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4:喫茶店でのひととき

時刻は午後三時。列車の発車時刻は七時

なぜこんな早めに到着しているのか・・・その理由は彼女にある

手を繋いで駅近くにあるバス停から駅の方へ歩いていく

その間、彼女のテンションはとても高くて、上を向いては「わぁ・・・!」と子供のように目を輝かせ、感嘆の声を出していた

その可愛さに目を惹かれてしまうが、残念ながらまじまじと見ている暇はない

逆に注意力が散漫になっている鈴を俺がしっかり誘導しなければと意志を固めながら、周囲に気を付け歩いていく


「夏彦。私はここに来るのは初めてだけど、凄く大きいんだね」

「鈴はもしかしなくても、電車に乗るのは初めか?」

「実は。路面電車とかなら乗ったことが数回だけどあるよ。でも、こういう大きな駅に行くのは初めてかな」

「そうか・・・」


やっぱりと思っていたが、本当に電車に乗るのも、駅に行くのも初めてだったか

早く来て正解だった


「まだ時間はあるし、荷物はコインロッカーに預けて、立夏さんたちと合流して駅に併設しているお店の方を見て回らないか?少し見て回って、列車に乗る。どうだろうか?」

「もしかして、それが目的だった?」

「実は。もしかしたら鈴が初めてなんじゃないかなって思って、あえて予定を早めにな」

「なるほどね・・・確かに見て回りたいわよね。めったに来る場所ではないし」


本当は朝から見て回るつもりだったんだが・・・

マリモ姉妹のせいで予定が大幅に狂ってしまった


「ありがとう。じゃあ、まずは!」

「立夏さんたちがいる喫茶店に行こうか」


移動前に、改札近くのコインロッカーに向かい、荷物を預けておく

身軽になった状態で、先に駅についている三人が待つ喫茶店への道を歩き出した


・・


「あ、夏彦お兄ちゃんだ」

「夏彦だ」

「二人共よく分かるねぇ・・・」

「二人共よく分かるな・・・」


三人を探しに喫茶店へと向かうと、俺を見つけてくれた聡子と遊ちゃんからブンブン手を振られる

隣の空いている席を俺と鈴とのばらの三人でとり、それぞれ事前に決めていた注文を水を持ってきてくれた店員さんにお願いした


「植え込みに隠れてるよね・・・この席。出入り口が後ろな私はともかくさ、二人も席から立たないと出入り口の様子なんてわからないはずじゃ・・・」

「だから店に入った瞬間に聡子と遊ちゃんに呼ばれてびっくりしたんですよね」

「夏彦お兄ちゃんは身長が高いから、とっても見つけやすいよ。聡子お姉ちゃんが動いたから、出入り口のほうを見てみたら、植え込みの間から夏彦お兄ちゃんの頭が見えたの!」

「いつもの匂いがした。くんか。後はわかるね?」


聡子も鈴みたいな事を言わないでくれるか

彼女の鼻がいいことは理解しているのだが・・・体臭がきついみたいな感じで、ちょっと嫌な感じがするんだよな


「・・・わかる。鼻がいいのはわかるから。頼むからそれ以上は何も言うな」

「わかった」

「でもさ、三人とも重役出勤だよねぇ。まさかこんな日に寝坊だなんて」

「「「滅相もない・・・」」」

「メッセージでゲームしてたーって言ってたけど何してたの。徹夜とか、しょっちゅうしている私が言うのも何だけど、体に悪いよ?」

「まあ、そうね・・・ええ。今回ばかりは貴方の意見に同意してやるわ、酉島立夏」

「いちいちフルネームで呼ばないでくれる?まあもう慣れたけどさ・・・」


話によると、彰則さんのお母さんとのばらのお母さんが姉妹らしい

なので、彰則さんとのばらは親戚。嫁入りした立夏さんものばらの親戚に当たったりする

けれど彰則さんに懐いていたのばらは、唐突に現れた立夏さんの事が未だに気に入らないらしく、結構あたりがつよい


「のばら、もう少し普通にできないのか」

「・・・今更変えられないわよ。変えるタイミングをむしろ見計らってるぐらいよ!」


けど、のばら自身立夏さんとの関係を普通にしたいと考えているようだ

フルネームで呼ばず、名前で呼ぶような・・・そんな普通の間柄に


「あ、注文した品が来たわね。鈴は抹茶ラテだったわよね」

「うん。スペシャルロイヤルミルクティーはのばら?」

「いや俺だ」

「じゃあ、ブラックコーヒーは」

「私ね」

「・・・逆じゃない?」

「「なぜ!?」」


注文した品がやってきて、俺たちも三時のおやつを楽しんでいく

飲み物に対して、鈴からツッコミを入れられるが・・・

これがおすすめだと書いてあったからな。仕方ない

いつもの俺ならのばら同様ブラックだが、今回はおすすめで行くつもりだ


「ケーキにはブラック以外認めないわよ・・・」

「のばらお姉ちゃん渋いねぇ・・・ケーキは何を頼んだの?」

「ショートケーキよ。遊はモンブランね。一口交換しましょ」

「うん!」

「夏彦。僕は芋タルトなんだけど」

「俺はガトーショコラ」

「・・・キャラ迷子になってない?」

「なってない。聡子も一口交換か?」

「うん。できれば口に。のばらと遊ちゃんみたいに」


ふと、隣に顔を向けると、のばらと遊ちゃんは互いのケーキを一口サイズにしたものをフォークに刺して、互いの口に運んでいた


「やらんわ。ほら、皿にやるから」

「いいじゃん減るもんじゃないし」

「鈴からの痛い視線が刺さるの。俺がするとしたら鈴と・・・」

「夏彦お兄ちゃん?」

「遊ちゃんぐらいの子供だけだ。もう少し小さくなって出直してこい」

「無茶なこと言わないでよ・・・ま、冗談だから気にしないで」


互いの皿に互いのケーキを一口サイズにしたものを置いて交換完了


「ふむ、結構しっかりさつまいもだな。美味しい」

「ガトーショコラ頂くね。うわこれ超苦い・・・だからロイヤルミルクティー?」

「ああ。これとセットがおすすめと書いてあったからな」

「なるほどねぇ・・・らしくないと思ったけど、おすすめならおすすめを選んじゃうよね」


聡子が自分のケーキで口直しをしつつ、ロイヤルミルクティーの理由に気がついてくれる

そう。ケーキセットを頼むとしても、どれがいいかわからなかったので俺は適当に当店おすすめを選んだのだ

飲み物も同様。セットで頼むのがおすすめと書かれていたもの

我ながら適当加減がすぎるが・・・悩んだ時はおすすめを頼んでおけば、はずれはないからな


「夏彦、私は季節のパフェなんだけど」

「生クリーム多めだな。うお、下の方にマスカットがゴロゴロ入ってる」

「ぶどうじゃないの?」

「あ、ええっと・・・うん。マスカット。これは多分、マスカット」


見分けはつかないけど、季節のだし、緑だしマスカットだろう

いや、でもぶどうも秋だよな。皮を向いたら緑だったような・・・


「季節のだからマスカットだよ。私のと一緒」

「本当だ。でも残念だね、交換できないや」


鈴のパフェに入っていたなにかは、マスカットだったらしい

よかった。間違っていなかった

けれど、立夏さんも同じマスカットメイン。彼女はマスカットケーキだけど

この流れだと俺達みたいに交換な流れだったが・・・交換は無理そうだな

同じようにできないことを寂しそうにする鈴とは対照的に立夏さんの表情は明るかった


「交換できないのは寂しいけど、鈴とはお揃いだからいいの!」

「同じマスカットだけど、商品違うよ」

「それはそうだけどさ・・・こんなに食べたくなるようなメニューがある中で、同じマスカットメインを選ぶのって凄いと思わない?」

「立夏・・・うん。そうだね。凄い確率だよね」


嬉しそうにはしゃぐ二人を和やかそうな視線で見る他の四人の間で、俺は少し疎外感を覚える

もちろん、立夏さんと鈴が仲良しなのは知っている

二人が仲良くしているのは、とてもいいことだって俺も理解はしているが・・・


「・・・苦い」


ちょっと寂しさを覚えたり


「夏彦、どうしたのよ。ちょっとしょんぼりしてるわよ」

「のばらお姉ちゃん、多分夏彦お兄ちゃんも、鈴お姉ちゃんと仲良くしたいんだと思う」

「なるほどなるほど・・・でも今は邪魔できないよね。あの空気を割ることは僕らには難しい」

「ここは私達三人で乗り切るべきじゃないかな」

「そうね、遊の言うとおりね」


三人は顔を見合わせた後、ケーキを片手に俺のところにやってくる


「夏彦。私のショートケーキ食べない?」

「せっかくだから皆で交換しよ!」

「今度は飲み物込でねー」

「え、あ・・・いいのか?」

「勿論よ。食べちゃいなさい」

「寂しい思いはさせないよ?」

「向こうがマスカット同盟なら、こっちはバラバラケーキ同盟で仲良くしようぜ・・・」

「なんだよバラバラケーキ同盟って・・・じゃあのばら、遊ちゃん。一口ずつな。苦いから気をつけてな」

「うん。それは食べた僕も保証する。超苦い。ミルクティーも貰って食べよう!」

「そうね」

「ありがとうな、三人とも」

「お礼を言われるような事してないわよ。じゃあ、交換も済んだし食べましょうか」


のばら達の気遣いを受けつつ、俺達は出発前のひと時を過ごす

賑やかに、今まで通りの日常を過ごしているように

嵐の前のひと時を、これでもかというほどに楽しんでいった

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