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5:夕霧への汽笛

店を見て回っているうちに、時刻は六時

出発は七時

そろそろ駅に向かっておきたい時間になったので、荷物を回収して、六人揃って駅に行こうと話していたが、のばらが俺に忘れていたあることを訴えてくる


「夏彦、私まだ酔い止め買ってないの」

「そうだったな。ごめんな、忘れてた」

「ううん。私も申し訳ないわ。ぎりぎりになって・・・」

「気にしないでくれ。俺も忘れていたし・・・立夏さん。これから混むだろうし先に行っておいて貰えますか?」

「了解。ホームで待ち合わせ?」

「そうしましょうか。三人は何か買い忘れたものありますか?一緒に買ってきますよ」

「私達は午前中に揃えたから大丈夫。気を遣ってくれてありがとうね」


三人ともそれぞれ必要な物は揃えていたらしい

準備がよくて・・・うん。予定を狂わせてなんだか申し訳ないな


「鈴も立夏さんたちと先に行くか?」

「ううん。私も夏彦とのばらと一緒に行くよ」

「わかった。じゃあ、また後で合流しましょう」

「了解!じゃあ遊ちゃんと聡子ちゃんは、私と晩ご飯買いに行こっか!」

「立夏さん!おやつは何円までですか!」

「三百円までかな!」

「ふっふっふっ・・・ここは立夏お姉さんが奢ってしんぜよう。好きなだけ買いな!」

「「やったー!」」


早速はしゃぎ始める三人を背に、俺達は俺たちはドラッグストアで向かって、酔い止めとか常備薬になりそうなものを購入しておく


「シャンプーとかも買っておいたほうがいいのだろうか」

「買ってないの?それなら買っておいたほうがいいわよ。売店にも売ってるけど、値段が優しくないから」

「そっか。教えてくれてありがとうなのばら。じゃあ・・・鈴が好きなのを選んでくれ。俺もそれを使わせてもらうから」

「んー・・・じゃあこれで。いつもの」

「了解。のばらは酔い止めだけでいいんだな?」

「え、ええ。後は頭痛薬と胃薬と風邪薬と・・・あれば十分かしら」

「十分だろうな。じゃあ買ってくるよ」

「お願いね」


「・・・鈴、ちょっと別行動させて」

「どこに行くの?」

「夏彦に買わせられないものを買うのよ!これ以上は言わせないで!」

「・・・ああ、あれか。流石に買ってきてもらうのは嫌だよね」

「・・・そういえば、ここ最近使ってないな」


ドラッグストアでそれぞれ必要なものを購入した後、俺達は今日の晩御飯を調達しに行く


「合流する前に、駅弁とか車内で食べるものを買っておこう」

「そうだな」

「後で少しずつ交換しようね」

「ああ」


俺と鈴は先ほど買ったばかりの弁当の袋と、らしくはないが少しだけ贅沢しようと買ったおやつの袋を持ち上げて笑い合う

のばらの分はまた別の袋に入っている

今回、彼女とは客室が離れている。確か立夏さんと一緒だったはずだ


列車に乗り込んだ後は、それぞれ俺と鈴、立夏さんとのばら、聡子と遊ちゃんで行動をする事になっている

基本的にアタッカーとサポーターが組んでいる形だ

立夏さんとのばらの組み合わせは若干不安だが・・・この組み合わせは能力的な相性を考慮して考えられている


戦闘能力が皆無の遊ちゃんを守りながら戦えるという面では、経験も戦力も十分に持ち合わせている聡子が遊ちゃんと一緒にいるのが最適解

俺と鈴は言わなくてもいいだろう。一番の理由は竜胆のことだけど

立夏さんとのばらは本当に心配なのだが、アタッカーとサポーターの組み合わせはきちんと満たせるし、のばらの足りない力量を立夏さんなら補えるという点でこの組み合わせが選ばれている


今回、行きに関してはそれぞれが泊まる部屋は結構離れている

帰りは大部屋が取れたらしいから全員一緒の部屋らしい

女性五人に対して一晩俺が一緒

俺は別の部屋に隔離するべきだと自分でも思うのだが、残念ながらもう一室は難しかったらしい

・・・鈴に頼んで一晩何もできないように縛ってもらうしかなさそうだ


しかし、全員分の客室が取れただけでも奇跡なのだ。前日から張って列車と宿泊先の予約をしてくれた東里には感謝だけでは足りない

後の問題は俺たちがどうにかすべき問題だ


「鈴は確かカルビ弁当だったよな?」

「うん。紐を引っ張ったら本当にあったかくなるのかなって思って」

「鈴がお肉を積極的に摂るようになったのは、一年前からは想像できないな」

「そうだね。昔はお肉料理もちゃんと作れなかったし・・・食べるのも少し苦手だったんだよね。今は夏彦が美味しそうに食べるから、私もつられてよく食べるようになったかな」

「俺の影響か」

「うん。ちなみに、夏彦が美味しそうに食べてくれる姿は私にとってご褒美なの。美味しくご飯を食べてもらえるのは、作り手としてはとっても幸せなことだから」


ふと、こんなことを言われてしまえばどう反応したらいいか分からなくて、行き場のない感情は全て照れや恥ずかしさに変換されてしまう

その姿を見て、鈴はまた小さく微笑んでくれる


「夏彦は確か海鮮弁当だったよね。お刺身と酢飯・・・」

「ああ。なんだか、久々に魚の気分だったから」

「ごめんね。私がお刺身苦手だから、食卓にも出さずにいちゃって。こっちのお刺身、口に合わなくて」


好き嫌いをよしとしない鈴は食べ物という食べ物は全部食べられるらしいのだが、苦手なものは少なからず存在する

生魚もその一つ

本人の話だと、食べられるのだが新鮮なものではないとかなりきついらしい


「確か鈴は、ここに来るまで色々なところに行っていたのよね」

「うん。海辺の街とかにも結構行っていて、そこで釣った魚をそのまま食べたりしてたんだ・・・だから、新鮮なものじゃないと受け付けなくて」

「なるほど。覚と東里もよく鈴と同じことを言っている。近場で獲れ、そこで消費される魚と、輸送して時間が経っている魚では少し味が違うのかもな」

「うん。そうなんだよ。いつか・・・」

「俺と恵さんは、お高い寿司屋に連行されても、回転寿司に連行されても味の違いが分からなかったが・・・」

「いつか、夏彦と恵には釣りたて魚のお刺身をご馳走したいです・・・」

「あ、ああ・・・その時はお願いするよ。恵さんも誘っておく」


鈴の少しかわいそうなものを見る目に、少し心が痛む。恵さんも巻き添え。なんだか申し訳ない気分を抱いた


「そういえば夏彦。貴方弁当とは別に何か買っていたわよね」

「ああ。観光雑誌だ。夕霧のな」


そう言いながら俺は鈴とのばらに先ほど買ったばかりの観光雑誌を持ち上げた

「夕霧峡・七つ温泉巡り他!現代の秘境を旅する五日間特集!」と表紙には書かれているそれは、地の利がない俺たちの地図がわりでもある

のばらと遊ちゃんは地の利があるけれど、俺達はさっぱりだからな

情報を得るという点でも、持っていて損はないだろう


「観光ねぇ・・・まあ、彰則お兄様を迎えにいくという大事な仕事はあるけれど、基本はゆっくり探索から。せっかくだし、新婚旅行も楽しみなさいよ、夏彦、鈴。私のお父様とお母さまも紹介するわ」

「ああ。こんな機会じゃないと夕霧にも行けないし、少しは楽しんで行こう」

「そうだね。でも、本題を忘れないようにね」

「わかってる」


それから俺たちは、先程別れた立夏さんたちと合流するために大きな荷物を抱えて、ホームへ移動する


「あ、夏彦、こっちだよ!」

「三人とも、早く!」

「転ばないようにね!」


先に駅のホームにいた三人と合流し、列車が来るのを静かに待つ

腕時計で時刻を確認してみる

・・・もうすぐ、列車が来るはずだ


「もうすぐだな、鈴」

「うん。もうすぐ」


もうすぐ、会いに行けますよね、彰則さん

無事だといいんだが・・・


九月二十日

夕霧へ向かう道を走るそれは、俺達の目の前に現れた


「来たね、夏彦」

「ああ。あれが夕霧行き夜行列車・・・夜想号だ」


ホームに到着したどこか昔ながらの空気をまとう列車


「これに乗るんだよね?」

「ああ。俺たちは六号車の三号客室だ。一番近い乗り場まで行こう」

「うん」

「立夏さん、聡子、また後で合流しよう」

「了解。落ち着いたらメッセージ入れるね」

「僕らも同じようにするね」

「ああ。じゃあまた後で」


それぞれが別々に行動を始める

俺は鈴の手を引いて、ホームを少しだけ移動し、部屋に一番近い位置の乗り場へ向かってそこから列車に乗り込んでいく

少しだけ急ぎ気味に歩いて、俺たちは六号車にある三号客室の扉を開いた

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