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「ナァー(これ取りたい。)」

「どうした?もっと構って欲しいのか?」


他の生徒会委員からドン引きされた王子がまた息を荒くして手をわきわきさせている。


「にゃお!(痴漢!)」


耳を横にしてムッとした表情をして見せるが、その怒りが伝わる気が全くしない。

できない部下を持つってこういう感じかしら?

敬うべき国の王子をそう言えるのは猫の精神が私に馴染みに馴染んでいるからだ。

猫になれば上とか下とかというより、みんなが私の下なのだと思っているし、気づけば周りもそんな風になっているのが面白い。

ダメな部下に伝えるべく、前足では届かないので後ろ脚で首を掻き、意思を伝えた。


「痒いのか?」

「にゃお(全然わかってない。)」


見兼ねた従者が王子に進言する。


「首輪が嫌なのでは?」

「にゃっ(話分かるー。)」


流石は従者といったところだ。

伊達に他の猫の匂いをさせてるわけではない。

しかし、従者がそう言った瞬間、従者と王子の間にピリッとした空気が流れた。

だけど、私は今は猫だから関係ないー。

でもとりあえず首輪取りたいから従者にすり寄るとしよう。


「にゃー」


従者はすり寄ってきた私を抱き抱えると、王子にさらに勝ち誇った顔を見せつける。

まるで冷遇された王子の婚約者を囲うお茶会に参加したご令嬢のよう。

あの時は辛かったわー。


「みゃぉん!(いいから取って。)」

「はい、分かりました。少々お待ちを。」


従者が首輪を取るとすぐさま従者の腕からするりと降りる。

そのまま帰ろうかとも思ったが、ポンと人間の姿になった。

不本意だが、しょうがない。


「…人の姿になると首が締まるのでもう少し余裕がある…の、に、して欲しい…です…」


自らまた首輪を強請るようなことを言ってしまい、頰が熱くなっているのが分かる。

猫だった勢いで言ってみるも、ろくに意見も言えなかった人間の精神が戻って、羞恥心が一気に回ってきたのだ。

ここからどうリカバリーすれば良いのかわからず、猫のようにプイッと顔を背け、足早に去っていく。

私は猫!

そう自分に何度も言い聞かせた。


数日後、いつもは近寄りもしない王子が私の近くに寄ってくる。

私はそれを横目に見ながらも、冷静だった。

そう、こういう時はいつだって隣や私よりも奥の人間に用があって、私にではないからだ。

しかし、彼の体は私の前で止まる。


「新しいのができたんだ!」


そう言って王子は王家の紋章の入った首輪を広げてみせる。

シンプルな金のチョーカーだが、細かい細工がされた最新技術のもので、紋章の横には雫型の宝石が煌めく、明らかに気合いの入ったプレゼントである。

周りは何が起こったのだと興味津々でこちらを見ていた。

だって私たちは普段会話もしない、冷え切った婚約者同士なのだから。

褒めて欲しそうな王子の顔を一瞥する。


「あら、どなたに、かしら?殿下は何か私にご用があって?」


いつも静かに王子を立てていた、物言わぬ婚約者はもうそこにはいなかった。

私の圧力に負けたのか「あ、あぁ…」と王子は言葉少なげに逃げて行く。


「変わって私が貴女に似合うものを見つけてきますから。」


従者は主である王子を追いかける間際、そんなまた面倒になりそうな言葉を残しっていった。

全く残される私の身を考えているのだろうか。

ふぅっと息を吐くと、また周りの人間がヒソヒソと囁き始める。

でも、前よりもその声は気にならなくなっていた。

だって、また猫になって逃げればいいのだから。

お友達探しのお飾りのような授業に意味なんて無かったのに、真面目に出席してたなんて馬鹿よね。

今日もサボることを決めた私はいつもの日向ぼっこ場所へと赴く。

猫の姿になって横たわり、ふわっと欠伸をする。

私は猫になってようやく深呼吸の仕方を覚えた。

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