼人。もうちょっと待ってて。あ、来た来た。氷川君、こっちこっち」

 教室に入ってきた小春の彼氏、氷川良介を小春は手招きして呼んでいる。氷川君は鞄を持ったままこちらにやってきた。

「おはよう桜。なにか用事?」

「うん。隼人についてちゃんと紹介してなかったなって思って」

「おお。そういえば。僕も小春から彼氏の紹介をちゃんとしてもらってないぞ」

「それじゃ、初めまして、でいいのかな。この前軽く挨拶はしたけども。僕は氷川良介。桜とは夏休み前からのお付き合いをさせてもらってます。よろしく」

「僕は如月隼人。小春とは幼稚園からの幼なじみで……」

 中学二年の夏まで付き合ってた。言うべきか迷っていたら小春が助け船を出してくれた。

「元、私の彼氏君なのだ。君たち、私のために喧嘩しないでおくれよ?」

「大丈夫だって言ってるだろ?氷川君、僕たちもう四年もなにも無いから安心して」

「ああ。分かってる。桜から簡単には聞いてるから。それにしても如月君は清水さんと仲がいいのかい?」

「ああ。こっちに来てから勉強が追いつかなくて。ちょっと教えてもらってる感じ」

 氷川良介はなるほど、といった顔で清水さんの方を見る。清水さんは相変わらす一人で読書をしている。

「何にしてもアレだ。小春と僕は本当にご近所さんという関係だけでなにも無いから安心して」

 小春はコレを氷川良介に伝えてほしくて昨日のメッセージを送ってきたのだろうからしっかりと宣言をした。小春を見ると満足そうな顔をしていたのでそれで合っていたのだろう。そして僕は軽く手を上げてから自分の席に戻った。                      自分の席に戻ってポケットに入れたスマホを机に置いたらヴヴとバイブが鳴った。画面には小春からのメッセージ。

 『サンキュ』                                    僕は目線で「どういたしまして」と返して大きく息を吐いた。あんなにちび助だった小春が大人になったように感じてなんだか変な感じだ。そういえば。クラスでの氷川良介の位置づけってどんな感じなんだろうか。そう思って隣の席のやつに聞いてみた。

「あのさ。小春の彼氏。氷川君ってどんな感じの人なの?」

「なに?桜さんのことが気になるの?」

「まぁ、そんなところだ。一応幼なじみだからな」

「え?そうなんだ。いいの?幼なじみが別の彼氏作っちゃって」

「別に構わないさ。でも変なやつだったら嫌だなって思ってさ」

「ああ、それなら問題ないと思うよ。人当たりも良いし。悪い噂も聞かないし」

「そか。ありがとう」

 悪い噂は聞かない、か。先日清水さんが言ってた事ってそんなに広まってる話でもないのかな。まぁ、その辺は追々分かるでしょ。和彦のやつが噂好きだしな。

 

 その日の放課後も図書館で自習。清水さんも来てるかと思って見回すとやっぱり来ていたので、声を掛けて一つ空けて横に座る。ちょっと分からない問題があったからだ。

「清水さん、個々の問題、ちょっと聞いてもいいかな」

「ええ。そこは先にこっちを代入して……」

「おお。なるほど。ありがとう」

 僕はそう言ってノートを自分の方に引き寄せて続きを始めた。

「あの」

 清水さんから声を掛けられた。

「はい」

「連絡先。交換してもらってもいいかしら」

「良いですよ。これ」

 アドレス交換用のコードを表示させてスマホを清水さんに向ける。清水さんはあたふたした感じでスマホを操作してコードを読み込んだ。その後に自分のコードも表示させてこちらに。

 『よろしく』

 『こちらこそよろしく』

 テスト送信とはいえ目の前に相手が居るのにメッセージでやりとりするのはやっぱり何度やっても違和感を感じる。なんというかこそばゆい。その後に十七時半の図書室が閉まるまで自習を静かに進めた。

「ホントこのノート助かる」

「役に立ってくれて嬉しいわ。ほかの教科も必要なら言ってね。持ってくるから」

 そう言いながら清水さんはローファーを今日もリズミカルにトントンしている。

 校門で別れて家路に着こうとしたら後ろから肩を叩かれた。

「よう。隼人はいつから氷の少女様と仲良くなったんだ?」

「なんだその氷の少女様って」

「彼女全然笑わないじゃん?だからみんなからそう呼ばれてる。あ、別にいじめられているとかそういうんじゃないんだけどな」

「そうか?」

 僕の頭の中には清水さんが軽く笑った顔が思い浮かんだ。

「で。なんでそんなに仲良くなったのよ?」

 僕はカバンからノートを取り出して事情を説明した。

「へぇ。あの氷の少女様がねぇ。しっかし、このノートすげぇな。全部手書きじゃん」

「なんでもほかの教科もあるらしいぞ。確かにオススメとは言ったけど、隼人すげぇな」

「そんなもんなのか?」

「そうだよ。容姿から言ったら高嶺の花って感じじゃん?何人かチャレンジして全部断られてる」

「へぇ。でもまぁ彼氏を作るとはそういう雰囲気は確かに感じられんな。勉強一筋って感じだ」

 和彦とは僕の家がある桜並木が見えてきたところで別れた。角にあるコンビニで帰ってから食べようとポテリングを買いに入ったら小春がいた。声を掛けようとしたけど彼氏の氷川良介と一緒だったので止めた。なんだかバツが悪くて書籍コーナーで立ち読みをして二人が店を出て行くのを待って、窓越しにコンビニを後にするのを確認してからポテリングを持ってレジに向かった。

「何かくれてんだよ……」

 帰り道でそんなことを考えながら桜並木を歩く。ここの桜は毎年春になると桜祭りが開催される。出店なんかも出る。僕と小春は出店を回った後は小春の部屋に行ってベランダにから桜を出店で買ってきた食べ物をつつくのが毎年の定番だった。今年は氷川良介と同じ事をするのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ