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18:黄金色の道標

公園のベンチに腰掛けて、父さんに事情を説明してみる


「・・・なるほどね。つまりここは夢で」

「俺の中身は大人で」

「僕も夏澄も、現実の夏彦の側にはいない・・・か。それどころか僕は夏彦が産まれる前には死んでいる・・・受け入れがたいけど、これが現実で起きたことなのか」

「・・・」


悔しそうに頭を抱えた父さんは、俺達の話をゆっくり噛み砕いて、受け入れてくれる


「まるで陽彦が書いた小説みたい。けど、現実なんだよね」

「貴方、よく受け入れられますね」

「なんとなくかなぁ・・・元々視えていたし、鈴さんの能力が当時の鈴さんと同じ状態になっているのなら・・・自然と僕も同じような状態のはずなんだ」


父さんの緑色の瞳が、小さく輝く

その目を見た鈴が、何かに気づいてくれたようだ


「・・・尊さん。やっぱり神語りを自分で使えたんですね」

「なにそれ?」

「無自覚ですか・・・本当に親子揃って変なところが似ていますね」

「はて、どういうことなんだい?」


父さんに神語りのことも、鈴は軽く説明してくれる

ふんふんと、父さんは相槌を返し、反応をしてくれるが・・・

眉が軽く引きつっている。理解はしているけれどやはり受け入れがたいようだ・・・


「うん!わかった!」

「半分ヤケ入ってませんか?」

「んー・・・まあ信じがたいのは確かだけど。教えてもらった方法が確かなら」

「「へっ!?」」

「こうしたら、眠る前の現実夏彦が出していた空間を出せるんだよね?」


父さんの目の前には、山吹の間が広がっている

俺が出したわけじゃない

父さんの行動からして、あの空間は父さんが出したものだ


「これでやっと確信を得ました。夏彦が持つ神語りの才能は、雪霞様補正もあるでしょうが・・・普通に父親譲りです」

「だろうなぁ・・・」


当時のスペックと何もかも同じなら、父さんは知識がないだけで・・・かなり使いこなせるタイプの神語りだったのだろう

元々、無自覚に使用していたし・・・意識して使おうと思えば自在に使える


「・・・天才すぎないか、うちの父さん」

「・・・その後ろには色々と努力が存在しているからね?今回の場合は特別かもだけど」

「申し訳ない」

「ごめん。僕も少し短気だったね。周囲から天才って持ち上げられて・・・気に入らない人から陰口にも使われたことがあるから。その言葉は好きではないんだ」

「・・・父さんにも、色々あったんだな」

「まあね」


間を一瞥せずに消しながら、父さんは小さくため息を吐く

俺が外側はともかく、内側が成人した大人だとわかったら・・・親子というよりは友達で接してくれている気がする


「・・・夏彦、一応聞いておくけど」

「なんだ、父さん?」

「僕は、君に対して小さい子供に接するような感じで話したりしていないよね?」

「いや、普通に友達みたいに話しているじゃないか。何ていうか、少し歳を重ねた息子と話している感じ。だから、そこまで気にしなくていいと思うけど」

「それならいいんだ・・・夏彦自身年下だけど、やっぱり同じ三十代なわけだしさ」

「あ・・・」


そうか。父さんの享年は二十七歳。それから俺が七歳になるまで歳を重ねているから、目の前にいる父さんは今、三十四歳だ

・・・一応、まだ俺が年下だけども、年齢差はそこまでない状態になってしまっている


「親子っていうより、兄弟だな」

「そうだね」


頭を優しく撫でられる

・・・お兄さんがいたら、こんな感じだったのだろうか

まあ、ないものねだりしたって意味はないし

なんなら俺が兄だし。血の繋がりはないけれど


「さて。そろそろ夏彦も落ち着いただろうし、本題に入ろうか」

「う、うん。けど、どうやったらこの夢から醒めるのだろうか」

「そうだね。これは僕の見解なんだけど・・・これは夏彦の理想の一つ、なんだよね?」


まさか夢の住民である父さん本人から助言を貰えるなんて思っていなかった

父さん側としては、俺に夢から醒めてほしくないはずなのに・・・


「あれ?どうしたんだい?二人揃って呆けた顔をして」

「いや、夢の一部である貴方から助言をもらうことになるとは思っていなかったので」

「そうだね。僕としては消えたくないよ。この世界が虚構だとわかっても、僕は夏彦に目覚めてほしくない。これからも一緒にいたい。それはたとえ夢であっても僕の本心だから」

「・・・」

「けれどね。僕は夢の住民である前に、夏彦のお父さんだよ。起きたいと望む息子を、引き止めるのが親のすることだと思うかい?」

「それは・・・」

「たとえ消えるとわかっていても、僕は夏彦の背中を押すよ。夏彦がやりたいようにやりなさい。夏彦の理想は、こんなところでは叶えられないのだから」

「うん。ありがとう、父さん」


「当然のことをしたまでだよ。それでね、僕の見解だと・・・この夢は夏彦の理想を反映させた世界のはずだった」

「・・・うん。そうだよ。ここは俺の理想じゃない。正確には過去の理想で、未来の理想じゃない」


その言葉を聞いて、父さんは納得したように笑いかけてくれる

俺の理想の読み取り間違い。それが夢のミス


「うん。それが僕たちの最大の誤算だ。夢側の存在で言わせてもらえば、この世界が君の本当の理想であれば、君はもう既にこの夢の中に取り込まれていた。僕らとしては好都合な結果だね」

「・・・」

「そう。この世界は君の「過去の理想」を読み取った世界。でも、今の君の・・・「未来の理想」は違うもの。その叶えたい理想は、君を現実に留まらせていたんだね」


最も、その意志を強くしていたなにかも存在しているみたいだけどね・・・と、父さんは立夏さんの存在にも気づいていた様子で話を締める

そして、今度は俺の目を見てこう告げる

鈴と同じ翡翠の瞳が、俺の青緑の瞳に映される


「僕は君に問う。今の夏彦の理想はなんだい?幸せな夢で微睡むことが今の君の理想ではないのなら、それを超える理想を、ぶつけるべき存在にぶつければいい」

「俺の理想を・・・」

「虚構の理想を壊し、自分で理想を叶えなさい。その先に現実への道は開かれる」

「そっか・・・わかったよ。ありがとう、父さん」

「いえいえ。それと、不安がらなくて大丈夫だよ、君なら出来る」

「気づかれていた?」

「気づくよ。それぐらい。だって僕は夏彦のお父さんだからね」


少しずつ、鈴と共に父さんと距離を取る

夢へと別れを告げる前に、父さんとお別れしないといけない

二回目だ。こうして、父さんと別れるのは


「父さん」

「なあに、夏彦?」

「俺さ、やっぱり父さんと暮らすのも理想で夢だ」

「それは嬉しいね」

「ああ。それをいい切れるぐらい、父さんは俺にはもったいない父さんだよ」


夢でもいい。俺が作り出した虚構でもいい

それでも一つ、言いたいことがある

あの瞬間には言えなかったこと。現実の父さんたちには伝えられなかったこと

たとえ本人でなくても、それはきっと、消える父さんたちの救いになってくれると信じて


「俺は、父さんと母さんの子供で本当によかったと思ってる!だからこそ、一緒に暮らせなかった日々が理想になって、ここに現れたんだと思う!」

「夏彦・・・!」

「今度はこれを現実に。今度は一緒に生きてほしい。どんな形でもいいから、俺とまた親子になってほしい。それが今の、過去に対する未来の理想だ」

「うん。叶えられるように願っているよ。僕も夏澄も、もう一度君に会える日を待ち望む。またおいで。今度は夢ではなく、現実で会おう」

「ああ。約束だよ、父さん」


伸ばしあった手は届くことはなかった

けれど、それでいい。これが今の正しい形だ

瞬きと同時に、父さんの姿はどこにも無くなってしまう

先程まで目の前にいたのに、霧のように消えてしまったけれど・・・父さんの消失は夢の終わりへと向かっている事実を俺たちに運んでくれていた


それだけじゃない。周囲の景色にも異常が起きている

視界が、音をたてて割れた

そこからボロボロと、理想を保てなくなった夢が壊れていく

それはきっと、過去の理想より未来の理想が上回った証拠であり、同時に俺が父さんたちとの理想を手放せた証拠だ


けれどまだ完全に壊れてはいない

ギリギリのところで、形を保っている


「鈴」

「ここここここここここ壊れてるけど大丈夫なの?精神的に問題ない!?」

「だ、大丈夫だ・・・慌てないでくれ」


鈴の肩を掴んで、何回か息を吐く

俺の理想を、彼女に伝えるために

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