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「愛しのハニー!」


そんな声と共に両脇を捕まえられ、抱っこされる。


「…」


無言だが、私の尻尾は大きく左右に揺れ、不快感を表す。


「ハニー、会いたかった…」


「ハニー」とは猫の姿になった私の名前か!

イラッときたので頬に猫パンチをお見舞いする。


「ハニーは可愛いなぁ。」

「にゃあ!(変な名前つけるな!)」

「シュガーと迷ったんだけど…」

「にっ!(ノンシュガー対応でいくにゃ!)」


もう一発猫パンチをお見舞いするが、相変わらず王子の顔はにやけたままだ。

その顔はまるで私が膝の上に乗った時の祖父のような締まりのなさである。

普段様子を伺うように遠巻きでチラチラ見てくるのも腹が立つが、完全猫対応で馴れ馴れしいのはもっと腹が立つ。

爪でも立てて叩こうかしら?

目を細めて睨むが、やっぱり伝わらないようである。


「今日は生徒会の仕事があるんだが、ついてきてくれないか?君が居たらいつもより頑張れるような気がするんだ。」

「にゃあ(嫌)」


そんな私の拒絶は無視され、抱っこされたまま生徒会室まで連れて行かれる。


「あの時の猫ちゃんだぁ!!!」

「シャー!!!」


至近距離で大声を出されて、私は口をこれでもかと開き牙を丸出しにして威嚇する。

これだから嫌だったのだ。

生徒会には王子と噂になった男爵令嬢がいて、私を見て距離感なくやってくるのがとてつもなく嫌なのだ。

人間の頃は愛らしくて羨ましいとも思ったそれが、猫となればなによりも不快に感じるようになっていた。


「済まないが、怖がっているから辞めてくれないか?」


いつもはポンコツな王子が男爵令嬢から私を庇うように身を逸らし、怪訝そうな顔をしている。

どうやら猫の私は王子と男爵令嬢を引き離す役割らしい。

でも少しくらいいいわよね、私だって二人のせいで悲しい思いしたんだから。


「…ごめんなさい…でも猫ちゃんが好きで、仲良くなりたいと思ってるの。いつか仲良く…」

「シャー!!!(断る!)」

「本当に辞めてくれ。この子は私にしか慣れていないんだ。」


懲りずに近づいてくる男爵令嬢に、私は再度威嚇を、そして王子は忠告をする。

でも、王子は二言目でにやけたせいで、男爵令嬢にはその真剣さは伝わってはいないようだった。


「にゃむ(そしてキモい)」


王子の席の隣に置かれたチェストの上の私専用のソファに下ろされ、私はスンスンとソファのにおい嗅いで安心したと同時に寝転ぶ。

王子の席とあって、日当たりが良く気持ちがいい。

思わずコロンコロンとソファの上て転がると視線を感じて見つめ返す。

目を細めて見つめる王子と目が合う。


「にゃあ!(喧嘩売ってんのか!)」

「ずっと見ていたい…」

「うにゃ、にゃ!にゃあ!(だから見んなよ!仕事しろ!)」


本当に分かってない!

猫の私は見つめられるのが大っ嫌いなの!

一瞥してプイっと後ろを向くと、背中をゆっくりと撫でられる。

それくらいなら許さなくもない。

そして猫の私は図太くも夢の世界へと旅立った。

今後遡って猫の行動解説していきます

・大きな声や音が嫌い、距離感を急に詰めてくる人が嫌い(性格にもよるが、ビビリな猫が多い)

・目が合うと喧嘩の合図である

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