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みんなで街を作るよ

 亜美奈達が固まっていると、もう一人今度は少年から可愛いおねだりの声がした。


「ボクも欲しい~」


 子供に言われると、ちょっと弱い。けれど子供が安全に使えそうな魔法は、ちょっと思い付かないのだ。


「水系は水浸しにしそうだし、子供はちょっとの水でも溺れたりするって言うから危険だよね。火は当然ダメ。着替えの少ない状況で、土遊びもねえ」

「風はぁ?」

「ボク、子供の頃だけど、かき集めたばかりの落ち葉、蹴散らして遊んで怒られたことが何回か有るよ」

「風はぁ、蹴散らすよりまずい~?」

「音がする物は絶対に駄目。夜遅くに鳴らしまくるの、子供の定番だし。怒ると余計するんだよね」

「ここって静かだからぁ、ちょっとの音でも響くよねぇ」


 子供は何をしでかすかわからないから、与えるオモチャは気をつけないといけない。充分気をつけて、それでもやらかすのが子供でも有るのだ。

 でもあげたい。何かあげたい。特に女の子は、魔法少女に憧れる年齢だから、ごっこではなく、魔法を楽しんで欲しい。


「では、コレでいかがです?」

「えっ?」


 三人に渡されたのは精霊。光を見たのは一瞬で、すぐそれは石に変わった。

 せっかくだからと袋に入れてすぐ、ラフェルがコレをくれた意味が判った。


「虹のスプレー」

「ボクのは時計だ」

「私のはぁ、光の輪だぁ」

「時計良いね。後で交換して?」

「私も~」


 三人、貰ったばかりの魔法を本に付与する。それからお互いの本にも。

 三冊の本をラフェルに渡すと、それぞれのグループに本の使い方を説明していた。

 そのすきに、それぞれの魔法の使い方を確認。

 虹のスプレーは、杖の先から虹色の水蒸気が出るだけ。けれど、とてもキレイな魔法だしその辺に色が付いたりしないのが良い。

 光の輪も、ほぼ同じ。と思ったら、懐中電灯の代わりになる、なかなかの便利魔法だ。

 そして、一番凄いのが時計。壁に杖で丸を描くと、それが時計として起動し、更には、勝手に時間がセットされる優れもの。

 こっちの世界にも時間て有るんだ、と変な所に感心してしまう亜美奈だった。

 そして子供達には内緒だが、じつはこの時計は指定の時間に目覚ましのベルを鳴らすことの出来る、オプションが付いていた。子供用はカットしたが、亜美奈と心菜の分についてはオプションも付けて貰った。

 スローライフを目指す訳でない亜美奈達には、時計も目覚ましも必需品なのだった。


「問題は、街を造る場所までの移動だね」


 と真鈴が言ったその瞬間。

 三人の隣に扉が現れた。

 それもどこにでも在りそうな、ごく普通の赤い扉だ。


「「ただいま帰りましたっ」」


 ガチャッ!

 音を立てて扉が開く。

 現れたのはあの、やる気が無さそうな二人の天使だった。

 何も無い場所に突然扉が現れたのだ、人々が驚かないわけが無い。理屈を知っているはずの亜美奈達ですら、すぐそこに現れた人で、一瞬ギョッとしたくらいだ。

 責任者であるラフェルなど、右手で目を覆ってガックリしている。

 喜んでいるのは子供達だけだ、笑顔前回で指差して『マンガみたいだ』と騒いでる。


「ではミケル、申し訳ありませんが、そちらの三人と『大工』様とそのご家族を連れて先に行って下さい。まとまってく暮らせる場所の確保が出来次第、またそこの二人に迎えに来させるよう指示して頂けますか?」

「判りました。じゃあ君達、案内を頼むよ」

「は、はい」


 チラチラとラフェルを見ながらも、二人の内一人が扉の中へと入って行った。もう一人はドアを支えて亜美奈達を待っている。

 大工組合の方々は、慌てて本の使い方を聞き魔法を貰い、指示されるままに中へと入る。そして出てすぐの所で、ぼんやり辺りを見回していた。

 入ったと思ったらもう目的地に付いているのだから、それは驚くだろう。だが、あとがつかえてしまうのでソコソコで先に進んで欲しい。


「じゃあ~、大工さん達にぃプレートを上げよう~」


 心菜の合図で亜美奈が付与を始めた。

 プレートを出して大工(建築)と木こりを付与する、それを人数分に増やしたのち配布する。

 その隙に、真鈴がダンジョンを造る。獲物は一層で木と綿、二層では少量の米といくつかの野菜、そして鶏肉だ。

 三層では鶏と豚と牛、そして二層で採れる米と野菜の苗を採取出来るようにしたと言う。いつまでもダンジョンに頼りきりになると、後で困る事になると考えての事だ。

 もちろん、一・二層で採れる物はずっとそのままだが、自分たちで育てられるとなれば、いずれはそちらに移行して行くだろう。


「まずはプレートに紐を付けて、首からぶら下げて下さい」

「こうか? お、何か出て来たぞ」


 首にかけると間もなく、付与したスキルの道具が現れる。具体的には、トンカチと斧のミニチュアだ。

 驚いている大工達の前に、ミケルが進み出る。


「まずはスキルを使えるようにする。プレートに文字が書いて有るから、それを声を出して読み上げてくれ」


 プレートは1×3cm程の、楕円形の板だ。小さな板に書いて有る文字は、当然だがとても小さく、若い大工に読んで貰ったりもしている。

 そうしてそれぞれに、文字を読み上げる。


『皆の笑顔のために、このスキルを使うと誓います』


「じゃあ、三人ずつダンジョンに入るから、こっちに来て。初めの一回だけ、ボクが付いて行くからね。心菜、台車出来た?」

「板ならぁ出来たよぉ………」

「本当だ、板だね」

「ゴメンねぇ、亜美奈みたいにぃ、レシピ作ろうと思ったんだけどぉ」


 出来上がったのは、反発を付与した板にロープが付けられている物だった。それでも木材は運べるし、食べ物についてはそれぞれが袋を持って行けば良い。

 せめて板の周りに柵でも有れば良かったが、今は急ぎで家を作らなければならないので、文句は無しにしよう。






「じゃあ、いっくよーっ!!」


 ある程度木材が集まった所で、家づくりスタートだ。

 大工の男達は、今もダンジョンを往復しているが、すべて揃うのを待っていると日が暮れてしまうので、一まず亜美奈達だけで作り始める事にした。

 色々考えた末、まずはレシピにある一番簡単な家から作る事にする。

 真四角の平屋で、2DKと言った所か。地域によっては、『借家』というとこの形を指すシンプルな形の家だ。

 今日はこの家を、作れるだけ作ってしまう。そうすれば緊急避難的な居場所は出来る筈だから、あとの足りない分は大工に任せてしまっても良いだろう。という事だ。


 しかし、そこで一つ問題が出て来た。

 下水の処理はどうしよう。である。


「特にトイレは、そのままにする訳に行かないよね?」

「大雨の時ぃ、飲み水とぉ混じる可能性が有るしねぇ~」

「ミケル達はどうしてるの?」


 亜美奈達が住んでいるあの家は、一体どうなっているのだろうか。生ごみもすべて、台所のごみ箱に捨てている。

 お風呂もトイレも、使った水の行先も。まったく考えたことが無かったけれど、いったいどうなっているのだろうか。


「オレは専門が違うからはっきりとは判らないんだけど。浄化の付与と魔物で処理してるそうだよ。遠目で見た時はクネクネとかベタベタとか、そんな感じだったと思う」

「判った。スライムとミミズとナマコの魔物が出来れば、何とかなると思う。あとは浄化かな?」


 亜美奈はさっき拾い集めた、大量の精霊石を思い浮かべた。もしかすると、あの中に有るかもしれない。

 かなりの量だ、あそこから探すのは大変そうだが、やるしかない。

 他に思いつく方法は、江戸時代の下水処理しか無い。汚水は別通路を作って流し、汚物は貯めて置いて肥料にする。

 よく考えられた方法だとは思うが、現代に育った人間に、自分が出した物で育った野菜が食べられるかというと、そう簡単じゃない。

 贅沢言うなと言われても、動物のフンを利用した堆肥とは感覚が違うのだ。


「ねえミケルさん。さっきの精霊石は、私以外が契約する事って出来るんですか?」

「いや、石になった時点で契約は半分終わってるから、やっぱり本人でないと。でも、二人に手伝って貰ったら早く出来るし、手伝いの報酬ということで付与してあげても大丈夫だと思うよ」

「何の事なの、亜美奈?」


 亜美奈はゲッソリと俯き、さっき海外で拾った石の入った袋を取り出した。

 それは、一抱えもある大きな袋三つつにギッシリ詰まった精霊石だ。袋を開けて中を見せると、心菜と満里奈は唖然と亜美奈を見た。






                        つづく

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