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猿島だからサルです

誤字報告ありがとうございました、助かります。

 食事を終えて、みんなを送り出してしまうと、急に静かになった。

 しんと静まり返ったエントランスに、三人で立ちすくむ。

 淋しいと、なぜだか口に出せない。代わりに、何を言えば良いかと考えた。


「ではまず、ベッドとお布団。後、家具を一つ作るです」


 一番始めに声を上げたのは、天使のアンジェだった。

 彼女達天使は、夜になれば家に帰る。どんなに盛り上がっていても、一人で帰らなければならない。

 こんな寂しさにも、早く慣れなければならないのだ、きっと。


「ベッドと布団は判るけど、家具を一つって言うのはどうしてなの?」

「気持ちが温かくなるのです。何も見えない部屋は、冷たいのです」


 ああ、と亜美奈は頷いた。

 初めてベッドに横になった時、見えたのは扉だけだった。

 他に何も無い部屋は、妙にガランとして肌寒い感じがしたのを思い出す。

 アンジェが言うのは、そういう事だ。


「椅子の一脚でも良いんだし、取り敢えず作っちゃおうよ」

「まぁ、それで良いのなら」


 今回は亜美奈も、工芸の方で作る。

 それはもちろん、レベルが上がっているからに他ならない、建築の方では凝ったデザインの家具は作れないのだ。

 作り付けなら別だが、すでに有る建物に『作りつける』事は出来ないため、どうしてもシンプルになる。せっかくだから、城に似合うちょっと良いベッドを作りたい。となると、やはり工芸でという事になる。

 もう一つ作る家具は、桃子に言ったように椅子で良い。凝った家具は、全体のイメージを決めてからが良いだろう。そうで無ければ、使う予定の無い中古家具が、バッグの中に増えて行くだけだ。


「じゃあ、工房に行くです。って、亜美奈はどこに行くです?」


 習慣でドアから出ようとして、アンジェに言われて思い出す。今度の工房は家の中に有り、わざわざ家から出る必要は無いのだと。


「ごめん、こっちだったね」


 ほんの一週間で、もう習慣付くなんて。慣れと言うのは本当に怖いものだ。






 ベッドと椅子の後は、ぬいぐるみをたくさん作った。

 それは別に、ぬいぐるみが欲しかった訳じゃ無い。レベルを上げたかったのだ。

 不思議なものでぬいぐるみは、レベルが高い程小さな物を作ることが出来る。なのでたくさん作って、レベルを上げた。

 それから、新しいレシピだ。手の平に乗るくらいの、小さなぬいぐるみ型ポーチのレシピを作って見た

 クマとウサギ、それからサルだ。何故サルかと言うと、ここが猿島だからだ。

 富士山に家を建てるという話しを聞き、伊勢組は富士山カレーゃ富士山のイラスト付の土産を欲しがった。

 富士山で富士山カレーなら、猿島なら猿のぬいぐるみだろう。

 それぞれを色違いでたくさん作った後、初めに貰ったバッグと並べてテーブルに置いた。

 念のため、バッグの中身は全て出しておく。


 カラビナ付の、カラフルな動物逹。その中から亜美奈は、クリーム色の猿を選びバッグの隣に置き他は一旦かたずける。


「マジエス」


 初めて使う魔法は緊張する。失敗したら、便利なバッグを一つ、失ってしまうかと思えば強張りは半端無い。

 それでも、せっかく手に入れた魔法だ。自分と魔法をくれた精霊を信じて、やり切ろうと思い、亜美奈は引っ越し魔法を思い浮かべた。

 まず、杖をバッグに当てる。すると杖の先に、小さく光る四角い棚が現れた。その棚を、猿型のミニポーチの上に置けば、吸い込まれるように消えて行き。


「成功した……?」


 バッグと猿、それぞれに触れて鑑定を掛ける。

 するとバッグは普通の布製品に、猿はたくさん入る、魔法のバッグへと変わっていた。もちろん使用者限定の魔法も、しっかり付与されている。

 試しに亜美奈は、脇に寄せて置いた荷物を、バッグに入れてみる。

 判っていたが、手のひらサイズの小さなぬいぐるみに、大きな家具が入っていくのは中々シュールだ。

 このバッグに入れるのは、良く使う物である方が良い。それから、今後会うであろう人達に、売ったりプレゼントしたりする物。

 収納物の一覧を表示したまま考えて、工房の空いている棚へと使わない家具を並べて行く。新品は下に、一度使ったものは上に。

 これで三つ葉の人達に売る時も、すぐに取り出すことが出来るだろう。


 出来たてのバッグを、ボディバッグのショルダーベルトに付けてみる。

 猿の手足には、マジックテープを付けて有る。落ちないように、カラビナでしっかり固定したあと手足を軽く絡ませる。

 ファスナーはお腹の部分に有り、猿はベルトにしがみついているように見えて、我ながらとても可愛い。


「何作ったです?」


 あまりにニマニマしていたせいか、アンジェが不思議そうに、いや、恐る恐るといった風に聞いてきた。


「バッグだよ」

「ぬいぐるみです?」

「ぬいぐるみ型のミニポーチ。最初に貰ったバッグも使いたいけど、二つも付けてると変でしょう? だがら、こっちに引っ越しさせたの」


 これならただの飾りに見えるから、二つ無駄無く使う事が出来る。


「とっても可愛いです。私も欲しいです」

「私も欲しいんだけど、良いかしら?」

「もちろんっ。三人でお揃いにしようよ」


 可愛い猿を色違いで。


「好きな色を選んでよ」

「私は、……やっぱりオレンジかしら?」


 亜美奈もだが、桃子も初めに選んだチャームの色が、自分のカラーのようになっているらしい。

 他の色でも良い筈なのに、なぜだかその色を選んでしまうのだ。


「アンジェはどれにする?」

「う、んと…… 猿って、何色なのです?」

「猿は茶色だよ。でも、マスコット何だから、何色でも良いんだよ」


 ピンクにブルー、紫、茶色、緑と白の猿が並んでいる。好きな色が無いのなら、すぐ作る事も出来る。そう言って上げるが、アンジェは決め兼ねているようで、ずっと首をひねっている。

 そうして、しばらく考えた後、茶色の猿を手に取った。


「やっぱり、猿は茶色です」

「そうね、茶色の猿はらしくって可愛いわ」


 猿と言ってもデフォルトしたデザインのため、どの色でも有ってると亜美奈は思うが、本人が気に入った色が一番だと思う。


「じゃあ、バッグの機能を移し替えるから、中身が空になってる事を確認してから、並べて置いてね」

「これでお願いするです」

「随分と年期の入ったバッグなのね」


 アンジェは、かなり使い古されたバッグを出した。あちこち穴が空き、繕って、大切に使い続けて来た物のようだ。






                      つづく

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