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第10歩 『動く』

『クラスの女子を集めて何する気なんだ?』

『紗代の虚言を訂正する』

『信じてくれるか?』

『そのために女子だけを集める』


 男子は俺の話を信じない可能性があるが、女子なら分からない。紗代は男子から絶大な人気を誇るが、女子からはあまり良い評判を聞かないからだ。

 

『そこまで自信があるなら、止めないぜ。頑張れよ』

『ありがと』


 数分後、俺の通知欄に会話グループへの招待が届いた。その招待を受諾し、グループに入り、参加人数を数える。


「さすが冴島だ。ちゃんとクラスの女子全員いるぞ」


 冴島はおそらくクラスメイト全員と連絡先を交換しているだろうからこういう時は本当に助かる。


「この中でどれだけの人数が俺の話を信じてくれるんだろうな」

「全員じゃない?紗代さん、女子からは嫌われるタイプだし」


と淡々と紗代の元カレの前でそう言い放つ。

 

 既に女子たちからメッセージが色々送られていて、みんなが混乱しているのが見て取れる。

 そんな中、グループではなく、俺個人に宛てたメッセージが届いた。


『なんですか急に』

『ごめん美喜多さん。すぐ終わるから』

『そうですか、ではお願いします』


  

 グループの方に戻り、意を決して、メッセージを送る。


『俺と紗代のことについて、この動画を見て欲しい』


 続いて、動画を送る。


『なにこれ?』

『え?これまじ?』

『どゆことなん?』

『合成か何かじゃないの?』

『でも、声も二人とも本物っぽいし、てか誰が撮影してるの?』


 みんな、先ほどまでとは違うことに困惑をしている。


『撮影者、俺の妹。時期、半年前』


 俺の説明にまたもみんなが混乱をしている。どうやら、俺か紗代どちらが嘘を吐いているかを判断できずにいるのだろう。


 すると一人


『そんなことだろうと思ったよ』


 そう呟くのはアカウント名をイニシャルのM.Y.にしている誰か。

 すると、その言葉に便乗するように


『やっぱり』

『嘘だったんだ~』

『最低』

『本当に顔だけの女』


紗代の悪口ととれる発言が続々と送られていた。

 その様子に俺はM.Y.が誰なのかがわかってしまった。

 吉田よしだ 茉莉まり―――クラスの男子にとってのトップが紗代なら、女子にとってのトップは吉田茉莉になる。

 誰にでも優しく、いつも落ち着いていて、思わずかっこいいという言葉が口から出てしまう彼女は真の意味で人気を集めていた。

 

「吉田茉莉先輩、後輩にも有名なんだよ!この前、うちのクラスの男子が告白しようとしたら、よくわからない女子軍団に全力で妨害されたって聞いた!」

「知ってるよ、ちょっと困ってたな」

「えぇ?!お兄ちゃん、吉田先輩と仲いいの?!」


 そんな会話を以前、雪とした記憶が蘇る。

 もしかして、紗代より人気があるのでは?と聞くと


「紗代さんって、なんか裏がありそうな気がするんだよね―――なんとなくだけど」


 なんて言っていた。

 


『この動画から察するに峰山くんと桐谷さんが付き合っていたのは事実で、その理由は峰山くんのストーカーまがいの行動が原因というわけではなさそうだね』


 俺の送った動画を冷静に分析する、吉田さん。

 


あれは半年前―


『やっべぇぇぇ!女子から放課後呼び出されたよ、どうしよぉぉぉ?!』

『お、おお落ち着いて!陰キャのお兄ちゃんにそんなことあるわけないじゃん!相手は誰?!』

『桐谷 紗代っていうクラスの女子!なんか最近めっちゃ話しかけられるんだよ!』

『えぇぇぇ?!あの桐谷先輩?!絶対罠だよ!!』

『まさか、告白とか......』

『いやいや、ないから!告白されても罠だから!わかった、場所教えて!私が何かあった時のために見張っとくから!』

『恥ずかしいわ!』


 結局雪は俺と紗代を見つけ出し、その光景を撮影・・していた。そのことを知った俺は恥ずかしいから消して!と言ったが


「大事な証拠だからだめ!」


と断られてしまった。

 今思えば、雪はずっと紗代のことを疑っていたのだろう。そしてその動画が今まさに証拠として役に立っている。後で、雪を褒めて撫でてあげよう。


『きみは見たところ桐谷さんには興味がなかったように見えたんだが』

『それに関してはすみません。女子から告白されたのが初めてで舞い上がっちゃって、断る理由も思いつかなくて』

『そうか』


 吉田さんは俺に対して、軽く嫌悪感を抱いてしまったもしれない。良く知らない相手と、告白されたからという理由だけで付き合ったのは正しいこととは言えない。


『謝ることじゃないよ。気持ちは分からないでもない』


 こういうところが彼女が人気を集める理由なんだろう、俺の気持ちを察して即座にフォローをしてくれる。


『そうだよ!仕方ないよ』

『まぁ、顔だけはいいからね!』

『ドンマイ!』

『男子なら仕方ないって!』


 またも、吉田さんに便乗して他のクラスの女子からもフォローされる。


『ありがとう』

『それで?峰山くんの目的はなんだい?』

『目的は達成したよ。みんなの誤解をなくしたかっただけだから。集まって、話を聞いてくれて本当にありがとう!』

『わかった。私はきみを信じるよ』


 次々に『私も信じる!』という意味の言葉が送られた。




『よかったですね。信じてもらえて』

『あぁ、美喜多さんもありがとう』

『私は何もしていませんよ。お礼を言うなら吉田さんと、あなたの大好きな雪さんにしてあげてください』

『余計な言葉が混じってるが、そうするよ。おやすみ』

『はい、おやすみなさい』


 美喜多さんと個人間での連絡を終えると、今度は冴島と吉田さんにもメッセージを送る。


『ありがとう、本当に助かった!』


 二人ともすぐに返信をくれて


『いいってことよ!約束したろ協力するって!』


と冴島からの返信。

 なんか冴島がかっこよく思えてきた。


『すまない、きみが傷ついている間に何もできなかった』

『いやいやいや、吉田さんが謝ることじゃないって!』

『桐谷さんの話があった手前、教室で突然私がきみに話しかけるのは更なる誤解を招きかねないと思ったんだが、そんこと気にせずきみに声をかけるべきだった』

『大丈夫だから!その気遣いが凄く嬉しいから!』

『それだと私の気が済まない。罪滅ぼしとして、紗代さんとのことで、いいやそれ以外でも困ったことがあったら私を頼って欲しい』

『そんな、罪滅ぼしだなんて』

『じゃあ、いつもの恩返しというのはどうだろうか。きみのおかげで私は安らぎを得ているんだ。このままだとあの安らぎの時間が脅かされる可能性もある。だから協力させてほしい』

『確かに俺もあの時間が誰かに邪魔されるのはごめんだ。わかった、よろしく頼むよ』

『あぁ、任せてくれ。それと、今後も辛いことがあったらなんでも相談に乗るから。  

 せっかくこうしてきみの連絡先を知れたことだしね』

『あ、ありがとうございます』

『敬語なんてよしてくれ、私ときみの仲じゃないか』


「いや、イケメンすぎんだろこの人!!!!」

「わぁっ!びっくりしたぁ!」


 冴島のことをかっこいいと思ったなんて嘘だろ!

 本物が、本物のイケメンがここにいるよ!






●吉田 茉莉 視点

 

 よかった、やはり桐谷さんの話は嘘だったみたいだ。

 

 おそらく、桐谷さんにとって峰山くんの行動は想定内のものなのだろうか。


 しかも、あまり目立たなかったが冴島くんも協力していた。彼がいればより多くの人から協力を仰ぐことも可能だろう。

 

 すでに他にも誰かが協力をしているのかもしれない、例えば峰山くんと仲が良い美喜多さんとか。

 

 私もできうる限りは峰山くんに協力でいるよう頑張ろう。


 ただ、できれば最初に私に相談して欲しかったな。





〇???視点


『助けて』


そのメッセージを未だに送れない


もう諦めるしかないのに

 




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