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21:未来より過去へ、理想の道を

出口が見えたと思ったら、何かが俺たちの行く手を阻んでくる


「鈴、どうしたら」

「大丈夫。のばらが守ってくれているから!私達は早く出口へ!」

「あ、ああ!」


道なき道を駆けて、光の先へ向かう

目の前にいた鈴が、気がつけば消えていた

それは悪いことではない

むしろ、いいことなのだ


・・


「んっ・・・」


指先が小さく動く

身体が重い。うっすらと目を開いた先にはぼんやりと、二人の姿が見えた

のばらと、立夏さんだ


「起きた!起きたわよ、立夏!」

「お疲れ様、のばら」


嬉しそうにはしゃいでくれる二人は、俺をここに戻してくれた功労者だ

落ち着いたら、しっかりお礼を言わないと

それから・・・


「んー・・・頭が痛いです」

「鈴も起きたか?」

「うん。よかった。ここは夢じゃないよね?」

「ああ。現実だ」


はっきりしない頭でも、やりたいことがある

上体を起こして、側にいた鈴を引き寄せる


「・・・帰ってこれた」

「うん。そうだね。無事に帰ってこれてよかったね」

『お取り込み中申し訳ないけどさ、私からも話をさせてもらっていい?』

「「ひょあ!?」」


一人、見覚えのない半透明の少女が立っていた

山吹色の髪に翡翠色の目

彼女は、一体・・・


「・・・君は?」

『自己紹介はカットね。もう二人にはしてるから』

「二人はこの子の名前を知っているのか?」

「・・・ノーコメントでお願いするわ」

「黙秘権を行使しちゃうかなぁー・・・」


なんと。二人共この子の名前を教えてくれないらしい

まあいいや。とりあえず山吹少女と呼んでおこう。髪が山吹だし


『とりあえず、目覚めてくれてよかったよ。私の中にも変化が起きたから。詳しくはのばらおばちゃんたちに聞いてね。私が使った術も含めて』

「術・・・」

「後で説明するわ。その子が能力を使って貴方達をここまで導いてくれたの。光を見なかった?」

光、か。俺たちを先導してくれていたあの光だよな

「君があの光の正体だったのか。ありがとう」

『半分正解で、半分不正解!私は儚く消える存在じゃないんだから!』

「あはは・・・」


光なのはあっているけど、そうじゃない

じゃあ一体何が正解だというのだ・・・若い子難しいな


「しかし・・・俺が起きたことで、君に変化が起きたのか?尚更君が何者なのか気になるのだが・・・」

『いつかわかるよ。そう遠くない未来の先で』


山吹少女はそう告げた後、完全に消えてしまった

彼女の存在はそれこそ夢みたいな存在だった

けれど、彼女が言う通り・・・俺たちはそう遠くない未来の先で会える気がする

きっとまた会える

その時に、あの子とまた話をしよう


「・・・いっちゃったね」

「ああ。まだ話したいことがあったんだけど。きっと、いつか会えるよ」

「そうだね。そうだといいね」


鈴と共に彼女のことを考えながら次に思いを馳せる

そんな後ろで、のばらと立夏さんは複雑そうに小声で会話を繰り広げていた


「・・・ねえ、立夏。あの事を伝える?」

「いや、いいと思う。あの子から聞いた能力だけ夏彦君に伝えよう」

「どうしたんだ?」

「なんでもないわ。それよりも一つ。さっきの子から夢に関する能力を一つ教えてもらったの。夏彦なら出来ると思うわ」

「え、俺に出来るって・・・あの子神語りなのか?」

「そうみたいだよー・・・あのね」


立夏さんとのばらから、俺達が眠っていた間の事を話してもらう

のばらが編み出した意識つなぎと同じ事を、俺にも出来るということ

それにはやはり、神の助力が必要のようだが・・・それは同じ力が展開できるのばらに憑いている梅でも出来るだろう

しかし、二人共あの子に関することは巧妙にはぐらかしてきていたが・・・


「むっ・・・あの女の子が」

「おこ・・・あの女の子がね」

「む?」


・・・なんとなく、正体がわかった気がする

山吹色の髪なんてそうそういるような存在じゃないし、ましてや神語りだぞ

鈴もなんで頭を捻る

どう考えても俺の娘だろうに

とっつきにくそうだなぁ・・・年頃になったらそんなものなのかなぁ・・・


「夏彦?」

「・・・今のうちに子育ての方針を決めておかないと、将来大変なことになりそう」

「気が早くない?」


「・・・気づいているわね」

「むしろ情報が多すぎるよ・・・気づかないほうがおかしいわよ」

「鈴は気づいてないわよ」

「おぅ・・・」


のばらと立夏さんの反応を見る限り・・・正解、らしい

将来への期待と不安を抱えながら、俺達は正しい道へと戻っていく

あの子にとっても、きっと


・・


十七年後


「ふぅ・・・」


意識を十七年前から現代に戻した私は、一息つく


『お疲れ様じゃ、夏鈴』

「おつかれー、梅。のばらおばちゃんは?」

『お前の母に稽古をつけてもらっている。まだまだ盗む部分はあるからと』

「のばらおばちゃんもストイックだね。そういうところも好きなんだけど」

『お前も大概あの娘に似ているのよぉ・・・』

「お母さんがいない時はのばらおばちゃんに面倒見てもらったからねぇ。それで、過去を変えた影響って何か出た?」

『すぐに分かる』


梅がそう告げた瞬間、私の部屋をノックする存在が現れる

もしかしなくても、と思って返事を返さずに扉を開けてみると・・・


「あれ、姉ちゃん。何してんの?」

「姉さん。また神語りを使っているの?」

「・・・あんたたちに用はないんだけど」


記憶の更新が自分の中で行われている感覚を覚える

そう。そうだ・・・お父さんは目覚めている

だからこの憎たらしい顔面偏差値だけ無駄に高い双子の弟共も出現したのだ


「用はないって酷すぎだろ・・・」

「僕たち、父さんが姉さんを呼んでいるって伝えに来ただけなのに・・・扱いが酷くないかな?」

「そうなの?あー・・・お父さん、もしかして気がついたかなぁ」

「何がだよ」

「あんたたちには関係ない話。能力者同士の話なんだから」

「またかよ・・・父さんも姉ちゃんも変な能力で振り回されてんなぁ」

「でもちょっと羨ましいな。僕らは力が弱いから流石に神様とはお話できないけど・・・やってみたいなって思ったりするんだ」

雪彦ゆきひこは可愛いわねぇ・・・おい、ちょっとは見習えよ鈴彦すずひこ

「てめぇに振りまく愛想はねえんだわ・・・」

「二人共、喧嘩はだめだよ。ねっ?落ち着いて・・・」


「・・・遅いと思ったらまた喧嘩してたのか。もう二人共それなりに大きくなったんだから妥協点を見い出せっていつも言っているだろう?」

「お父さん!」

「結局来たな、父さん」

「ごめんね、待たせちゃって」


私と同じ髪の色。白髪が少し目立つ山吹色を揺らしながら、父さんは二階に上がってくる

それから・・・


「あぐっ!?」

「うげっ・・・頭掴んで持ち上げたぞ・・・」

「絶対にされたくない・・・」

「夏鈴、今日だよな?」

「ああああ頭が割れるぅ・・・・な、何のことでしょうか・・・」

「すっとぼけるな。梅に力を借りて十七年前に干渉した日だ。意識干渉の成功率を上げるために同じ日付で行うだろうと読んではいたが、まさかその通りだったとはな」

「なぜバレたぁ!?」


お父さんは小さくため息を吐いて、私の頭を掴む手を緩めてくれる

それから、私をしっかり抱きしめて頭を撫でてくれた


「・・・年頃の娘に、こんなことをしたら怒られるかな」

「別に怒んないよ。お父さんの事大好きだし」


過去を変えた影響で未来にも変化が起きた

それに伴う記憶の同期はやっと終わった

今までなかったお父さんとの、目の前にいる弟達の記憶が入り込んでくれる

その記憶の中で、お母さんはいつも笑ってくれていた

私の目的はこれで完遂だ

お父さんがいて、お母さんがいて、家族で笑えている理想は、私の手の中に収められた


「本当に、無謀な賭けだったんだぞ。無事で良かったよ」

「心配かけてごめんね。それでも私は理想が欲しかったの」

「わかるよ。俺がここにいられるのは、夏鈴のおかげだってこともちゃんと分かる。改めて、会えて嬉しいよ。十七年前から、君に会えるのを楽しみにしていた」

「うん。私もお父さんと一緒にいられて嬉しいよ。ねえ、お父さん」

「なんだ?」

「今、幸せ?」

「・・・ああ。母さんがいて、夏鈴がいて、鈴彦と雪彦がいて。父さんは幸せだよ」


歯切れが悪い

気づかれないと思っているのだろうか


まだ、変えられていない未来がたくさんある

絵未お姉ちゃんの両親はもちろんだけど・・・

新しい記憶では・・・覚おじちゃんが亡くなっている

まだまだ前途多難

けど、絵未お姉ちゃんの両親を助けられるのは過去のお父さんたちにかかってる


「お父さん、お願い。力を貸して。助けたい人がいるの」

「・・・過去への干渉はやりすぎるとどんな影響があるかわからない。それでも?」

「それでも。今度はお父さんにお願いしたい」


私は・・・絵未お姉ちゃんにも、両親の側で笑っていてほしいから

例え私の存在が曖昧になろうとも

皆が幸せな未来が欲しいというのは・・・高すぎる理想だろうか


「・・・わかった。俺は何をしたらいい」

「あのね・・・」

「なあ、姉ちゃん。俺達に何か出来ることないの?」

「僕らは出来ることは少ないけど、神様を呼び寄せる程度なら出来るから。力を借りたい神様とかいる?呼ぶよ?」

「ありがと。二人にはこの神様を呼び出してほしいの。出来る?」

「「・・・中々に難しい注文だな」」


未来から過去へ

まだまだ未来は変えられる。影響は未知数だけど

それでもやりきるんだ。私の、理想のために

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