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11:神語りの第二段階

雪霞さんは私達に夏彦お兄ちゃんの伝言を頼むと同時に、一緒にあることを話してくれる

私から見たらまだまだ未知の能力者「神語り」

私としてもその能力の可能性というものは知っておきたいけど・・・

正直、ここから先は嫌な予感しかしないのはどうしてなんだろうか


「元々、神語りというのはその本当の力を隠すために与えられた「別名称」なのだよ」

「本当の力って」

「それが第二段階に関わる話だ。三人とも、あの日語った卯月俊至を覚えているか」

「覚えているよ。卯月東里の曾祖父。僕的にあの後が気になってはいたんだけど・・・ちゃんと未練を果たせたの?」

「ああ。きちんと未練を果たし、成仏してくれたよ。後ろには、彼が大事にしていた神々が彼を手招き、良き友であった桑は、彼の旅立ちを悲しみつつも笑って送り出していた」


感動的な場面だったんだろう

雪霞さんはゆっくりと堪能するように語り

同時に、その声は酷く重かった


「私と俊至は同じ神語りではあるが、その能力は対極にある。私は、俊至のように神々から手招かれることは一生ない」

「じゃあ、雪霞さんは成仏できないってこと?」


「その通りだよ。酉島立夏。私はここを離れたら消える運命にある。どうせ消えるのなら、成せることを全て成して消えたいと思ってね。その日まで夏彦と一緒にいるわけだ」

「でも、夏彦君って貴方の生まれ変わりなんだよね?成仏出来ているってことなんじゃ」

「魂は成仏できているよ。しかし花籠雪霞という人間は成仏することなくこの世を彷徨っている。死んでから知ったのだが、この世界の成仏や輪廻転生の原理というものは一般的に周知されているそれとは大きく異なるようでね・・・」


ううん。雪霞さんのお話は難しいけど、こういうことかな

私達は成仏した後、転生が行われることが一連の流れだと思っている

けれど実際は・・・成仏と転生は別々の過程

魂はどんなものであろうとも、死んだら還るべき場所に戻り、次の持ち主とともに現世に向かうことになる

その魂の持ち主だった存在の成仏は必要ない

死んだ時点で、魂と個人は別々のものになり

幽霊として、未練を果たし終えるまでこの世界を浮遊する・・・ってことなのだろうか


「うん。なんとなく理解した。けど、そんなに長期間現世に留まって正常な訳がない。なぜ貴方は悪霊化していない?」

「できないんだよ。私を守る神様が側にいるのだから・・・常に霊体は清いままなんだ」

「それに、別れるならなぜ夏彦君の中にいるの?一度別れたんだよね?」

「私が再度取り憑いた。魂は元より私のものだから、すんなりと取り憑けたよ」

「今も、魂に刻まれた意識の交換というよりは・・・」

「憑依の方が、正当表現だね」


そんな事、夏彦お兄ちゃんも鈴お姉ちゃんも知らない話だよね


「夏彦お兄ちゃんに異常はないの?」

「ないよ。元より魂は私のもの。拒まれることもない。むしろ馴染んでいるぐらいだ」

「だから騙せたの?自分が魂に残る残滓だって」

「そうだね。でも、少なくとも魂の中に記憶は刻まれていた。残滓が存在したのは確かなんだ。嘘は言っていない」

「・・・」

「記憶の残滓が残っていたからこそ、ここまでしっかり夏彦に干渉を行える。悪いことは何もない。むしろ夏彦にとってはいいことばかりだと言っておこう。それで安心かい、猿見遊?」

「うん。安心した」


夏彦お兄ちゃんにとって、これの存在が不利益になるなら・・・霊体の盗取が可能か確かめるところだった

・・・雪霞さんは鈴お姉ちゃんと自分の生まれ変わりを案じているだけ

彼を支えるために取り憑いた。だから悪いことばかりじゃない・・・

それだけわかれば十分だ

信用しよう。この人を

そして聞き届けよう。その第二段階とやらを


「そろそろ第二段階のことを聞かせてくれるかな。神語りってなんなの?正式名称って何?」

「・・・かつて神語りは「神使しんし」と呼ばれていた。神の声を聞く事ができる人間の事を指し、神の力を行使した者たちの事を、かつてはそう呼んでいた」

「神の使者で「神使」・・・なのかな?」

「いいや。神を使う者で神使と呼ぶ。柳永も、神の能力を使用できた人間を後ろで神使と呼んでいた。表向きは普通の神語りとは異なる「特別な神語り」として崇められていたから、鈴もその名称のことは知らないはずだ。知っていても、智だけだろう」


智、智って確か、覚お兄ちゃんのご先祖様だよね

鈴お姉ちゃんとはお母さんが違う兄妹だと聞いている。そんな彼は、神様として生き残り、柳永村が滅びる日まで、あの村の一番上で様々な情報を得ていたと思う

だから智さんだけ

・・・その経由で覚お兄ちゃんは神使の事を知っていたりしなかったのかな

まあ、それは帰ってから夏彦お兄ちゃんが聞いてくれるかもだよね


だから今は、何も言わない

雪霞さんがいう、神使としての能力を聞かないと

夏彦お兄ちゃんの為に出来ることを、私もしておきたいから


「その使用方法にも二種類存在している。一つは私のように神を隷属させて従え、能力を行使する神使」

「隷属・・・」

「ああ。基本的に最上位の神で無い限りは従える。問題は・・・一度従えた神は私が隷属を解かない限り、私以外の神使の頼みを聞くことがないということだろうか」


「もう一つは、俊至さんの?」

「ああ。俊至のように神々と心を通わせて、友人として神に力を借りる神使がもう一つの分類となる」

「夏彦は、どうなるの?」

「夏彦だってその領域にたどり着ける。最高神の力を借りれる俊至か、最高神を従える私になるかはわからない。どちらに転ぶか操作することも出来やしない。成ってしまえば、一生その力を付き合うことになる」


目覚めないのが幸せか

それとも目覚めて苦しむか

選ぶのは夏彦お兄ちゃんだろうけど・・・でも、彼はその先に進むことを望むはず

例えそれが神の怒りを買うことだと知っても


「私としては、夏彦も俊至と同じになってほしい。けれどそれは誰にも決められない。勿論夏彦自身にも。それに夏彦は新しい道を切り開く可能性だってあるのだから」


そういった後、雪霞さんは間の意地に集中して私達の質問には答えてくれなくなった

彼の額に汗がにじむ

余裕とか言っておきながら、本当は全然余裕じゃなかったみたい


「・・・大丈夫?」

「私自身は平気さ。それよりも、夏彦の身体疲労が出てきたね。彼も思っていたようだが、数が多い」

「間に取り込むのが正解だとは思ったけど・・・それを続けていたら夏彦君が倒れちゃう」

「そうなると結局僕らは一晩起きて影に対処しなければいけなくなる。休憩無しで本拠地だ。それだけは避けたい」

「今の私達に出来るのは「影の根本的な原因を探る」だよね。どこから発生しているか特定できればいいんだけど・・・」


三人、夏彦お兄ちゃんの後ろで頭を捻る

いい考えは浮かぶだろうか

そもそも、この限られたスペースで影の発生源を特定するなんて難しい

ここで唯一移動が可能なのはのばらお姉ちゃんただ一人

影が蔓延る車内を移動する方法がそれ以外にも確立できたらいいのだが・・・そんな時間は存在しない


安全地帯とかあるのかな

たとえば、客室以外の共有スペース

盗難等二次被害がある可能性だって否めないし

・・・けど、ラウンジは影の襲撃があった

その被害は考えていないってことかな。基本的に全員を眠らせるのだから

けど、それ以外に影の被害があったら困る場所って・・・


「・・・聡子お姉ちゃん、立夏お姉ちゃん。この列車で被害があったら一番大変な場所ってどこだと思う?」

「運転車じゃない?あそこが止まれば、この列車も意味を・・・あ。そういうこと」

「被害があったら困る場所。そこなら影が寄り付いていない可能性もあるけど・・・この列車、自動運転システムは実装してないよね?」

「あー・・・この前大手が試運転をしてニュースになっていたあれね。でも、流石に実用化はされていないと思うよ。課題が多かったみたいだし」


ここから先は賭けの要素が出てくる

自動運転システムは立夏お姉ちゃんが言う通り、まだ実用には至っていない

けれど、夕霧の裏にいるお金持ちが支援して、秘密裏に実用化まで持っていったシステムを実装している可能性も無いとは言い切れない


現に夕霧の常連に、この列車を運営している社長がいる

夜想の常連である彼の協力があってもおかしくないのだ


「けれど、ここでじっとしているわけにも行かない。まだ八時。夕霧の到着は朝八時なんだから」

「後十二時間も神語りを永続的に使えるわけがないし、影が引っ込む可能性もない」

「だからといって影の出現箇所を特定している暇もない。僕らの今の最善策は外に出て、安全地帯を探すこと」


聡子お姉ちゃんが私達が言いたいことを言ってくれて、それぞれ無言で頷きを返す


「運転車両なら影がいる可能性は少ない」

「自動運転システムがあれば話は変わってくると思うけど・・・」

「遊ちゃん、聡子ちゃん。申し訳ないけど言わせてもらうね。私は「それ」この列車には無いと思うんだ。もしあるなら・・・行方不明者の理由に説明がつかなくなる」

「立夏お姉ちゃん・・・何を?」

「頻繁に発生している行方不明者がいることは二人もわかっているよね。全員が眠る前提のここで、それが行えるのって・・・それこそ安全地帯にいる乗務員なんじゃないの?」


立夏お姉ちゃんの言葉に、私は静かに息を呑む

この影の目的が、薄々見えてきた


私も知らない夕霧の姿はやっと表に出てきた

真実がいかに残酷であろうとも・・・私達はそれと対面しなければならない

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