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17:理想は桜色の先に

亜空間から私を呼ぶ声がする

監視業務もあるけれど、亜空間の空気が足りないとかそういう自体だったら大変だ


「鈴、少しいいかしら」

「いいけど・・・どうしたの?」


すぐに対処しようと、亜空間を開いた先にいたのはのばら

遊ちゃんも心配してついてきたらしい。何かあったのだろうか

まさか。夏彦と立夏の身になにか?


「ここじゃなんだから、空間に入って。遊、聡子の手助けをお願いするわ」

「え、でも・・・」

「ふざけた真似をしたら内蔵盗取しちゃうぞとか言えばいいじゃない。後は任せたわよ」

「えぇ・・・雑すぎるよ、のばらお姉ちゃん・・・」


遊ちゃんと入れ替わりで私は亜空間の中に入り込む

こうしてここに入り込むのは久々だ

普段は整理整頓以外でここを踏み入れることはないので、ちょっぴり新鮮さもある

けれど、自体はそんな悠長な考えをしている場合ではないらしい


「・・・来たね、鈴」

「・・・夏彦」

「手短に説明するわ。あの影が今、夏彦の中に入って夢を見せている」

「そんな・・・」


夏彦に影がついたのは、最初に影へ遭遇した時だ

その時は完全に油断しきっていたし、それ以降は完全な防壁が夏彦を囲んでいた

・・・そのタイミング以外はありえない。完全に油断していた


「私の能力で、夏彦が見ている夢の時間で生きている貴方と、現実の貴方の意識を繋ぐ」

「どういうことですか?のばらや立夏、遊ちゃんが出来ないことなのですか?」

「・・・今の夏彦君、六歳ぐらいの子供らしいの」

「私達は行かないのではなく、行けないのよ。私と遊は産まれてもないから身体がない」

「私は産まれてはいるけど、夏彦君より幼くなる。とてもじゃないけど、彼を手助けしつつ現実に戻るのは不可能に近い」


なるほど、夏彦の年齢に準じた時代が夢の中で展開されているのですね

だからこそ、産まれてもない二人は勿論、夏彦より幼くなる立夏も行けない

そんな夢の中で、今と同じ立ち回りが出来るのは現状私だけになるのか


「わかりました。のばら、早速始めましょう」

「ええ。貴方だけが頼りよ。鈴・・・どうか、連れ帰って」

「勿論」


のばらの手を取り、彼女が繋いだ先に・・・夢の中へを私は落ちていく


『鈴』

「立夏、どうしたんですか?」


夢と現実の狭間

夏彦の夢に触れる前、頭の中で立夏の声がした

ここならまだ現実と話が出来るらしい。夢に入り込む前に話を聞いておこう


『鈴の意識も夢に呑まれるかもだから、一緒に強化するね』

「なるほど。ありがとう、立夏。今の夏彦も立夏に鼓舞されてるの?」

『そんなところ。私に出来るのは夏彦君を踏み留まらせるだけだから。早くしないと呑まれるかも』

「いえ。時間を稼いでくれてありがとう、立夏。後は私に!」

『気をつけてね、鈴。それとね』

「はい」

『夏彦君の夢にいるのは、彼の両親みたい』

「そう・・・」


昏睡者の現状から考えるに、夢は「幸せな理想」を叶えているとは予想していた

けど、彼の理想は私との未来ではなく、両親とのあったかもしれない過去だった

そこは少しショック、かな


『ごめんね。先に伝えておかないとって思って・・・』

「いえいえ。けど、尊さんがいるのなら、少しは穏便に済みそうです」


かつて私の内側を言い当てた彼ならば、例え夢であろうとも・・・手を貸してくれるだろう

夢の膜へと触れて、その中へ入り込む

内側にいる竜胆が固定される感覚を覚えつつ、私は夏彦の夢へと飛び込んだ


・・


目が醒めた場所は、柳永村にある雪霞様のお墓だった


「・・・竜胆、いる?」

『一応、我もついてはこれているし、会話は出来るらしいな。ただ、外には出られない』

「何かそれで不都合なことは」

『ないの。ただ、夢の中ではかつてと同じ不老不死のようじゃ』

「なんですって!?」

『鈴の魂と結びついている感覚が我にある。かつての感覚、懐かしい感覚。もう二度とあってほしくなかった感覚が、今の我には存在している』


その時期に準じた姿になる

それは夏彦に神堕としをして貰う前の私に戻っているということだ

竜胆が覚えた感覚は、その時の感覚

自分が夏彦に与えてもらったものが消えてしまって・・・なんとなく、嫌な気分になる


『鈴、大丈夫か?』

「大丈夫。じゃあ、神栄に行こうか。そこで小さい夏彦と、尊さんに会おう」

『了解じゃ』


翼を広げて、神栄の方角へ向かっていく

どこにいるかはわからないけれど、おそらくあの街に夏彦たちはいるだろう

早く会いたい。早く会って・・・

この悪夢から、目を醒まさせるんだ


・・


あれから、一年が経過していた


夢と現実の時間の進み方というのは全く異なるものだろう

体調不良もとっくの昔に良くなって、外に遊びに行けるようになった

けれど父さんと母さんは俺から目を離さない。一人で夢を抜け出す為に調査を行うことすら出来ない


両親曰く、俺は三歳か四歳ぐらいの時に誘拐をされたらしい

犯人は袮子という名前の男らしい。下の名前はわからないけれど、多分涼香の父親だ

それから、二人は俺を一人にしたくないらしく、母さんは仕事をやめて専業に

父さんは時間が許す限り俺と一緒にいてくれる


「夏彦、今日は何しよっか」

「んー・・・ゆっくりしようよ。公園で、お昼寝とか」

「外に出てお昼寝って・・・」

「だめ?」

「んー・・・でも確かに、今の時期だったらお昼寝も気持ちいいだろうね」

「春、だもんね」


夢の中の季節は春になった

外に出るようになって気がついたが、小さな俺は現実の俺と変わらず神栄にいるらしい

ちなみに小学二年生になった。今は七歳だ

小学校に通った記憶は殆どないから、なにかも新鮮だった

消えてしまうとわかっても、友達が出来た

・・・毎日を楽しく送れている。現実を忘れてしまいそうになるぐらい

立夏さんがいなければ俺はもう既に呑まれていただろう

それぐらい、夢は幸せすぎる空間なのだ


「・・・」

「お父さん?」

「いや、なんでもないよ。じゃあ桜並木の方に行こうか!」


明るく取り繕うけれど、俺だって気がついている

視線の先にいたのは俺達と同じような家族

けれどその家族には子供が二人いた


俺を産んだ後、病気にかかった母さんはもう子供を産めない体だ

それは夢でも現実でも変わらない出来事だった

二人共、もう一人子供が欲しかったのかな

・・・なんで、理想を叶える夢なのにこんなところは現実に準じているんだよ


「・・・」

「どうしたの、父さん」

「いや、彼女は・・・当時と全然変わらないけれど、間違いない」

「え?」


何かを見つけた父さんは、俺を抱きかかえたまま、全力で桜並木へ駆けていく

何を見つけた?彼女って?

混乱する中、父さんが立ち止まるのをじっと待つ


「・・・やっぱり、君だった」

「・・・」

「また会えたね、むふむふざむらいさん?」

「・・・よかった。貴方はやはり私を覚えていたんですね」


その声を聞いた瞬間に、俺は顔をあげる

ここにいるはずのない人物

けれど、誰よりも一番に会いたかったその人物は、俺を安心させるように桜並木の先で優しく微笑んでくれていた


「すず」

「はい。貴方の巽鈴ですよ、夏彦」


その名前を聞いた瞬間、目の前にいる鈴は俺が知っている鈴だと確信する

父さんの腕から抜け出し、俺は鈴の元へと駆けていく

その胸の中に飛び込んで、縋るように彼女の名前を何度も呼んだ


「鈴、鈴・・・鈴!」

「うん。私だよ。・・・記憶も何もかも無事でよかった」

「鈴、俺は・・・」

「わかってる。事情を聞くのも兼ねて、現状をどうするか相談しようか」

「ああ」


鈴と合流できたはいいが、夢から覚める方法はまだわからない

それに・・・


「・・・これはいったい」


後ろで困惑している父さんにどう説明するかも、悩みどころだ

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