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夜想の見た夢。 −憑者神と神語りの夕霧夢幻旅行記−  作者: 鳥路
序章:夕霧に向かう前の20日間は
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9月16日②:神からも忌み嫌われた土地

良弥さんの案内で、膨大な土地を有する乾家の敷地へ足を踏み入れた俺達は、聡子の母親である理穂子さんや使用人の皆さんに歓迎されつつ、乾家の応接間へと通された


そこで執事さんからお茶を出してもらって・・・当事者が揃った後、聡子が代表して口を開いてくれる


「まずは、その・・・お父さん、お母さん。ただいま」

「おかえり。亜麻高の件は涼香ちゃんや巽君たち・・・神栄にいる憑者神の皆に任せてしまって・・・苦労をかけた」

「いえいえ。むしろお礼を言うのは俺たちの方です。亜麻高での全員分の滞在費を全額負担してくれたこともですが、何よりも・・・亜麻高に行って、自分の力と向き合えた子がいます」

「そうなのかい?あの、事件で?」


八月中旬に俺たちは亜麻高島で起きていた神絡みの事件の調査を良弥さんに依頼され、そこにしばらく滞在して調査を行っていた

あの時も色々あったが・・・特に一番印象深いのは、天草と遊ちゃんのことだ


「僕からも報告を上げた通り、海難事故は最高神の一人が引き起こしていた事件。それに神器を落とした低級の神が巻き込まれていたんだ」

「ああ。確か天草、と言っていたな」

「その神が落とした神器を海底から拾い上げたのが申・・・盗取の能力を持った、猿見遊という少女です。まだ小学生の女の子なんですよ」

「そっか・・・確か夕霧の憑者神だったよな、その子」


「うん。遊ちゃんさ、夕霧で色々あったみたいで、能力のこと凄く嫌っていたんだよ」

「だろうな。盗取は正直・・・私としても持ちたくは無い能力だからね。だからといって戌もどうかと思うが・・・」

「その子と、亜麻高で発生していた事件の渦中にいた神から良弥さん宛にお礼の手紙を預かっています」


俺は鞄の中から遊ちゃんと天草からそれぞれ預かった手紙を良弥さんに手渡す

しかし彼は・・・


「えぇ・・・私は特に何もしていないんだが」

「キッカケは良弥さんだからと。どうか、受け取ってあげてください」

「ん・・・わかった。手紙は受け取るよ。返事は今度郵送させてもらう。聡子、届いたら渡してあげてほしい」

「わかった」


キッカケは彼にあるけれど、彼には何かをした実感はない

それはそうだろうけど、良弥さんが聡子に亜麻高の事を任せなければ、何も始まっていなかったから


「お父さん」

「どうした」

「・・・今日ここに来たのは顔を見せるっていうのが一番なんだけど、聞きたいことがあってここに来た」

「・・・聞こう」

「お父さんは昔、馬越家が経営する旅館の内装に携わったことがあるよね」

「ああ。その時、打ち合わせも兼ねて夕霧に滞在したこともあるが・・・」

「その時のこと、教えてほしい!」


「なっ・・・なんで。事前に夕霧の事を知りたいとは言っていたが、夕霧にでも行くのか?」

「行く。今月の二十日」

「確かに夕霧の道はその日に開くとは聞いている。何をしに行くんだ?観光じゃないんだろう?」

「実は・・・」


聡子はまだ良弥さんに彰則さんのことは話していなかったらしい

事情を話した後、良弥さんは険しい表情をその顔に浮かべていた


「・・・資料で、未が夕霧の日辻家の子息とは知っていたが、そんな事が起きていたとは。正直、反対だ。危険すぎる」

「僕はその彰則さんって人のことは何一つ知らない。けど、僕らの事情を知っても受け入れてくれた立夏さんにとって、凄く大事な人なんだ」

「・・・ああ、そうだろうな」

「僕は、この力をもう殺しには使いたくはない。大事な人達を、守れる力にしたいんだ。だから止めないで。僕は何があっても立夏さんと夏彦を守りに夕霧で同行する」


「巽君も行くのかい!?」

「はい。俺と鈴も夕霧へ向かいます。後は、のばらと遊ちゃんも・・・」

「君が行くなら止める理由はないかな。行っておいで、聡子」

「「あっけない!」」


最初は反対されるようなオーラが全開だったのに、なんで俺が行くってわかったらすぐに許してくれたのだろう・・・


「良弥、夏彦がいるから大丈夫って即答するのはちょっとどうかと思いますよ!?」

「俺もそう思います。なんで俺がいるからって・・・」

「神語りがいれば、あの土地で優位に動けるだろうからね」


良弥さんはソファからのんびり立ち上がり、一瞬で憑者の姿をとった


憑者神は大きく分けて三種のパターンが存在している

血縁者が憑者または元憑者で、その性質を受け継いだ存在

覚、恵さん、東里、立夏さんはこれに該当している


神憑きの儀式を通して、憑者神になった存在

これには鈴、舞花、彰則さん、のばら、風花ちゃん、遊ちゃんが該当する


乾と袮子の憑者に該当するパターンは基本的に覚たちと同じ血縁者が元憑者・・・という部分までは一致しているが・・・弱くなってしまった能力を安定して使用するために、もう一人、同じ系統の神様を憑けている


そのため、第一線を退いた「先代」ではあるが・・・良弥さんはまだまだ現役の憑者神

同じように、憑者の姿をとることができるのだ


「・・・元より、憑者神というのは、神をその身に宿し、力を借りている存在」

「そう、ですね」

「通常状態であれば・・・そうだな、適合値も関係してくるが、基本的に百%から八十%はその能力を引き出していると考えてもらっていい」

「適合値・・・とは、どこで判別するんですか?」

「クソバ・・・母が言っていたが、どうやら髪に出るようだ。詳細は不明だが・・・」

「なんで僕を見るのかな?」

「・・・聡子が産まれてしばらくした頃。ババアが「今度こそお役目を果たせる存在が産まれてくれた」とはしゃいでいた」


良弥さんの母で聡子の祖母である存在は二人からクソババア認定なのか・・・

親子の似ている部分を発見しつつ、彼の話に耳を傾ける


「あのババアは憑者の知識に関しては誰よりも凄まじかった。だから、聡子は適合値が高い部類なんだが・・・私としてはどこで適合値を判別したのかさっぱりでな」

「良弥。それがわかった時、聡子はいくつだったんですか?」

「あの時の聡子は髪が生えた赤ん坊だったぞ」

「・・・なるほど。髪。髪が生えてきた辺りは・・・産まれてしばらくで才能を見抜かれた遊ちゃんにも条件が一致する」


そこで俺と涼香は鈴と聡子にそれぞれ目を向ける

遊ちゃんは、亜麻色の髪を持つ女の子だ

そして鈴は青緑、聡子は水色だ


対して、覚は薄茶の髪なのだが、毛先が白

恵さんは薄墨だが、同じく毛先が紫

東里も黒で、毛先が桜色・・・

目の前にいる涼香も、基本は夕焼け色の髪なのだが・・・薄っすらと毛先が灰になっている

同じように、立夏さんも焦げ茶の髪だが、毛先は白


のばらは・・・赤茶色に栗色だったな。遊ちゃんの話だと、昔は栗色一色だったらしいけど

ここから考えるに・・・


「憑者の適合値は髪に出る。おそらく、髪色が一色で染め上がっていれば、適合値が高くなるんだ」

「なるほどなるほど。確かに聡子も鈴も憑者の中では高水準だもんね」

「そうなると、彰則さんと風花ちゃんも適合値が高い部類だな」

「風花はわかるけど・・・彰則さんもなの?」

「ああ。彰則さんは真っ白だったからな。けど、そこで引っかかってくるのはのばらなんだよ」

「確かに、昔の写真では、のばらは栗色だったよね」

「ああ。遊ちゃんから俺も聞いている。もしかすると、適合値というのは生来決められた数値ではないかもしれない」


神様との結びつきが強くなれば、神様は沢山力を貸してくれる

それならば、俺がやっている神語りはその結びつきを強化するものではないだろうか

のばらと、あの子の内側にいる梅が語ることで、力のやり取りを約束し、憑者への一歩を踏み出したように

聡子と涼香の内側にいる含羞と菊が大人しくなり、条件があるとはいえしっかり力を貸してくれるようになったりしたように・・・

手段さえあれば、適合値は上昇させられるのかもしれないな


「そうだな。私もそう思うよ。今の涼香ちゃんは、ここにいた時よりも神との結びつきが強い」

「・・・そうなんだ」


涼香は少し嬉しそうに小さく笑う

鼠にされたり散々なことも多かった。好みではない服を着て、おしゃれが好きな菊の欲を叶えたりもした

その全ては何一つ無駄ではなかった。菊も少しずつ涼香に馴染んでくれているようだ


「憑者神だけでは、いくら適合値が高かろうとも神と共存することは叶わない。そんな私達と神の間を取り持ち、力を引き出すのが神語り・・・巽君の役目なんだ」

「俺の役目・・・」


「夕霧はそこで行われている儀式の関係上「神からも忌み嫌われた土地」でね、儀式中に命を落とした存在の怨嗟が神の力を弱らせてくる。それは、私達の中にいる神々も例外ではない。夕霧にいた時は身体が重かったよ・・・」

「・・・そうですか」

「・・・それは、なかなかに」

「聡子だけというのなら不安だったが、君がいれば周囲の霊の影響をなくせるし、神と語ることで力を引き出すことも可能だろう。あの土地で、他の土地と同じように戦える」

「・・・」


夕霧では俺が一種のキーパーソンか

五人の憑者神たちの力を最大限に引き出しつつ、彰則さんを見つけ出す

なかなかに骨が折れそうだが、必ずやり遂げないと


「・・・そろそろ時間だね。帰りの電車もあるだろう」

「あっという間すぎるよ。話足りないし」

「まあ、聡子から事前に質問事項の連絡を貰っていなければそうだっただろうな」


良弥さんは上着のポケットからUSBメモリを取り出し、それを俺たちに差し出す


「夕霧でのこと、鈴さんが聞きたがっていた乾と袮子の儀式のことをレポートにまとめておいた。帰ったら読んでほしい」

「ありがとうございます」

「いえいえ。君たちが無事に夕霧で目的を果たせることを祈っている」

「「「はい!」」」

「涼香ちゃんはサポートだろうけど、それも大変なことだ。聡子たちをよろしく頼むよ」

「任せてください!」


良弥さんから情報と激励を受け、聡子と涼香の里帰りと、俺たちの情報収集の一日は終わりを迎える


しかし神語りが重要になるとは思っていなかったな。サポートだけかと思ったら、一番重要な立ち位置になるだなんて

雪霞と二人なら十分すぎる援護をできるだろうけど・・・


「・・・それだけで、いいのだろうか」


できることは最大限にしておきたい

どうしたらいい


そもそも神語りの能力はこれだけなのか?


そんな疑問を抱いた帰り道

雪霞が心の中で、険しい表情を浮かべていたことにはまだ気がついていない

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