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20:未来の理想は手招く場所へ

鈴に導かれて歩いていく

いつまで歩いて行けばいいのかわからなくなる・・・その先なんてあるのかと不安さえ覚えるぐらいに


「・・・あ」

「これ、なんだろう」


目の前に、いつも鈴が眠ると飛び回る光が存在した

今は鈴が起きているのに、俺の意識の中なのに・・・

こんなところまでついてきてくれるなんて健気だな、と思いつつその光がともしてくれる道を俺たちは歩いていく


「ねえ、夏彦。この光はなあに?」

「ここ最近、鈴の周りを飛んでいる光」

「・・・なにそれ」

「さあ。雪霞や竜胆も心当たりがないみたいでな。俺的には嫌な感じはしないし・・・」


嫌な感じは全然しない上に、むしろ見ていて落ち着く光だ

害はないみたいだし、そのまま飛ばせているのだが・・・鈴としては不安なものだろうな


「・・・でも、そうだね。悪い感じはしない。それに、そこにいるのが当たり前みたいな感じ」

「そうだな。俺もそう思うよ」


この光の正体はわからない

けれど俺はいつか、この子と会える気がするのだ

・・・この子?

なんで俺はこの光を、子なんて表現をしたんだろうか

理由はわからないけれど・・・まあいいか

いつかきっと答えがわかる気がする


「鈴」

「なあに、夏彦」

「帰ろう。光が導く先へ」

「うん」


明るくなった道は、どんどん光量を増していく

出口がやっと、見えてきたらしい


・・


一方、現実


「・・・のばら、この現状、何だと思う?」

「わからないわ。なんでいきなり光りだすのよ・・・!?」


突如、眠る夏彦と鈴が淡い光を放ちだす

私の能力はしっかり機能しているのに・・・!?


「のばら、落ち着いて。鈴の意識は無事?」

「あっ・・・そうよね。鈴の意識ならわかるから・・・!」


立夏の声で動揺を抑え込み、私は能力の蔦を鈴の方へ集中させる

きちんと蔦と意識はリンクされている。鈴は無事だ

じゃあ原因は夏彦?もしかしなくても、神語りの暴走?

わからない・・・わからないけれど


『・・・』

「・・・なに、この子」

「さあ」


光は人の形を取り、二人の側に寄り添い始める

色づいたそれは・・・その子は、私ぐらいの女の子になった


「山吹色の髪に」

「・・・翡翠の目の、女の子」


ぱっちりと開かれたその目は、鈴と同じ翡翠色

髪の色は夏彦と同じ山吹色だ


「・・・鈴と夏彦の合体少女みたいな感じだね?」

「私の能力で意識が合体しちゃったのかしら!?」

「そんなこと出来るの!?」

「自分の能力の幅が広すぎて、自分でも何が出来るのか把握しきっていないの。でも本当に意識を合成させたりしていたら・・・!」

『起きて、起きて。こっちだよ』

「「・・・」」


その少女は夏彦に対して、ひたすら起きてと言い続けている

対して鈴には何もしない

何もしないというか・・・


『お母さん、若い時から顔全然変わってないんですけど。童顔のまま。ウケる』

「「はい?」」


私と立夏は互いに顔を見合わせる

聞き間違いじゃないのよね。この子、今鈴のことを何と言ったかしら


「・・・貴方、何者よ」

『え、誰・・・でも髪が赤茶色ってことはもしかしなくても、のばらおばちゃん!?』

「お、おば・・・!?」

『若すぎでしょ。私より年下じゃん』

「お、おばぁ・・・!?」


「のばら、いつかはおばちゃんおばさんと言われる日が来るのよ。ところで、私はわかるかな?」

『・・・いや、お姉さんは誰かわからない。初対面かな?』

「・・・」

『いやでものばらおばちゃんわっかいなー・・・十七年前だし当然といえば当然だけどさ』


十七年前って、この子・・・もしかしなくても


「貴方、未来から来たの?」

『ちょっと違うかな。半分正解で、半分不正解。今、のばらおばちゃんがお母さんにしている術と同じような力を使える神様に頼んで意識だけここに飛ばしてるの。意識だけでも、神語りは使えるからね』


鈴の話だと、神語りの力は遺伝らしい

子供が複数いた場合、その才能はちょっぴり他の子に遺伝されるが・・・基本は長子に受け継がれる才能らしいから


「じゃあ、貴方・・・本当に」

『いえすいえす。巽夏鈴たつみかりん、愛しのお父さんの危機と聞いて駆けつけちゃいました!どうやら私が介入しないと、お父さんここで助けられないみたいだからさぁ』


女子高生みたいにキャピキャピした山吹色の少女は一度も聞いたことがない名前で自分の紹介を果たす

・・・巽ってことは、この子。本当にこの二人の子供なのよね


「そ、それで貴方。なんでここに?自分が介入しないと助けられないってどういう事?」

『んー・・・詳しく説明すると長いんだけどさ、お父さん、私が知ってる未来だとここで一生昏睡状態なんだよね。夢が帰ることを阻んで、お父さんを意識の深淵に連れ去っちゃったから』

「は・・・」

『旅から帰って、お父さんはそのまま入院。この時に既にお腹にいた私は約一年後に産まれて、お母さんと周囲の人に育てられた。神語りのことも、覚おじちゃんと東里おじちゃんに教えてもらって鍛えて、今こうして扱えているわけ』


夏鈴が述べる事実が嘘ではないと、直感で感じられる

今だって起こり得る現象なのだ。意識が上がることを阻まれて、鈴が危機的状況に陥ったなら意識を引き上げなければいけない

その時、夏彦の意識はそこに取り残されるだろう

・・・いつだって、彼女の語る未来は起こるものだ

今は信じよう。目の前にいる少女の言葉を

彼女が語る、未来を


『・・・この旅には聡子おばちゃんと遊お姉ちゃんもいるでしょ?』

「そうね。今、二人は外だけど・・・」

『・・・お母さんさ、その旅で大事な友達も失ったって言ってたの。もしかしたらお姉さんかもね。一度も見たことないから』

「・・・」


夏鈴が見たことない立夏の姿

私や聡子、遊の存在を知っているのに彼女の存在を知らないとなると・・・

立夏、ここで命を落としているわけ?


「・・・なるほどね。私がこの旅で死んだから、貴方と面識がないわけだ」

『そうかもね。名前は一度も聞いたことないからわからない。お母さん、あの日のことを思い出すの、凄く嫌そうにしてたから』

「だろうね。夫は昏睡。私も死んだってなると・・・鈴の性格上、責任を感じちゃうんじゃないかな。なんで守れなかったのかなって」

『うん。よく自分を攻めてたし、お見舞いに行く度にお父さんに縋って泣いてた。絵未お姉ちゃんも一緒に暮らしてたんだけど、よくごめんねって言ってたよ。もしかして』

「うん。絵未は私の娘だよ」

『そっか。この旅で絵未お姉ちゃんも両親を失ってるの。だから、どういえばいいかわからないけれど・・・』

「・・・気にしないで。貴方のせいじゃないでしょう?それに未来は変えられる。私も彰則も、夏彦君も無事に戻る未来を作ってみせるから」

『そうだね。うん、そうだよ。今から作ればいい。私は、それを手助けするためにここに来たんだから』


眠る母親に触れようとするが、彼女の手は鈴の身体をすり抜けてしまう

夏彦には触れていたのに、なぜ彼女には・・・


『やっぱり、今の私はお母さんの中の存在だから触れないみたい。この術、自分自身には触れられないみたいだから』

「・・・もう貴方、ここにいるのね?」

『うん。まだ出来たてほやほやな時期じゃないかな。だから賭けだったの。のばらおばちゃんはこの日「意識つなぎ」を編み出した。だから、どういう理屈かわかるよね』


・・・この術は、意識を繋ぐ先に、対象と同じ肉体がなければならない術だ

過去だろうが未来だろうが、夢だろうが・・・その対象の身体が存在していればいい


「そうね。貴方が言う通りこれは大きな賭けね。精神体なのもその影響でしょう?」

『そういうこと。私の身体はまだ出来上がっていないけれど、ここに存在する。それでも私は意識を飛ばせるか試してみたの。結果としては、こういうこと。お父さんも上手くやれば出来るんじゃないかな。なんせ私のお父さんだし』


できるでしょうね・・・不器用だけど、研鑽を積めばできるはず

なんせこの子の父親。神語りとしての才能は随一の人間だもの

同時にこの力は私と彼ができる、夢への対抗策へとなるだろう


『私がお母さんの意識を導く。のばらおばちゃんは意識の保護に入って。具体的にはお父さんの後ろに迎撃用のなにか!』

「そんな器用なこと出来るわけないじゃない!」

『やれ!』

「滅茶苦茶よ貴方!そういうところ、母親そっくりで嫌いじゃないわ!」


料理のことで無茶振りをよくしてくる母親と、能力のことで無茶振りをしてくる娘

なんでこんなところが親子そっくりなのよ、と心のなかでキレつつ、迎撃ができそうな力をイメージする

・・・蔦で追い払う程度ぐらいしか連想できない自分が悲しくなってくるわ


「立夏、どうして」

「・・・夏彦君の意識はもう問題ないはずだから。今は早く引き上げることを優先しないとでしょ?だったら強化対象はのばら。そう思わない?」

「ええ。しっかり頼むわよ、立夏!」


鼓舞を背に、意識の中に展開している能力へ力を込めていく

早く、早く戻ってきて頂戴。二人共

最悪な未来を変えるのは、ここからなんだから!

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