表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/43

3:道中の新事実

「のばら、荷物大丈夫か?」

「手荷物だけでも持とうか?」

「大丈夫。心配はいらないわ。それにこれで一度ここまで来たのよ?」


二人分の荷物をつめた俺と鈴の旅行鞄を俺が持ち、のばらは自分の旅行鞄を自分で持つ

今回は車で移動というわけには行かないから、バスを乗り継いで玖清駅前まで向かうことになる

鈴とのばらに座席に座ってもらい、俺は鞄がどこかに行かないようにあえて立つ

そこからのんびり駅前までむかうことになるのだが・・・


「しかし、なんで車はダメなの?」

「結構問題になっているんだよ。拓実先輩が言ってたこと、詳しく調べたらそれに引っかかってな」

「・・・行方不明者と昏睡者のことかしら」

「ああ。その人達が止めた車が周辺施設の駐車場を占領してな・・・何があるかわからないし、移動は公共手段を使って、迷惑にならないようにと」

「神経質すぎるけど・・・まあ、その考えは嫌いじゃないわ」


夜想号では、全員が何らかの夢を見る

その途中で、何人かは行方不明になり・・・何人かは昏睡状態になってしまう

夕霧側は問題を否定しているし、原因だって不明だ

しかし・・・


「のばらたちは、ここに来るまでの間に眠ったのか?」

「ええ。でも、私は皆が言う「夢」を見なかったわ。普通に寝てたわ。風花お姉様と遊は見たっていうけれど、私は全然なのよ・・・」

「「はぁ!?」」


まさかのここで前提が全部ひっくり返る新事実

前提は「夜想号に乗った全員が眠って、何らかの夢を見る」だったのに

まさか寝ていない人間がいるだなんて・・・


「そこまで驚くことかしら」

「のばらは自覚して・・・前提が全部ひっくり返ったんだよ。その新事実」

「だって、そこまで重要な情報とは思わないじゃない。それに私が異常なんじゃないかって思い始めて・・・」

「十分重要だから話してほしかったかな」

「え、ええ・・・じゃあ今少しだけ話すわね。覚えている範囲だけど・・・」

「よろしく頼む」


のばらは四月のことを思い出しながら、あの時のことを話してくれる


「確か、風花お姉様も遊も眠り始めたのは最後の停車駅以降よ。アナウンスがあったもの」

「アナウンスって」

「ええ。よくあるじゃない。ここから先、玖清まで停車はありませんってアナウンスがあったの。それを聞いたわ」

「眠った順番とか、覚えている?」

「まずは、遊が最初に眠ったわね。夕霧からこっちに出る列車も夜に出発するわ。もう夜も遅かったし、遊は子供だからいつもの眠る時間が来たと思って気には留めていなかった。時刻は九時だったはずよ」


九時ぐらいなら、遊ちゃんぐらいなら寝始めてもおかしくない時間だ

違和感を覚えないのもわかるが・・・


「よく時間を覚えているね」

「そわそわしてて何度も時計を見ていたのよ・・・だから覚えているの。それから、風花お姉様も明日に備えて、と眠たそうに布団に入ったわ。十時ぐらいだったわね」

「早いな」

「風花お姉様、早寝早起きなのよ。十時には基本的に寝て、五時に必ず起きる生活をしているわ」


なんだかこれは想像に容易いな。彼女らしい感じがする

確認しなくても問題なさそうだ。だって絶対早寝早起きしてそうだし!


「二人が眠った後、私も眠ろうとしたんだけど・・・寝る前にお手洗いに行っておこうと思って一度外に出たわ」

「外に出たのか?」

「ええ。あの時を思い出して、ふと思ったわ。おかしいわよ。乗客は遊や風花お姉様みたいに早寝する人間だけじゃないのよ?」

「けど、誰ともすれ違わなかった」

「ええ。人っ子一人ね・・・。私は用を足して直ぐに客室に戻ったから、他の車輌に移動したりはしていないの。売店車両とか展望ラウンジ車両に行ってみたらまた違ったかもだけど・・・」


確かに、のばらの言う通り夜想号には売店を展開しているだけの車両と、景色・・・と行ってもほとんど夜景になってしまうが、外を見られる展望ラウンジ車両が存在している

そこに行けば、人がいたりはしただろうけど・・・流石にそこまでは行っていないらしい


「いや、十分だよ。しかしなんで夢を見なかったんだろうな」

「夜想号で見る夢はどう考えても未が展開する能力のそれとしか考えられないのだけど・・・のばらだけが作用しなかったのは私も気になる部分かな」

『それは、俺達から説明していいか?』


ふと、のばらの周囲に半透明の何がか二つ動き出す

手のひらサイズなその光は、のばらの両手に座って、俺たちを見上げてくれる


「む、君は・・・」

「要お兄様に、雪矢お兄様?」

『こんにちは、のばら。巽さんもお久しぶりです』

『あの時はありがとうな。今回も少し能力を借りる』


おっとりした男の子が要さん、活発な空気を出している少年が雪矢ゆきやさん

のばらの、二人いたお兄さんたちはここぞというタイミングで俺たちの前に現れた

そして同時に、のばらの膝には半透明のうりが座っている


「お前まで来たのか・・・梅」

『このうるさいガキ共を連れてきたのは儂だぞ。感謝されることはしているが、そんな目で見られることはしていない!』

「あ、ああ・・・なんかすまん。それで、お二人はなぜここに?」

『あの時の事。俺たちが知る範囲で話に来たんだよ』

『あの時から、こんな風に表には出てこれませんでしたが・・・僕らは妹の側にいましたので』


確かに、二人は梅と一緒にのばらへ憑いていたみたいだから、彼女を通して色々なものを見ていたのだろう

同時に、あの時の彼女が見れなかった世界も見ていたはずだ


『のばらがあの列車で寝なかったの、俺達がこの猪に頼み込んで守ってもらったんだよ。要兄ちゃんが「飲まれたらヤバい」っていうから・・・』

「なぜ、ヤバいってわかったのですか?」

『彰則の、気配がしたから』

「彰則さんの気配って・・・」

『彰則は神様と一緒にいるようになってからいつも「この能力は危険だ」と言っていました。僕は死んでからそういう能力の気配を感じ取れるようになりまして・・・空気で、彰則を感じたって変な感覚なんですけど』

「その言葉を覚えていたから、梅にのばらを守ってもらったのですね」

『はい』


夜想号の夢は全部彰則さんの・・・未の能力で確定か

のばらが夢を見なかったのは、彰則さんが言っていた危険だと告げた言葉を覚えていて、その空気を感じ取った要さんのおかげか


「しかし、要お兄様。なぜそんなことを・・・」

『小さい頃はよく一緒に遊んでいたんだよ。それこそ、僕が死ぬまで』

「年、近いんですか?」

『二歳差だよ。もう随分離れちゃったけどね!』


笑えないジョークに俺とのばらは苦笑いを浮かべていると、雪矢さんが要さんの腹に肘を入れる


『すまないな。うちの兄ちゃんが・・・こういうジョーク大好きで、よく彰則兄ちゃんを困らせてたんだよ』

「なんか、想像できるな」

「私もよ・・・」

『とりあえず、こんな事情だな。サンキュ、猪』

『猪言うな。帰るぞ、雪矢、要。お前らの相手は面倒だ。いつもどおり背後霊でもやってろ』

『は?守護霊なんだが?目ン玉腐ってんのか』

『は?畑荒らしの常習犯如きが僕らのことを背後霊扱い?調子乗ってんじゃないの?』

『・・・力を得てから調子に乗り始めたな、シスコン共』

『『シスコンじゃない!これは兄として当然の務めだ!』』


梅と共に、二人のお兄さんは透明になって元の場所に戻っていく

居場所は、のばらの背後・・・なのかな


「・・・仲良くやれているのかしら、あの三人」

「多分、やれているんじゃないか?」

「二人共、そろそろ駅につくよ」

「ああ。ありがとう鈴」

「・・・小声で何を話してたの?」

「シスコンと猪の喧嘩かな・・・」

「なにそれ、変なの」


そういえば、竜胆は一度俺のところに帰ってきている

竜胆がいない状態の鈴は普通の人間と変わりがない

そのため、先程の要さんと雪矢さん、梅の姿は認識できていないし・・・声も聞こえていない

聞こえていたのは、俺とのばらの声だけだ

周囲にももちろん。なので先程までの光景は周囲や鈴からしたら、俺とのばらが小声で話していたようにしか見えていない

会話は、若干変だけど・・・そこまで気にしていたら何もできやしない


駅前に到着し、荷物を持ってバスを降りる

午後三時、俺達は出発地点である玖清駅に到着した

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ