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第4歩 『毒舌な図書委員』

 午前の授業の終わりを告げるチャイムが校内に鳴り響く――この時をどれだけ待ちわびたか。

 俺は急いで昼食を終え、いつもよりも早足で図書室に向かう。

 

 美喜多さんなら俺の話を聞いてくれるかもしれないという期待が、授業を一つ終えるごとに増していった。早く話したい、信じてもらいたい――それほどまでに、今日の教室は居心地が悪かったのだ。

 

 図書室に辿り着くといつも通り受付にいる図書委員が暇そうにしている。彼らに軽く会釈をして奥の閲覧スペースの椅子に座り陣取る。


 他に生徒はいなく、相変わらずこの学校の図書室の人気の無さを実感する。仕方がないので、本を読んで待とうかと立ち上がった時に美喜多さんが入室してきた。


――――きたっ!


 彼女は借りていた本を返却すると、借りる本を選ぶため本棚に向かう。そんな彼女んい俺は手招きをして、自分の対面の椅子に座るようお願いする。


 すると、彼女は少し嫌そうな顔をしながらもこちらに歩いてきてくれた。やっぱり、美喜多さんは味方になってくれるかもしれない。


 期待に胸を膨らませていると、対面に座った美喜多さんが開口一番に――


「何のようですか、悪質なストーカーさん」

「.....?!」


 俺の心臓を大きく跳ねさせる言葉が耳に届いた―――遅かったのか?!よく考えてみれば俺と美喜多さんが少し仲がいいことくらい知っているやつがいてもおかしくない。今朝同様、俺と美喜多さんは教室ではよく本について話していることが多いため俺を陥れるなら彼女にまず、という思考が働いたに違いない。


「違うから!あれは誤解だから!」


 必死に先ほどの汚名を否定して、ならばと証拠のメッセージ記録や写真なんかを見せようとしたのだが美喜多さんによって止められる。


「残念ですが、桐谷さんがあなたと仕方なしに付き合っていたことは聞いているのでそれは何の証拠にもなりませんよ」

「......」


 俺は悔しい思いをしながら無言でスマホをスリープ状態にしてポケットにしまう。   

 どうしたもんかと思考を巡らせていると呆れた表情で美喜多さんが口を開いた。


「まずは、峰山くんの話を聞かせてください」

「.....え?」

「一方的な話や噂で誰かを疑い、軽蔑することはしたくないんです。ましてや、貴方とは知らない仲ではないので」

 

 俺は驚いていた、美喜多さんなら俺のことを信じてくれる可能性はあった、しかしそれは俺の話を聞いてくれることが前提となり、さらには美喜多さんの中での俺への信用が鍵となる。後者に関しては今のところ確実なところは分からないが、少なくとも話を聞いてくれるのなら少なからず俺のことを信じてくれていることにはなるのではないだろうか。


 もちろん、油断させて......ということがあるかもしれないが日ごろから俺に対して割と毒を吐く美喜多さんだからこそ、なんとなくだがそこに悪意があるかないかはなんとなくだが分かる。今の彼女からは普段通りの雰囲気しか感じられず、そこに悪意など微塵もなかった。


「ありがとう。じゃあ、話すよ」

「手短にお願いします。あまりあなたと向き合ってお話とかしたくないので」

「......えー......」


 俺は心にモーニングスターを打ちつけられながらも美喜多さんに俺と紗代の関係と、昨日見た光景のことを話した。

 


 俺の話を一通り静かに聞いていた美喜多さんは、少し時間を空けてから口を開いた。


「そうですか、大変でしたねあなたも」

「.......それは信じてくれたということでいいのか?」

「別にあなたの話を100%信じたわけではありませんが......桐谷さんよりあなたの方が信じられる、それだけです」


 素直に嬉しかった。明らかに俺が不利な現状で味方なんて雪しかいないと思っていた、でも違った。すごく身近に、完全にではないにしても俺のことを信じてくれる人がいたんだ。


「ありがとう、すげぇ嬉しい」

「それはよかったですね。では、私は本を選びたいのでこれで」

「あ、あぁ......あの、さ」

「今度はなんです?極悪非道なストーカーさん」


 あれ?やっぱり信じられてない?だってさっきより呼び方酷くなってるもん。


「悪いんだけど、連絡先教えて欲しいなって」

「なぜですか?まさか今度は私を標的に―」

「違うから!その、少し相談に乗ってもらいたいっていうか......」


 俺は必死に彼女の言葉を否定しながら、どうにか連絡先を教えてくれないかと頼み込む。


「はぁ。あなたを見ていると、疑う気もなくなります。最早母性すら生まれてきます」

「え、なんで?」

「そんなことより、要は『相談したいことがあるから連絡先を教えてください、美喜多様』ということですね」

「はい、もうそれでいいです」

「......はぁ、仕方ありませんね」


 そういうと、彼女はメッセージアプリのIDを見せてくれた。


「10秒だけ時間をあげます。10、9、8.....」

「早いから!待て待て!」


 俺はスマホを起動させて、カメラでIDを写真で撮る。

 その行動に露骨に嫌そうな表情をされたので「10秒じゃこうするしかないだろ!」と言うとわざと大きめの溜息を吐かれた後、スマホをポケットにしまった彼女は本棚の方へ歩いてしまった。


 俺は写真フォルダのIDを見ながら、ユーザー検索をして美喜多さんのアカウントを見つけることに成功した。

 試しに『さっきはありがとう』とメッセージを送ってみると『いえ』と簡素な文字が返ってきた。


 俺が美喜多さんの近くまで歩いて行くと、嫌そうな顔をされたが


「おすすめの本、ある?」


 と聞くと、すんなりと教えてくれた。

 内容が、浮気された旦那の話だったのは後に分かったことだが、彼女なりのジョークだと捉えることにした。




(それにしても、今日の美喜多さんは機嫌が悪かった。いつもよりも俺のことを罵っていたような気がするんだけど)




●美喜多 視点


 私は珍しく苛立っていた。

 あんな話を聞いたから、だから彼が桐谷さんを一切恨んでいないのが気に食わなかった。

 恨んでくれていたら、私ももっと楽になれたのに。

 そうではないために私の心は罪悪感で蝕まれる。

 彼女はなんで......




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