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第五話『裏切りの意味』

「桐谷先輩、さっきのはどういうことですか?!」


 空き教室から木下先輩が出て行ったことを確認して、桐谷先輩に先程の行為について問う。

 どうして、兄という付き合っている人がいるのに他の人に告白なんてしてるのか、それが知りたくて。


「あなたは?」

「先輩の彼氏......峰山 紅貴の妹です!」

「あぁ、雪さん......だったかしら?よく、紅貴くんが話してる」


 紗代さんの言葉に少し顔がにやけそうになるのを我慢して、桐谷先輩を睨みつける。

 

「そんな怖い顔をしないで......って言っても無理か」

「ふざけてるんですか?!」

「ふざけてなんてないわ。私は真面目よ?」

「じゃあ、なんなんですかその態度!自分がしていることわかってるんですか?」

「えぇ、私も馬鹿じゃないわ。でも、何の意味もなくこんなことをしてる訳じゃない......って分かったから拳を握らないでちょうだい。こんな現場を見られたんだし、ちゃんと話してあげるから」


桐谷先輩は諦めたような表情で、近くの椅子に腰掛けた。


「端的に言うと、姉の仇討ちみたいなものかしら?」

「......え?」


 桐谷先輩の話をまとめると、こうだった。


 彼女の姉が去年、木下先輩と付き合っていた。

 お姉さんは木下先輩にベタ惚れで、カラダの関係ももっていたらしい。

 しかし、ある日突然────


「お前の顔も身体も飽きたから、もういらない」


 ───そう言われて、別れをもちかけたらしい。

 それに対して、もちろんお姉さんは嫌がり「捨てないでほしい」と懇願したらしい。

 けど、その抵抗も虚しく「家族に迷惑をかけたくなかったら、俺のことを誰にも話さず、目の前から消えろ」と突き放された。

 お姉さんはその日から魂が抜けたような抜け殻になってしまったそうだ。


「それで、桐谷先輩はどうやって仇討ちをするつもりなんです?」

「姉にしたのと同じことをしてやるつもり。惚れさせて、酷いこと言って別れてやる。そのために、脅しとして弱みを握らなくちゃ」

「でも、ならなんで兄と付き合ったんですか?!」

「......木下陣と付き合うためよ」

「は?」

「木下陣に普通に告白しただけじゃ付き合えないかもしれない。私があいつに対して好意をもっている証拠を提示出来ない。だから」

「彼氏もちというブランドを自分につけたということですか」


 彼氏がいるのに付き合うというシュチュエーション、彼氏よりも自分を選んだという優越感、それが木下先輩の首を縦に降らしたのだろう。


「つまりあなたは、兄を利用したんですか?目的のために」

「えぇ、そうね。でも、いいんじゃない?彼も幸せなんだし....あぁ、でもそうね別れる時は穏便に別れないと木下陣と同じことをしてしまうわね。気をつけないと」

「......先程の告白は一部始終録画させてもらってます。これを兄に見せればそれで終わりです」

「それは困るわね。木下陣の希望で、紅貴くんとは少なくとも3ヶ月ぐらいは付き合わなきゃいけないの。何も知らずに私と付き合っている紅貴くんのことを見て楽しみたいんでしょうね。だから、紅貴くんに別れられるのは避けたい」


 私が桐谷先輩の言っていることを理解するのには時間がかかった。

 どれだけ、言葉を連ねようと兄を裏切ったことに変わりはない。

 

「そうね、約束するわ。3ヶ月後、紅貴くんとは綺麗に別れるわ。それまでに木下陣の弱みを握れるかは分からないけど、約束は守る。だから、お願いします。もし、バラされて紅貴くんに別れられたら何をするか分からない」

「その時は、私が兄を守ります」

「でも、彼本人よりあなた自身に危害が加わる方が紅貴くんは傷つくんじゃないかしら?」

「それこそ、私なら」

「この学校の大半の男子生徒を相手にしても?」

「それは......」

「何もずっと騙し続けるつもりじゃない。3ヶ月だけ、ね?」


 私は首を縦に振るしかなかった。

 私が力で勝てるのは女子相手と、せいぜい数人の男子生徒。

 想像を超える相手には勝てる筈がない。

 3ヶ月、その間私が何もしなければ兄も私も解放される......確実ではないけど、可能性はある。


「絶対、3ヶ月ですよ?それは守ってください、必ず」

「えぇ、そんな怖い目で睨まれたらそんな簡単に破れないわ。それに、私だけでも.....なんて考えられたら困るから」


 私はこの時、決めたんだ。

 3ヶ月後、傷ついたお兄ちゃんを慰め、桐谷 紗代に復讐すると。

 そのためには......お兄ちゃんの復讐心を上げるためには......今よりもお兄ちゃんに桐谷先輩を意識させなければ。


 桐谷先輩が話を終えて教室を出て行ったため、1人になった部屋で


「絶対に、許さない」


そう、誓った。

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