卵 玉子 たまご~?
卵?
「卵だわ」
「卵です」
「何で卵?」
作っていたのは、確かにぬいぐるみだった筈だ。頭を作って、胴体と手足も作った記憶もちゃんと有る。
なのに出来上がりが卵。卵の殻を、作った記憶は無いにも関わらず、卵が出来た。
「これで、精霊を付与するですね」
一番に気を取り直したのは、アンジェだった。
アンジェは意外と、不可思議な事に耐性が有るのだ。
「うん、付与してみるね」
そう口にした途端。まだ成長してない、光でしかない精霊が現れた。
まるで、自分を付与して欲しいと言いたげに、卵の周りを飛び回る。
「じゃあ、行くよ。ギブンッ」
付与の魔術を施すと、精霊は吸収されるように卵に消えて行き、フンワリ三回光ると落ち着いた。
「これで、中からぬいぐるみが出て来るのね」
「そう言えば、こんなの向こうにも無かった?」
喋るぬいぐるみや、可愛いドール。どんな人形が出て来るか分からない、ワクワクするオモチャだ。
「「確か、サプライズトイ」」
珍しく、桃子と声が揃ったせいで笑いが上がる。
少しずつでも気が合って来たようで、何だか嬉しい。
「でもこれ、どうやって開けるんだろう?」
「ぬいぐるみだし、破って開けるんじゃ無いのかしら」
「勝手に破れて、中から出て来るのも無かったっけ?」
「ぬいぐるみなのに、です?」
「中に動力が入っていて、ある程度は自動で動けるの」
「動力、ですか?」
この世界に機械は無いため、どうやって説明しようか考えていた亜美奈は、ふと腕時計が目に入った。
時計も普通に、動力で動いているじゃないか。これならきっと、理解して貰えるかも知れない。
「この時計も、動力で動いてるよ。動力の元は水晶。水晶の振動で、中の部品を動かしてるの。
サプライズトイの中に有るぬいぐるみを動かすのは、この世界には無い動力だけど」
「そうですか。では、この中のぬいぐるみを動かす動力は、精霊何ですね」
多分、そういう事になるのだろう。生き物を動力と言ってしまうのは、気が引けるが。
「どうやら、直ぐには出て来ないようだし、後の二つも作ってしまおうか」
そして三人で、生まれて来るのを待てば良い。
再び道具を出して、作業を始める。
ぬいぐるみの道具は、手足をひっくり返す時に便利な棒だけれど、作業の時には使わない。
ひっくり返すのは、コビトがやってくれるのだ。他のスキルでも有ることなので、気にしないで置こうと亜美奈思う。
「はい、三人分出来たよ」
「わ~い、お揃いのぬいぐるみです」
三つ並んだ出来立てのぬいぐるみに、いの一番に手を伸ばしたのは、アンジェだった。
卵の中から、どんなぬいぐるみが出て来るか、楽しみで仕方ないと言った感じで、真ん中に有る卵に手を伸ばした。
すると。
「えっ、何でです?」
卵が逃げる。触れられる事を、拒むように。アンジェを拒否するかのように、逃げ回る。
「私の事を嫌いです?」
誰より一番楽しみにしていたアンジェだから、その悲しみは深く、そこまでショックかと言ってしまいそうな勢いで泣き始めた。
けれど、亜美奈の手も拒否されるのを見て、目を丸くした。
「もしかすると、持ち主を選ぶのかも知れないわ」
桃子は言って、やはり卵に拒否される様子を見せてくれた。
けれど別の卵に手を近付けると、吸い付くように桃子の手に近付いて行った。
「ねっ?」
「本当だ」
成る程と亜美奈も、桃子のまねをして卵に手をかざして見た。
初めに触れようとした物はやはり駄目だったが、もう一つの卵は桃子の時と同じように、亜美奈の手に吸い付いて来た。
最後の一つこそ、自分の卵だろうと手を伸ばすアンジェだった。亜美奈と桃子も、微笑ましくそれを見つめていたのだが。何と言う事だろう、アンジェの物になるはずの、最後の一つがアンジェの手を拒絶したのだ。
つづく




