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【第二話】桜小春

「ただいま」

 家に帰ってリビングに入る。クーラーの効いたその部屋は天国のようで生きた心地がする。母親からはこの時期からの転入で馴染めそうか、とか、色々と聞かれたけども僕は小春に彼氏が出来たという事実を知って窓から見える小春の部屋を眺めて適当に答えてから自分の部屋に戻った。

 桜小春。当時は僕よりも頭一つ小さくて肩くらいの髪の長さに幼さを残しながらも整った顔立ちで一応の自慢の幼なじみだった。今は彼氏が居るらしいし、僕が出て行くのもアレだろうと挨拶に行くのを渋って居たのだが、それはスマホの鳴動で拒否された。

『戻ってきたのに挨拶もないってなんなの』

 小春からの数年ぶりのメッセージ。なんて返すか迷っていたけど僕は照れ隠しなのか強がりなのか分からないけどこんなメッセージを返してしまって直後後悔した。

『こっちで彼氏出来たんだってな』

『誰に聞いたの』

『和彦』  

 部屋のクーラーがようやく効いてきた時に通りを挟んだ家のベランダに人影が見えた。小春だ。直後、電話が掛かってくる。通知名は小春。

「もしもし」

「もしもしじゃないわよ。四日前には帰ってきてたんでしょ?なんで挨拶に来ないかな」

「なんか恥ずかしかったんだよ。ほら四年ぶりだぞ?お互い変わってると思ってさ」

「変わってるから挨拶なんでしょうが。はぁ。隼人はそういうところ、変わらないよね。成長したの?」

「背は伸びたな。あと向こうで筋トレしてた」

「言うのも面倒くさくなってきたけど、心の成長よ。向こうに愛しの彼女を置いてきたりしてないの?」

「残念ながら。クソうるせぇ野郎どもだけだな」

「そう。そうそう。隼人と私、同じクラスだけど幼なじみ風は吹かせないでよね。一応、私の彼氏も同じクラスだからさ」

「了解。で、そいつは僕よりも格好いいのか?」

「そうね。少なくとも隼人よりは大人かな」

「そうか。小春大人っぽいやつが好みだったもんな」

「そうね」

 またそうね、だ。少し不機嫌に感じるのは気のせいじゃないな。それくらいは長い付き合いだったから分かる。

「なんか機嫌悪いけど切った方がいいか?」

「なんでそうなるわけ⁉はぁ、まあいいわ。話たかった事は話したし。それじゃ、明日からまたよろしくね」

「ああ」

 そう言って道路越しの通話は終了した。よろしくね、というのは彼氏が居るからよろしくね、という意味だろう。僕は開梱した段ボールの一番上に入っていたアルバムを開いてため息をつく。

「小春に彼氏か……」

 小さく呟いて昔の撮影した小春との写真を段ボールに仕舞い直してインターネットを開く。今日本で流行っていることや高校生活の常識なんかを調べたりした。あまり浮くのも嫌だったし。

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