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第5歩 『放課後の空き教室にてを編集』

 放課後、俺の中の憂鬱感は美喜多さんのおかげで少しは和らいでいた。しかし、変化したのは俺だけで、クラスメイトは相変わらず敵意の眼差しを向けてきている。

 

 今日一日俺に話しかけてきたのは美喜多さんだけで、何かと話しかけてくる冴島さえじまさえ、俺に近づいてこなかった。


 冴島は二年生で同じクラスになってすぐに俺に連絡先の交換を申し出てきた。


 人見知りを全開に発動させながら、スマホを取り出したその日の夜に

 

『明日の持ち物ってなんだっけ?』


 とメッセージが届いた。

 

 その日以降も


『明日の数学の宿題、なんだっけ?』

『明日の英語のテスト、やばいんだけど!』


 と、明日の持ち物や宿題のこと、テストの範囲などやたらと俺にメッセージを送ってくる。 


 さすがにおかしい、と教室で彼のことを観察していると、クラスの中心的な人物として活躍し、クラスメイトからの好感度も高い。

 

 そんな彼も紗代の話を信じて俺に敵意を向けてくる。彼は紗代と仲が良い、だから彼女を傷つけた俺のことを許せないのだろう。


「じゃ、また明日」

「はい......あ、私の後をつけてくるのはやめてくださいね」

「しないから!」


 みんなから冷たい視線を向けられる中、悪意しかない言葉だが、敵意の感じない美喜多さんとのやりとりは心地のいいものがあった。


 美喜多さんが教室から出て行き、俺も帰宅しようと腰を上げると、冴島が近づいてきた。


「よぉ、紅貴こうきちょっとついて来い」

「わ、わかった」


 冴島が俺に威圧的に話しかけてきたのだ。

 俺はその様子に違和感・・・を感じながらも彼の後をついて教室を出る。

 教室を出る際に彼が「誰もついてくんなよ」とクラスメイトに言い放っていた。

 

 連れてこられたのは誰もいない空き教室だった。

 俺はなにが起こるのか分からない恐怖を感じていると


「悪かった!!!」

「....なにがっ?!」


いきなり大声で謝られて思わず驚いてしまった。

 

「俺はお前に対してあんな冷たい態度をとってしまった―――だから!!」

「わからんわからん!どゆこと?!」


 いつまでも頭を下げている冴島に、落ち着いて話してくれと頼みながら、少し埃のかぶった椅子に腰かける。

 彼にもそれを促すと、おとなしく俺と向き合う形で椅子に座った。


「で、どういうことなんだ?」

「紅貴は紗代の言っているようなことしてないんだろ?」

「......え?」


 この空き教室に来てから二度目の驚きだった。

 

「俺には紅貴がストーカーまがいのことをしたなんて、人を傷つけていたなんて思えないんだ」

「......なんで、そんな」

「俺はお前が優しいやつだってことを知っている。だからお前を信じる」

「......冴島」


 冴島は真剣な眼差しで俺のことを見ていて、その瞳からは俺を信頼させて騙そうなんて悪意や敵意を感じなかった。


(さっきの違和感はこれの所為か)


 さっき教室で冴島に声をかけられたとき、彼の声色や態度に違和感があった――その理由がはっきりとわかった。俺に対する敵意がまったく感じられなかったのだ。


「いやいや!俺、お前とそんなに話してないから優しいとかそういうのわからないだろ!」

「分かる!」

「なにその自信?!どこから来るの?!」


 なにも根拠のない自信でしかないのに、なぜか彼の真剣な眼差しは崩れない。

 

『慎重に動いた方がいいよ』

 

 今朝の雪の言葉を思い出す。

 冴島が俺のことをなぜこんなにも信頼してくれているか分からないし、俺を騙そうとしている可能性もゼロではないが......


「.....わかった、信じる」

 

 ここに来て初めて彼の表情に笑顔が浮かんだ。 

 その表情を見て俺は思った....本物だ、と。


「ありがとう!それと、本当にすまなかった!」

「いいから、いいから!お前が俺のことを信じてくれてるのが分かったから、怒ってないよ!」

「.....よかったぁ」


 安堵の表情をで椅子の背もたれに体を預けた冴島を見て、俺は疑問でしかなかった。


「なぁ、俺がやってないって自信あったんなら、そうみんなに言ってくれてもよかったんじゃないか?」

「あー、無理無理。証拠なんて何もないし、人望も紅貴より紗代の方が高いし」

 

 雪と同じことを言われ少し心にダメージを負ったが『本当のことだから仕方ない』と、自分を慰める。


「分かった、その辺の事情はまた夜にでも聞くことにするよ。あんまりここに長居すると怪しまれるだろうし」

「ん?やってないんだったら、その事をみんなに知ってもらった方がよくないか?」

「俺は紗代が何を言いふらしているかも知らないから下手に動きたくないんだよ。だから、先にお前から情報が欲しいんだ」

「なるほどね、賢明なことだ」


 冴島はそれ以上何も言わずに、教室を出ていくために立ち上がって歩き出したが、なぜか扉の前でその足を止めて俺に振り返った。


「なぁ、紅貴は紗代のこと恨んだりしてないのか?」

「そりゃあ、多少恨みはあるけどあいつをどうこうしようとは思ってないよ。俺はただ、このままだと妹にまで迷惑がかかる可能性があるから、あいつの虚言を止めたいだけなんだ」

「........そうか、わかった」


 それだけ言うと今度こそ冴島は教室から出ていった。


「なんだ、あいつ」



●冴島 視点


 やっぱり、紅貴は紗代から聞いてたようなことをするような人間じゃなかった。

 まぁ、それは紅貴の口から聞く前から俺の中で確実なものになっていたのだが...。


 それにしても、紅貴から紗代に対する恨みや憎しみ、怒りをまったく感じなかった。

 本来なら、復讐の一つでも思いついていいものだが、紅貴からはその気配を全く感じない。 

 だがもし、紅貴が本当にその気がないとしても、俺が何かしらの形で紗代に対して仇討ちを仕掛けないといけない。

 

 俺を救ってくれた紅貴のために....。





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