国によって、ルールは違うらしい
「君たちはこの列島の地図を持ってるんだよね。だったら、かなり遠くまで飛べるよ」
「地図の範囲なら大丈夫、って事ですか?」
世界地図を持っていれば、世界中どこでも飛んで行けるということに、なる?
「地図の範囲でも、行けない所は有るけど。まあ、半分ぐらいは確実かな?」
「ここにもルールの壁が……」
「仕方無いです。地域によってルールが違うですから、どこでも適当に入って行ったら、みんな混乱するです」
「ルールって、一つじゃあ無いんだ?」
世界中、同じルールで生きているのだと思っていた。
「初めは一つの筈だったんですが。様々な出来事により、初めに作られたルールだけではやって行けなくなり、地域ごとに実験的にルールを作っている所なのです」
「その内、一つに纏めるんですね?」
「いえ、それは無理でしょう。けれど、貨幣は一つに纏めて有りますし、良いと思われたルールは、他所でも導入して行くことに決まってはいます」
行ってはいけない場所が有る。けれど、地図を持っている場所には、五割程度の確率で行く事が出来る。
ルールが違うから行けないなら、人の居ない場所なら行けるのだろうか。
「私が持っているのは世界地図なんですけど、世界地図を持ってたら、世界中に行けるんですか?」
ギョッとしたような目を向けられ、亜美奈は一歩後ずさった。
「世界地図を、聖王様にいただいたんですか?」
興奮を隠そうともせず、ラフェルが聞いて来る。
世界地図を持っているという事は、きっと凄い事なんだろう。その割には、簡単にくれたけれど。
「あの…… 初級ダンジョンが造れるから、って言って、三つ葉の件が落ち着いたら、ダンジョンを造りながら世界を回れば良い、って。ミケルが……」
それで納得したようで、三人の天使は頷き合っていた。
「だったら、遠出の出来るチャームを造らないと。今度アンジェにくっ付いて行くから、希望の形を考えて置いて」
「はい、判りました」
遠出の出来る、空飛ぶ乗り物。
出来れば、中で生活の出来る物が良い。それから、夢の有る、アニメっぽい奴。船か空中庭園が良いが、ムチャ過ぎだろうか。
「その時は、落ちずに扉から来て下さいね」
「えっ、いや…… いつも落ちてる訳じゃ無い、筈なんだけどな」
「いつも落ちてるです」
「え~っ? そうかなあ……」
なるほど、いつも落ちてる人なのかと、亜美奈は納得した。そして、ちょっぴり残念に思う。
運命の相手は落ちて来ると、ミケルは言っていた。
彼は大好きなアイドルに似ていて、ちょっと好みだったから、運命だったら良いのに、などと夢見ていたりもしたのだ。
そうでなくても、見た目が好きなので、関わる事が出来て嬉しいのだけれど。
「では、私達は帰るです」
「うんっ。ラフェルさん、また明日、ですね?」
「はい、夜には城の方に伺います」
その時にはきっと、新しい『神の手』を連れて来るのだろう。
どんな人達が来るのか、今から楽しみだ。
「これ全部、持って行くです?」
「そうよ。昨日持って行った分完売しちゃって、予約がいっぱい入ってるからね」
昨日、亜美奈達が帰った後は、プレオープン状態だったとかで、持って行った商品は全て無くなってしまったそうなのだ。
元々持っていた物が少ない上、制服は正装の為に取って置きたい人が多く。普段着になるデニムやブルゾンは、特に人気が有ったらしい。
それらに合うトレーナーやセーターを、他のグループが沢山作って有ったのも、売れた要因だろう。
「箱は作らないです?」
本当は箱の注文もたくさん有った。けれど、そっちは後回しだ。
一気にあれもコレもやってしまうと、直ぐに出来るものだと思われて、扱いが軽くなるに違いない。
「箱はまだ素材が集まらない、という設定」
「設定ですか?」
「うん、設定。ラフェルさんの頼まれものも有るから、作るの早い人って思われても困るからね。この服の方は、先に作って有った分、って言う設定」
「設定ですね。判ったです」
本当に判っているのか、イマイチ怪しい為、もし箱のことを聞かれたら、『亜美奈に聞くよう』に言うか、しつこくされたら、『まだ十日ほど掛かる』と言っていたと言うように教えた。
と、言うことで、職員室の扉から出る。
「おはようございます。ずいぶんと人が少ないみたいですが、何か有るんですか?」
当然だが、それぞれ受け持った仕事が有るため、何時でも職員室に居る訳では無い。それでもここまで人が居ないのは、ちょっと珍しい。
「おはよう、亜美奈さん。今日は天使様と二人だけなの? 珍しいわね」
「桃子は病院島に行ってるんです」
「病院島、って言えば。ソロソロ、子供が生まれるのよね。お祝いになる用な物が買えるお店知らないかな?」
「お店と言言うなら、ずっとここにいる先生の方が良く知ってるんじゃ無いですか?」
品を卸す約束はしていても、他のみんなが何をしているかは、把握してい無い。
ただ、心菜と真鈴が子供服を担当するとは言っていたし、少し先でも良いなら、出品するかもしれない、と教えて上げた。
「でも病院島の売店が、優先になるかもしれないですけど」
「なら大丈夫だわ」
「そうなんですか?」
「私は付き添い役だから。ここの生徒が生む時は、一緒に病院島に行くからね」
「何だ、そうなんですね」
それなら、病院島で買って下さい。そう言って亜美奈は、商店街の方に向かった。
商店街の方なら、ベビー服の話しも聞けるだろうと思っていたが、納品を待ち構えていた買い物客達に隙は無く。結局図書館に行って、自分で調べる事になった。
「ベビー服の本なんか、有るのかな?」
高校の図書館とはいえ、地域の施設も兼ねているため、大人向けの本も子供向けも、しっかり揃っている。
とは言え赤ん坊の物となると、どこを探して良いのかすら判らないから困る。
「あ~っ、亜美奈だぁ」
「キョロキョロして、何を探してるの?」
「真鈴、心菜も、何か調べに来たの?」
商店街に納品に来たついでだろうが、心菜と真鈴が図書館に来るのは珍しい。しかも場所が、育児関係のコーナーだ。
「子供服に関する本が無いか、探しに来たんだ。大人向けをそのまま小さくしただけじゃ、どうも違うみたい何だよね」
確かに、子供服には子供服に適したデザインが有る気がする。
中学生ぐらいになれば、それなりに大人びた服を着てもいるが、小学生の内は大抵子供専用のデザインだ。
身体のラインが違うせいで、どうしてもデザインが変わって来るという話しを聞いた事も有るが。亜美奈は大人側の勝手な思い込みが、デザインの原因になっているのでは無いかとも思っている。
とは言っても、自分も小学生の頃はいかにもな子供服を着ていた事も有り、丸きりの否定はする気も無い。
それに今回は最も大人の意思が更に通りやすい、ベビー用品を作るのだ。もっと大きな子供の事は、それを作る人達に任せれば良い。
「私はベビー服を作るんだけど。デザイン以前に何作れば良いか判らなくって」
「それなら、この裏側に有ったよ。CMもやってる育児雑誌がごっそりと」
「やった。コピーして貰ってこう」
雑誌その物をプレゼントしても良いし、服だけじゃ無くおもちゃの情報も載っている筈。
退院後どのように生活して行くつもりか判らないが、服だけじゃ無く色々と必要になると思うから、情報も必要だ。
「赤ちゃんならぁ、着ぐるみとかぁ、良いと思う~」
「ボクも小さい時に、着ぐるみ着てる写真有ったよ。後、アニメキャラのドレスとか」
写真は撮れないが、記念にベビードレスを着せたい母親もいるかもしれて。
父親が一緒に来て無い分、何か記念に残る物が有った方が良い。
「ありがとう。二人のおかげで、色々思い付けそう」
せっかくだから、全部ぬいぐるみでまとめるのも良いかもしれない。
クマにウサギにお猿さん。ネズミにライオン、ヒツジ、ネコとイヌ。色違いも用意して、余ったら病院島の売店で売って貰えば良い。
でも、レースたっぷりのベビードレスも、一つぐらいは有って良いかも、と思う。
つづく




