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【第十七話】争いの種

 小春を選んだ。                        

「小春。ちょっといいか。落ち着いて聞いてほしいんだけど、その噂の出所に心当たりがある」

「え……?」

「ただ、僕からは非常に聞きづらい。だから小春から直接聞いてくれないか。出所は清水さんだ」

「そんな……」

 そうだ。二人は僕を賭けて勝負をしている。これは清水さんの手段。だからそれを潰すのは僕の役目じゃない。種明かしをするのはフェアじゃないけど、このやり方は僕の意にそぐわない。

「今すぐ‼早く!」

 僕は小春に清水さんを追いかけるように言った。小春はどう言えば良いのか分からないと言っていたが、今日を逃したら更に聞けないような気がしたので、とにかく追うように言った。

 夜になって小春からメッセージが飛んできた。

 

 『清水さんと話してきた』

 『それで?』

 『なにか文句ある?って言われた。それに私なにも言い返せなくて。怖かった』

 やっぱり噂の出所は清水さん。これは間違いなさそうだ。

 『ちょっと和彦と話をするからいったん中断するな』

 『うん。分かった』

 僕は和彦に電話を掛けて事の次第を話した。

「やっぱりそうか。おかしいと思ったんだよ。桜そんなことをするような子じゃないだろ?それに一応告ったやつに聞いてみたらみんな断られたって言ってたんだよ。一人遊びに誘えたって言ってたけど、それはこの前隼人が言ってたやつのことだろ」             「どうしたものかな。正直、このやり方は僕は好きじゃない」

「でもさ。嘘をつくのは桜もやっただろ」

「なんで和彦が知ってるのさ」

「氷川から相談受けてた」

「そういうことかよ……」

「で?どうするんだ?両方ともに隼人の好きじゃない方法をとってたわけだが。どっちが許せないのか天秤に掛けるのか?」

 小春は僕をキープするために嘘をついた。清水さんは小春を蹴落とすためにこんなことをした。僕はどうすればいい?

「和彦はどうすればいいと思う?」

「そうだなぁ……。どっちもどっちだし、隼人が好きな方を選べばいいんじゃないのか?」

「それが分からないから相談してるんだろ」

「そんなの好きって感情は俺にも分からねぇよ。とりあえず、両方呼び出して話でもすればいいんじゃねぇの。ま、俺はそれを見てる位なら出来るぞ」

「そうしてくれると助かる」

 

 翌日、放課後は図書室ではなく清水さんの家に行って勉強しようと誘って清水さんの家に行った。午前中に和彦と小春にここに来るようにメッセージを送って。

 ピンポーン              

 来たな。清水さんがドアを開けると聞こえて来たのは和彦の声じゃなくて氷川良介の声だった。

「お邪魔するよ」

「なんでお前がここに来るんだよ」

「呼ばれたからさ」

 ピンポーン                     

 続けざまにインターホンが鳴る。次に入ってきたのは打ち合わせ通り和彦と小春だった。

「それで。皆さんなんでここに?私は氷川君しか呼んでないのだけれど」

「和彦と小春は僕が呼んだ」

「そう。それで?話があってきたんでしょう?」

 僕は和彦に目線を送って話をするように促した。和彦は頭を掻いて「俺がか?」と言う表情を浮かべながらも仕方ないといった感じで話し始めた。

「清水さん、最近、桜に告った奴ら全員、桜がオーケー出したって噂、流してるよな?それで桜はかなり困ってる。率直に言おう。止めて貰えるかな」

「それは如月君からの依頼?」

「いや。俺からの依頼だ。で、氷川はなんでここに居るんだ?」

 氷川良介は大きく息を吐いてから話し始めた。

「僕と桜との関係を説明しに、かな」

「何の話だ?昔の彼氏、とかじゃないのか?」

「まぁそうなんだが。実はそうじゃなくてな。僕と桜は親戚なんだよ。だから恋人として付き合ってたというわけじゃなくて。単純に付き合ってただけなんだよ。それに気が付いたのか清水さんに呼ばれてね」

 僕は次の言葉を待つ。

「それで今日はその話の更新について話す予定だったんだが……」

 氷川良介は小春の方を見て、話しても良いのか?と伺っているようだった。小春は小さく頷いたので氷川良介は話を続けた。

「ここのアパート、僕の家の持ち物でね。それで家賃は桜の家が支払ってる。ここから先は清水さんの了解がないと話せないな」

 そう言って話の水を清水さんに振る。清水さんは二回深呼吸をしてから話し始めた。

「如月君には私の両親、事故で死んだって言ったけど、本当は違うの。本当は……。言わなきゃダメかな……?私。如月君のことを好きって言うだけじゃダメかな?」

 深い事情があるにせよ悪い噂をばら撒いたのは許せないけど、親の死と何か関係してって言うのか?僕が聞きたいという顔で清水さんを見つめると落胆した様子で話し始めた。

「私の両親、自殺してるの。桜さんと氷川君の家に大きな借金をしてて。返せないって。車で海に飛び込んだんだけど、私だけ生き残っちゃって……。保険金で借金は全部返済出来たんだけど、その後の身の振りようがなくて。そんな感じだったから親戚みんなに断られちゃって。それで桜さんと氷川君の家が面倒見てくれることになって。だから私が噂を広めたのは本当に悪いと思ってる。でもそうでもしないと如月君を私のものに出来ないと思って……」

「なんだよそれ……何の関係もないじゃんか」

「関係なくない‼だって命の恩人から恋人を奪うんだよ?そんなの普通にやっても絶対に出来ない」

「僕の気持ちはどうなるんだ?そんなことで僕の気持ちが変わると思ったのか?それに小春。なんで氷川と付き合ってるなんて嘘をついたんだ?」

「最初は単純に隼人がどう思うのかなって思って。でも清水さんがどんどん隼人に近づいて言って。もうダメだって思って」

「はぁ……。なんなんだよお前ら。なんでそんな無意味な策を労するような事をするんだよ。最初から単純に好きって言ってくれればそれで良かったじゃんか」

 僕はみんなを見回してそう言った。なんだか僕だけ取り残されているような気分になる。

「これはあれだな。隼人が単純にどっちが好きなのか決めればいいんじゃないのか?過去のことは色々あるけどさ。迷ってるんだろ?」

 和彦がそう言って空気が少し変わった。僕は……。

「選ばないとダメなのか?」

「そうしないとだれも報われないぞ」

「分かった。ちょっと考えさせてくれ」 

 その日はここまで。僕も清水さんの家を出て小春と一緒に家に帰った。

 部屋に入って今日のことを考える。普通に考えたら単純に僕を試した小春の方が罪は軽い。でも僕の気持ちは清水さんの方を向いている。

 そして翌週の日曜日に二人を呼び出すことにした。

                                         

「まず。来てくれてありがとう」

 公園のブランコのところで待ち合わせて三人が集まった。理由をあれこれ言うんじゃなくて答えだけを伝える方が良いだろう。僕は息を整えてからこう告げた

「僕は……。僕は二人ともどちらとも付き合えない」

「だよね」                                      先に口を開いたのは小春だった。清水さんは強く手を握って無言だ。

「ただ。ここから始めようと思う。二人とも妙な真似はしないで正当に考えてほしい。無理はしないでほしい。僕は逃げないから。四の五の言っても始まらないじゃないか。だって僕には関係のないところで悩んでたんだろ?そんなのどうでもいいよもう。好きなようにやって好きな方を選ぶさ。だから二人とも普段通りにしてくれればいい」

 しばし沈黙が流れた。

「隼人。私たちも隼人に話があるの。聞いてくれる?」

「ああ」

「私たち、もう隼人の事を追いかけるのを止めようと思ってるの。私たちは隼人を傷つけた。恋人になるような資格はない」

 小春は話を続ける。

「だから……」                                  

「⁉」

「二人で罪を負うことにしたの」

 痛みと生ぬるい感触が腹と背中から感じる、そしてそれが二度、三度。

「どう……して……」

「だって……」                                         

 『如月隼人が私たちの争いの種だから』

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[一言] クソ女ばっかり
[良い点] ハーレムで良かったやんw [一言] ここにきて、これかーーww おったまげ
[一言] なんちゅー結末や…
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