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8:出発直後のラウンジ

夜想号が玖清駅を出て少しした頃


「遅いんだけど!あの二人、二人きりにするといつもこれなんだから!」

「居候は語る・・・」

「まあまあ、イチャイチャ期ってやつだよ。もうしばらくしたら収まるから」

「経験者は語る・・・」


夏彦と鈴がいくら連絡しても来ない中

先に私と酉島立夏、聡子と遊はラウンジで合流を果たしていた


乗車前に買った飲み物を私はグビグビ飲みつつ、二人に対する愚痴を述べる

家にいる時だって、二人きりにすると直ぐにいちゃつき始める

この前だって、私がいないところで・・・


『夏彦〜今日は暑いし、アイスクリームを作ってみたの』

『手作りなのか?』

『うん!一番に夏彦に食べてもらいたいんだ。どうぞ!』

『・・・ん、うん!美味しいな!』

『へへー・・・おかわりは』

『もらおうか!』


もう一口、もう一口とかいいつつ、タッパーの半分以上を食べていたり!


『んー・・・』

『どうしたの、夏彦。顔青いよ?大丈夫?』

『ああ。昨日から風邪気味みたいでな』

『大丈夫?治癒、入れとく?』

『そこまでじゃないんだ。ありがとうな』

『ううん。ご飯は食べれそう?』

『ん、食欲ないんだ・・・』

『昨日作ったりんごゼリーがあるの。それなら食べれそう?』

『ん。それならどうにか・・・』

『わかった。何も食べないよりは遥かにいいからね。今日は無理しちゃダメだよ?』

『ああ』


とか!二人きりになったら甘い空気と食事の匂いを漂わせてくるのよ!

本当に新婚夫婦なのよねあの二人。完全に何年も連れ添ってるわよ

あれとかこれで会話しだす時もあるし・・・


「はぁ・・・」

「・・・どした、のばら」

「ここ最近、夏彦と鈴と一緒にいたから、二人がいないと少し恋しくなるのよ」

「まあ、そういう時もあるさ。てか、高校卒業までは面倒見てもらえるんでしょ?大学どうすんの?そこまで寂しがるなら、一緒に暮らすつもりだったり?」

「流石に大学進学までしたら出ていくつもりよ。流石にそれ以降は二人に苦労をかけてしまうし・・・」


それに、私でも二人を見ていたら気がつくわ

二人は互いに言葉にはしていないようだけど・・・

同じなんだから早く言い合えばいいのに。家族が、子供が欲しいって


「進学先が県外の可能性も無いとは言い切れないもの。できれば近くの大学、近くに家を借りて、鈴に料理人として修行をつけて貰いたいのよね。あそこまで厳しい先生にはなかなか出会えないから」


二人の家庭なのだ。居候の私は何も口に出さない

だから今は・・・学生らしい私の理由だけを述べておく


「確かにね。鈴お姉ちゃん、スパルタなんだよね・・・?」

「ええ。かなりしごかれるわ。けど、その分腕も上がってる。最近は夕飯を半分任せて貰えるのよ。認められている気がして嬉しく思うわ!」

「え・・・あの鈴の領域に立ち入れるの?」

「あのキッチンは夏彦でも一緒に作る時以外は出禁らしいのに・・・まさかのばらが立ち入れているとは。まあ美味しいから納得だよね」


「ありがとう、聡子。これからも美味しくなるからきた・・・何よこの手は」

「高校卒業後は僕と涼香と舞花と一緒に暮らそう」

「貴方達はこれからも一緒に暮す予定なのね・・・」

「一人暮らしにメリットが今のところ無いし、三人で上手くやれているからね。三人揃ってご飯作れないから料理人はいつでも大歓迎。どう、遊ちゃんも。これからも全寮制かもだけど、もしも通学制になったら家を候補に入れて貰えると」

「考えておくね」


「遊。貴方は中学までは今の学校の中等部に通うのでしょうけど・・・貴方が高校の進路に悩む頃、私は一人暮らしをしていると思うわ。一人で決める前に相談ぐらいは先にしなさいよ」

「ありがとう、のばらお姉ちゃん」

「これぐらい当然よ」


同郷の年下な女の子

能力故に家族に嫌われて、色々なことで家族に頼るのが下手くそすぎるから・・・

変わりに甘えられるように道を作る

それが今まで私が遊に出来る唯一だった

けど、今はこれだけじゃない


「貴方にとって、私はどんな時でも味方でいるからね」

「のばらお姉ちゃん・・・」


同じ立場になって、苦悩の片鱗を感じた

遊の気持ちは全て理解することなんて出来やしない

けれど私は・・・出来るだけ彼女に寄り添える存在に、いつでも頼れる存在になっておきたいから


『楽しんでいるところ悪いが、のばら』

「・・・どうしたの、梅」

『警戒しろ。要が震えだした。術が展開され始めたようだな』

「要お兄様が・・・わかったわ」


要お兄様が震えだした

それは、彼が彰則お兄様の能力を感知した証拠であり

この列車が間違いなく未の憑者神の能力が関わっているという証明でもある


・・・酉島立夏には、この事実をどう話せばいいのかしら

私が乗った時点で列車には既に術がかけられていたから彰則お兄様が術者ではなく、先代が関わっている可能性もあるけれど・・・


『のばら・・・前回から術の強化が施されている。彰則の手が加えられているのだろう』

『それは、本人の意志だと思いますか、要お兄様』

『ううん。彰則は私欲に能力は使わない。だから・・・その』

「それだけわかれば十分です。要お兄様」


能力強化は彰則お兄様の意志ではない

彰則お兄様は・・・あの父親と弟の元にいるのでしょうね

幽閉されて、強制的に能力を使わされている状況に置かれているのかしら

考えただけでもゾッとするわね


・・・この情報は、酉島立夏には話せないわね

予測の域を出ないし、彼女に今焦りを与えて暴走させるわけには行かない

けど、後で夏彦と鈴には共有しておかないとね


しかし、あの二人は今何をしているのかしら・・・

まあいいわ。二人が来ないのならーーーー!


「三人とも、警戒態勢を取りなさい!何か来るわよ!」

「・・・なるほど。含羞の言うとおりだ。異常感知できるレーダー、含羞にもついていたんだね」

『ついとるわ!お前はあの神語り同様俺様の扱いが酷いな!』

『りっか。あぶないのきちゃう』

「風鈴草ちゃん、わかったよ」

『遊、来ますよ。戌と亥の影に』

「了解、天草!」


それぞれが憑者の姿を取る

服も、それぞれ本覚醒の姿だ・・・私以外

そういえば・・・神様との交わりが強いと、聡子や遊、酉島立夏のように衣装が変わって能力が強化される「本覚醒」状態になれるのよね


私はまだ一歩引いた位置。本覚醒を終えていない憑者神だ

けど、その状態じゃなくたって・・・引けを取らずに戦える


「来るわよ!」


窓を割らず侵入してきた黒い影

自我を持っているような動きをするそれは、ラウンジのテーブルを影で侵食していく


「・・・これ、潰していいのかな」

「待ちなさい、聡子」

『影本体に触れてはいけないよ、のばら。この影は未が作り出した能力の生物。体内に入り込むことで夢を見せてくる。影に危害を加えたら気体化ようだね・・・気体化する前に核を壊すか・・・隔離出来たらいいのだけれど』

「わかったわ、要お兄様。酉島立夏。私と遊に能力強化を貰えるかしら」

「いいけど、何をするの・・・」

「遊、今から私が影を捕らえるわ。その中に核が存在しているから盗取で奪い取りなさい」

「う、うん!」

「聡子。遊が奪った核を貴方が壊して。危険は伴うけど、強度がわからない核を破壊できるのは貴方ぐらいだから」

「心得た」


酉島立夏の能力強化を受けた感覚を覚えた後、私は踵を大きく鳴らして地面から蔦を出していく

その蔦は影を捕らえ、小さな密閉された袋の中に閉じこめていく


「私は影を捕まえるわ。遊!」

「うん!」


遊が右手に力を貯めて、影から何かを奪い取る

・・・普通の石ころのようだけど


「聡子、壊してみてくれるかしら」

「いいけど・・・これを壊したところで・・・・あ」


聡子が石を破壊した瞬間、袋の中で影が爆発する

袋は裂けることがなかったけど・・・中で気体になっているみたいね

蔦を駆使して影気体を吸収し、浄化的な事をしてみたけど・・・やはり甘いわね

植物の中に残っている感覚があるわね


「梅、浄化はいつまでかかりそう?」

『・・・五分で完全浄化だ。もう少し鼓舞の比率をこちらに貰えたら早くできそうだが・・・』

「遊、能力未強化でさっきの石は掴めそう?」

「やってみるね」

「じゃあ、一度強化を中断するね」


酉島立夏が強化をやめた後、遊は影から再び核を取り出してくれる

盗取を使用した彼女の手には、先程と同じ石が握られていた

うん、十分ね


「あの影は触れたり、体内に摂取したり等した場合・・・昏睡状態に陥るわ。私が影を捕獲するから、聡子と遊は先程と同じように核を奪って壊して頂戴」

「「了解!」」

「とり・・・立夏は、私の強化を全力で。影が発生させる気体の浄化時間を縮めたいの」

「わかった。きちんと受け止めてよ!」

「言われなくても!」


影が発生しているということは、夏彦と鈴の方でもなにかあったのかもしれないわね

合流が遅れているのは・・・きっとそれが原因かもしれないわ


「夏彦たちは六号車・・・ここは八号車だったわね。合流を目指して七号車に向かうわよ!」


三人に指示を出しつつ、私達は移動を開始する

鈴に稽古をつけてもらったのは、料理だけじゃない

足りない経験を、能力も・・・現状で引き上げられるだけ引き上げてもらったのだから

後は、私達自身が出来ることを・・・全力でやりきるだけよ

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