出来ました
「どうかな?」
おそらく出来ていると思う。亜美奈と桃子、そしてアンジェの三人がほぼ同時にバッグを鑑定する。
【マジックバッグ・容量は無限。時間と言う観念が存在しない空間の為、入れた物は入れた時のままに保存される】
「凄いっ。これって、本物のマジックバッグじゃない?」
「偽物のマジックバッグがあるです?」
冗談ではなく本気で聞いて来るアンジェに、亜美奈と桃子は顔を見合わせ笑ってしまう。
「偽物じゃなくて、お話しの中にしか無いと思ってた【マジックバッグ】が本当に出来たから、桃子は【本物】って言ったんだよ、アンジェ」
「お話し…… そう言えば人間族達は、お話しを読むのが好きです」
「みんな、娯楽に飢えてるのよ。小説は娯楽の中でも手頃だから、手が出しやすいのね」
元の世界ではあまり読まなかった人達も、小説を読みたがっているらしい。
テレビもスマホも無い世界だから、当然の現象と言う事になるのかもしれない。
元の世界では、そんな事を研究したりする人も居たが、こちらでも居るのだろうか。最も、居た所でテレビの無いこちらの生活では、発表する機会は無さそうだが。
「そんな事より、お揃いで作らない?」
「良いわね」
「良いです」
「どんなデザインが良いかな?」
きっとみんなの分も作る事になるだろうから、簡単な物が良いが。バッグとバッグに着けるキーホルダー型の物が有る為、他のとなると思い付かない。
「指輪かブレスレットと言うのは無理かしら?」
「バッグじゃ無いです?」
「以前読んだ小説に、そんなのが有ったのよ。如何にも魔法っぽくて、ステキな気がするのよね」
「魔法っぽいじゃ無くて、魔法です」
「うん、そうなんだけどね」
桃子の言いたい事は、亜美奈も何となく解る気がする。ここでは魔法は現実だけど、ただ現実なだけで無く、作り話の世界を自分達で実現して行くと言う、ある種ゲーム的な楽しさが有るのだ。
ただ与えられた【不思議】では無く、夢を現実に組み込んで行く。その過程が楽しくて、元々はここ世界にも無かった物まで、作ってみたくなる。
「精霊石に、マジックバッグのレシピを付与して見るね。石に付与して有れば、何に着けるかは後で考えられるからね」
指輪やアクセサリーでも良いし、ボタンにして上着に設置するのも良い。どう使うかは個人の自由だし、一々リクエストを聞かなくても作れる分、亜美奈も楽だ。
「私は、赤い石が良いです」
「赤ね。じゃあ、最初はアンジェの分」
と言っても、上手く行く保証は無いのだけれど。とは言わず、亜美奈は赤い精霊石をテーブルに置き、付与を始めた。
先程と同じ様に、両手に収納魔法を創り上げる。充分に魔法の用意が出来た事を確認し、亜美奈は赤い精霊石にその両手を近付け。
と、その時。どういう訳か、銀のブレスレットが腕から外れた。
魔法の力で着いているブレスレットだ。きつくは無いが、外れるような物では無く。実際、これまで一度として外れた事は無かった。
ブレスレットの形状をとっていても、その本質は杖である。腕から外れれば、銀色の杖になる。
テーブルに落ちた魔術の杖は、コロコロと転がった。転がって転がって、精霊石を弾き飛ばして亜美奈の手の中に収まろうとした。
「もしかして、これって……」
付与されるのを望んでいるのだろうか。無機質な物質だと判っているはずが、そんな風に考えてしまうほどピタリと亜美奈の手の下に来たのだ。
駄目で元々。亜美奈は思い切って、魔術の杖にマジックバッグを付与してみた。
「もしかして、付与出来たの?」
おずおずと、桃子が聞いて来た。
付与をした瞬間、杖は僅かに光ったものの、特に形状を変える事無くそこに有る。
「鑑定して見れば解るです」
「アンジェの言う通りだわ。鑑定して見ましょう」
亜美奈は頷き、杖に向かって手を差出した。
本来鑑定は、魔術の杖を使って行われるはずだが、今はなぜが使わなくても出来そうな気がした。
実際、魔術で有るはずの付与も出来たのだから、出来てしまってもおかしくは無い。
【魔術の杖・収納機能付き。容量は無制限。時間と言う観念が存在しない為、入れた物は入れた時そのままに保存される】
更にその後、【ワードを決めて下さい】と表示されていた。
「ワードって、呪文みたいなアレだよね」
「イキナリどうしたの?」
「ワードは呪文じゃなくて、起動する為のルールです」
なるほど。これを言ったらこうなる、と言うルール。予め極められている合図の様な物なのか。さんざん使っていたが、ちゃんと考えるのはこれが初めてだ。
「鑑定してみたら、ワードを決めて下さい。って表示されたんだよね
「使って下さい、じゃ無くて?」
「うん、決めて下さい。……あ、判ったかも」
判ったと言うより、閃いた。
「世界で初めて創られた物だから、まだワードが無いんじゃ無いかな。だからこのバッグを創った私が、ワードを決めないといけない。って思うんだけど、どうかな?」
確か初めに魔法と魔術の杖を貰った時、ミケルがそんな事を言ってた気がする。
魔術の杖のワードが【ギブン=付与】であるのはきっと、初めに魔術の杖を作った人が、魔術の杖では付与しかしなかったんじゃ無いか、と言うような話をした様な、気がする?
『それで合ってると思うの』
サクラが元気良く頷いてくれるので、亜美奈も納得する事にする。
「それで、どう言うワードにするです?」
興味津々、アンジェが身を乗り出して聞いて来た。
つづく




