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第25歩『取引』

「お前は気づいていないかもしれないが、いや気づかないようにしているかもしれないが、お前は木下先輩と同じことを俺にしてるんだぞ」

「そんなことない!」

「いやいや、してるから」


 紗代の表情がさっきまでの余裕のあるものではなく、怒りと焦りが混じったものに変わっていた。


「まぁ、いいや。とりあえず俺は俺で木下先輩には恨みみたいなもんがあるから、復讐させてもらうよ」

「待ちなさい、それは私の―」

「3ヶ月も付き合っておいて、弱み一つ握れてないのにか?」

「握ってるわよ、当然」


 紗代の声は次第に弱々しくなっていった。

 なんで彼女は無駄に威勢を張ってしまうのだろうか。


「まぁ、それならそれでいいけど、するなら早めの方がいいかもな。俺は明日にでもあいつに復讐するために動くつもりだから」

「明日?!」

「お前とは違って、俺にはあいつを脅す材料がある....あぁ、ごめんあるんだったなお前も。じゃあ、今からでも間に合うからすぐに脅しなよ」

「.......」

「薄々思ってたけど、紗代、木下先輩のこと好きになったんだろ」

「?!」


 あの日、ラブホテルから出てきた二人を見て、俺はそれが偽物には見えなかった。

 次の日、学校にいちゃつきながら登校する二人を見て、嫌々付き合っているようには見えなかった。


「そんな驚くなよ。大体、好きでもない相手に体許してたら、お前の考えている復讐が出来たとしても割に合わないだろ」

「......」

「別にお前に振られたから、社会的にあいつが終わるわけではないし、また別の彼女つくれば終わりの話になる。確かに、お姉さんの仇討ちとしてはいい手かもしれないけど...対価が高すぎるだろ」

「......だって...」

「ん?」

「好きになっちゃったんだもん!」

 

 彼女がその本心をやっと言ってくれた。

 これで......いい。


「ふーん、そっか。まぁ、そんなことは俺の復讐には関係ないから滞りなく計画を進めるから」

「ま、待って」

「あぁ、そうそう。個人的にお前にも恨みがあるから、お前の悪事全部言いふらすよ。男たぶらかして遊んだり、二股かけてたり、復讐相手に惚れて体を許す尻軽女だって言いふらしてやる」

「や、やめてよ」


 紗代が涙目になって、俺に訴えかけてくる。

 でも、もう止まれない。


「分かった、やめてやるよ」

「...ッ!本当?やっぱり、優しい―」

「ただし条件がある。それはお前が俺ともう一度付き合うことだ」

「......は?」

「別に悪くない条件だろう。だって、俺は明日にでも木下先輩に復讐する。そうなれば、お前と付き合っていられるか分からなくなる。結果的には同じことだ」

「二股をしろと...?」

「俺はそんなことはしないさ。あいつと別れてからだ」


 そうすれば、紗代の元々計画していた復讐が遂行される。

 しかも、浮気されていて、相手は分かれたはずの元カレとなれば木下先輩は屈辱を味わうことになる。


「そんな、別れろなんて」

「別に強制なんてしてないさ。自分で決めなよ。あいつを裏切って自分だけ助かるか、あいつと一緒に周りから咎められるか」

「.......ま..す」

「え?」

「別れますから、私のことは...」

「わかった。あ、でも木下先輩に情報を漏らしていることが分かったら即、生徒や親や教師含めみんなに情報を流すから、そのつもりで」


 俺は心の中で安堵の溜息を吐く。

 何とか第一段階はクリアした。

 雪と美野里さんは上手く行っているだろうか。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

~雪 視点~


「ねぇ、本当に帰ってこないんだよね?」

「うん。受験生だからね、学校で補習があって少なくとも午前中は帰って来ない筈だよ」

 

 私は念のため冴島先輩にメッセージを送る。

 

『ちゃんと、学校にいますか?』

『あぁ、さっき通りかかってみたらちゃんと教室にいたよ』

『ありがとうございます。引き続き監視お願いします』


 監視役の冴島先輩は、朝に木下先輩が家を出た後から監視をするように頼んである。

 それというのも昨日


「私は証拠はないですけど、兄なら持っている筈です。......その...以前、私が変な気を起こさないように脅す材料としてビデオカメラで録られましたので」


と言っていた。

 なにかあった際にネットにでもばらまくように用意していたのだろう......クズだなぁ、本当に。

 ということで、私と美野里ちゃんは今、木下陣の部屋の中を捜索している。


「ねぇ、この鍵のかかってる引き出しにないかな?」

「あぁ、ありそう...」


 しかし、どこを探しても見つからず、行きついたのが鍵のかかった引き出しだ。

 

「鍵なんて絶対持ち歩いてるよね」

「困ったなぁ、壊したらバレるし」


 合鍵がないか、念のため二人で捜索してみるが......見当たらない。

 スマホを見ると、まだ冴島先輩からのメッセージはないのでまだ時間はあるが...。

 

(どうしよう.......)


 合鍵も絶対持ち歩いてると思うし、壊しても見つかるし、ピッキングなんて出来ないし、それだけ頑張って何もなかったら馬鹿みたい.......あっ。


「あの人の性格ならそれがあり得る」

「え?」

「性格の悪い人間は、相手が悔しがるような場所に隠す可能性がある」

「えっと...」


 私は、木下陣の部屋の捜索を美野里ちゃんに任せて、私は美野里ちゃんの部屋に行く。

 この部屋にビデオカメラか合鍵があるかもしれない。

 いや、可能性としてはビデオカメラの方があるだろう。

 妹のことを盗撮をしたいと考えているならば......の話だが。

 

 私は本棚の上やクローゼットの中、ベットのしたなど死角なる場所を探す......が、どこにもない。

 

(さすがに考えすぎたかな)


 諦め半分で、ベッド横に綺麗に並べられたぬいぐるみをどかしてみるが、やはりなにも......ん?


「なんか、このぬいぐるみ重いな......まさか?!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 紅貴君が、しっかり考え立派に立ち向かっているところが応援したくなります。 紅貴君の性格的にすごく悩んだでしょうに、良く決断しましたよね。 [一言] 紗代という救いようのないクズには、それ相…
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