表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/44

第29歩『祭りの後』

~雪 視点~


「みなさんご協力ありがとうございました!そして、兄が本当に申し訳ございませんでした!」


 美野里ちゃんが自分の兄の被害者の方たちに頭を下げていた。

 その様子に怒りをぶつけるものは誰もおらず、寧ろ今までの彼女の境遇を同情してくれたり、慰めてくれたりする人たちばかりであった。

 中には騒ぎを聞いて駆け付けた教師やクラスメイトの人たちもいて私たちは事情の説明を求められたが、吉田先輩と冴島先輩がそこは上手くやってくれた。


 昼休みが終わる頃合いになり、皆が体育館を去っていく。

 私と美野里ちゃんも教室に戻るため、体育館を後にする。


「これで、本当に終わったのかな?」

「そうだね、美野里ちゃんはまだお家の問題があるから完全ではないけど、それを除けば終わりかなぁ」


 体育館に被害者を呼んだのは、木下先輩を威圧したかった事、美野里ちゃんを悪者にしたくなかったこと、そして警察にそれとなく知らしめるためだった。


 なんの説明もなく、木下先輩が捕まればその説明を美野里ちゃんに求める生徒が出てくるだろう。

 噂が流れるのは早いため段々その内容は色が付き、その内「偽物の証言や偽物の証拠を警察に提示して木下陣を警察に突き出した」なんてものが出てくるかもしれない。

 それを防ぎたかった。


 そして、美野里ちゃんの被害だけで木下先輩を捕まえると他の生徒への被害が暴かれないままになるかもしれない、だから私たちが口で伝えるよりも荒い手段だがより印象に残る手段をとった。

 そんなことしなくても、被害者の子に直接警察に言ってもらえばよかったのだが、そこは私の悪いところが出て木下先輩を責めてやりたくなった。

 自分の罪の数や重さを分からせてやりたかったのだ。

 

「吉田先輩は凄いね、あれだけ人を集めちゃうんだから」

「そうだね、でも冴島先輩にも感謝しないと」


 あの二人のお陰であれだけの人数が集まったのだ、本当に感謝しなければならない。

 

『1年C組 木下 美野里さん、峰山 雪さん、至急職員室に来てください、繰り返します―』


「あぁ~、さすがに誤魔化せなかったかぁ」

「流石にあの映像は先生に見せたくないなぁ」

「大丈夫、それに関しては絶対見させないし、どうしてもって言ったら音声だけ女の先生に聞かせよう」

「それも恥ずかしいぃ」


 私たちが職員室に向かうと吉田先輩と冴島先輩がいて、二人の話の事実確認をさせられた。

 その後、話の分かる先生だったのか先輩二人の力なのかすんなりと解散させてくれた。

 美野里ちゃんは心の心配をされたり家庭のことを心配されたりしていたが、先生が問題なしと判断して、彼女も一緒に再び教室へ向かう。


「本当にありがとうございました!」

「気にしなくていい。困ってる人を助けるのは当然だし、峰山くんの頼みだったからね」

「吉田先輩、兄と仲いいですよね。どういう関係なんです?」

「友達だよ。私にとっては大切な」

「俺もあいつに頼まれたら弱いんだよなぁ、借りもあ―」

「やっぱり、冴島先輩はお兄ちゃんのこと!」

「雪ちゃんそれ好きだね!」


 少し話して、それぞれの教室に向かうために別れる。

 美野里ちゃんが心から笑ってるように見える。

 家族のことへの不安なんてないように、笑っている。

 

(守らないと、この笑顔)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ