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そんな夢も予期せず覚まされる。


「キャ!」


という女性の小さな悲鳴と共に衝撃が走り、思わずチェストから落ちそうになった。

そして目を開くと、王子の胸の中に男爵令嬢がいるという光景が広がっていた。

私のチェストに男爵令嬢がつまずいたのだ。

…気に入らない。

二人のイチャイチャの為に私の安眠は邪魔されたのだ。

欠伸をしながら、思いっきり背伸びをしたあと、手首足首を振って準備運動する。

ぴょんとチェストから王子の机に飛び乗ると、目の前にあったクッキーを皿ごと机の下に落とす。

次は近くにあった紅茶の入ったカップ、次は羽ぺん、その次はインクの入ったビン、目に入ったものを全て倒して行く。

手足にインクの付いたって構わず、最後は書類の上を走り回ってぐちゃぐちゃにした。


「猫ちゃん、やめて!」

「シャー!!!(うるさい!)」


男爵令嬢の注意に威嚇で返す。

自分が公爵令嬢、ましては人間だったことを忘れるくらいムシャクシャしてしまっていたし、興奮して我を失ってしまっていた。


「すまない…」


男爵令嬢から身体を離した王子がそう言って、私を抱き抱える。

私は興奮していたし、爪を立ててそれから逃れようとしたが、王子はそれでも私の背中を優しく摩る。


「驚かせてしまってすまない。」


王子の口からその言葉が出てくると、急に興奮が覚めてくる。

インクで汚れた前足が王子の綺麗に整えていたはずの服を汚しているのが急に目に入る。

振り向けば机の上はすごい惨状になっているだろう。

今は猫の姿をしていても、私は公爵令嬢で、歴とした人間なのだ。

なんてことをしてしまったんだろう…

我を忘れて、自分の感情のままに行動してしまったことが恥ずかしくて、心が萎んでいくように身を小さくする。

「ごめんなさい」そう言いたい、伝えないといけないのに、猫のままでは言葉一つ発することもできない。

王子の胸の中で彼の指をペロペロと舐める。

今の自分にできる精一杯の「ごめんなさい」である。


「うっ…」


王子は少し呻くと、何かを我慢するかのようにプルプル震えている。

その顔は少し気持ち悪いけど私も我慢しよう。

従者のフォローもあって、惨状の割に机の上は早く綺麗にされ、私はチェストではなく王子の膝の上で丸まった。


・とりあえず、目の前にあるものは猫パンチで転がす

・舌はザラザラしているが、気を使ったペロペロもできる

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