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第13話 『対立』

〇???視点

 

 私が2人に助けを求めてから数日が経ったが現状は変わらない。


「やっぱり......だめなんだ......」


 危険なんだあの人は。


「......ん?」



『ごめんなさい』


 助けを求めたうちの1人からメッセージが届いた。


『......どうしたの?』

『あなたを助けるために先輩のこと監視したり、調べたりしたけどとてもそんなことするような人には見えないの。だから、私たちあなたに手を貸せない。ごめんなさい』

『んーんー、いいの。変なこと言ってごめんね』


 どっちだろう。

 あの言葉のままか、あの人に見つかって脅されたか。

 優等生という肩書きは強いな。

 

 勉強も出来て、性格も良くて、生徒からも先生からも信頼があつい。


 でも.....


「どうしようかな」


 家族を守るためには、このまま私が.....


「ん?今度は誰?」


 頼んでいたもう1人だろうか、それならもう連絡は必要ないのだが.....。

 届いたメッセージは、私の予想外の人物からのものでその内容に私は驚いた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 美喜多さんが図書室を去り、程なくしてチャイムが鳴り響いた。図書室の鍵を閉めて職員室に戻し帰宅した。   


 そこからはいつもの流れで、風呂に入り、夕飯を食べ、そして自室でプライベートな時間を過ごす。

 

 美喜多さんに『助ける』なんてかっこいいことを言ったはいいが、彼女の言う通り俺にはなんの力も、策もない。

 

 ───早く動かないと紗代が......。


「お兄ちゃん、入るよー」


 人の思考を遮り、雪が俺の部屋に入ってきた。


「どうした?俺が楽しみにしていたプリンを食べたのか?」

「プリンは食べたけど、違う用件だよ」


 ───食べたんかい!


「......はぁ~。まぁ、いいや。用件は?」

「決まってるじゃん!紗代さんのこと!そろそろ、懲らしめる気になった?」

「あぁー......」


 今日、美喜多さんから聞いた話を雪にも話した方がいいだろう。

 秘密を共有する仲間は増えるほどバレる危険性が上がるが、雪なら大丈夫だろう。


「なぁ雪、長くなるが俺の話を聞いてくれ」

「なになに?」




「───ということらしい。だから、俺は紗代を助けるために動く」


 俺の話を静かに聞いていた雪は、俺の最後の言葉を聞くと呆れたような表情を浮かべていた。


「は?なにそれ。お兄ちゃんの妄想?それとも美喜多先輩がお兄ちゃんを騙すための作り話?......どっちにしても、信じられないよ」

「俺も、正直最初は信じられなかったけど、美喜多さんの様子を見てると本当のことなんだと思う」

「もし、仮に本当のことだとしても、お兄ちゃんが紗代さんを助ける理由が分からない」

「それは今あいつが困ってるか───」

「そんなの自業自得じゃん!!」


 いつになく大声を出す、雪。 

 親に聞こえるとめんどくさいことになるから、声のボリュームを下げるよう伝えるとハッとしたように我に返る。


「ごめんなさい......わたし」

「別にいいけど......どうしたんだ?お前らしくないこと言って」


 彼女は以前いじめられていた。 

 結果的には自分で解決していたが、そんな彼女が紗代の今の境遇を『自業自得』だなんて.....冷静じゃない。


「で、でも、紗代さんを助けるなんて間違ってるよ」

「なんでだ?」

「だって!紗代さん木下先輩と仲良さそうにしてたじゃん!嫌々付き合ってるなんて嘘だよ!」

「.......俺もそれは不思議に思ったよ」

「だったら!」

「これは俺の勝手な推測だけど、紗代は自分を守っているんだと思う」

「......は?」

「嫌いな奴と一緒にいる時間は苦痛だ。だから、無理やりにでも、先輩のことを好きになろうとしているんじゃないか?」


 本当にこれは俺の推測で......甘えだ。

 自分を守ろうと思考が勝手に動いているのは俺の方かもしれない。


「そんな都合のいい解釈やめてよ......。そ、そうだ!紗代さんのこと綺麗さっぱり忘れよう!」

「......は?」

「うん、それがいいよ!そしたらお兄ちゃんも復讐なんてする必要ないし、紗代さんへの未練もなくなる。仮に美喜多さんの話が本当だとしても、お兄ちゃんが傷付くことはなくなるよ」

「......雪」

「紗代さんも別れたがってるなら丁度いいじゃん!」

「......」

「お兄ちゃんのことを守ってくれているなら感謝はするけど、もし嘘ならただお兄ちゃんんを危険な目に遭わせようとしてるだけだもん!だから......忘れよう?紗代さんとの少ない思い出を───っ!」


 俺は雪を抱きしめる。とっさのことに雪は肩を跳ねさせたが、すぐに俺のことを抱きしめ返した。


「分かって......くれたんだね?」

「......俺、復讐するって決めたんだ」

「そ、それならそれでいいの!分かってくれて嬉しい───」

「木下 陣に」


 雪は少し無言になって、しばし部屋の中を静寂がつつむ。

 今、親が様子を見に俺の部屋に来たら、変な勘違いをされて怒られそうだ。


「なぁ、雪。なにか知ってるんじゃないのか?」

「......」

「今すぐ答えなくていい。また今度聞かせてくれないか?」

「お兄ちゃんのその意思は変わらないんだね」

「変えるつもりはないよ、今のところは」


 雪が俺から離れて再び俺の前に立つ。そして、真剣な眼差しで何かをこらえるような表情を浮かべていた。

 しかし、すぐに雪は諦めたような仕草をして、俺に背を向ける。


「木下先輩には気を付けた方がいい。あの人が一人で動いているかも、なんていう楽観的思考は捨てた方がいい」

「わかってるよ」

「あと、私はお兄ちゃんが紗代さんに復讐しない限り手を貸さないから」

「......わかった」


 俺の返事を聞くと、ゆっくりとドアノブに手を置くと、振り返らずに


「お兄ちゃん、人を信用すると傷つくのはお兄ちゃん自身だよ」


 それだけ言い残すと雪は部屋から出ていった。



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