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「―――――♪」


「あーーっ。デライト、あんたさぼって何堂々と本読んでるのよっ」


「……すること、ないから」


「いやいやいやいや、掃除に帳簿付けに……あとは、えーっと。あっ、掃除っ!」


「帳簿付けは終わった。掃除は、するまでもなく綺麗」


「ぐぬぬぬぬぬ、あー言えばこーいう」


「……事実」


「くぁー、ラッセル。頼んだっ」


「えっ、私?えーっと、デライト。給金貰って仕事するならその間はどうやったらお店に貢献できるか考えなきゃダメッ。お店があってお客さんが来てそれで私たちのお給金が出るんだから」


「でも、お客さんいないし」


「そう、だからどうやったらお客さんが来るか、お客さんが来た時にいい場所だと思わせるか考え動かなきゃ」


「………………ぬっ」


ラッセルの説得で本を閉じる。


掃除をしようと動く。

が、既にあらかたピカピカだったのかすぐに掃除道具を片づけ入り口・座席・カウンター・厨房と動いては止まりを繰り返す。


早速何か考えて動いているのだろうか。


昼過ぎに最後のお客さんたちが出て行ってからだいぶ時間が経過していると思う。

店内にお客さんは一人もおらず、その間のミスティとラッセルの働きでほこり一つない空間が出来上がっている。


営業二日目にして、休憩所と称したドリンクを置いただけの家屋は既に閑古鳥が鳴いていた。

初日はミスティの営業と開店の祝儀扱いで特別に人が多かったのか、朝から数えて数組のお客さんが訪れたのみで、自分一人でも余裕で回せる程度の暇さとなっている。


「デライト、今日の売り上げは?」


「客数11、お代り30で3,100ジル」


本日分では5,000ジル―――旧金貨1枚分も稼げていないことになる。


本来ならそれでも構わなかったのだが東條(天災さん)に渡してしまったのである程度所持金がないと困ったことになる。


デキシーさんへの賃料旧金貨1枚(5000ジル)と3人の給料で銀貨45枚(4500ジル)の支出は確定。

後、先ほどミスティが教えてくれたのだが、来週の日曜日が『再生の日』に当たるので後2回の営業で残り6400ジル稼いでおかないといけない。


日本から持ってきた飲料水のおかげでシルイットの井戸を使ってなかったの(市税がかからない)とギルド税を免除してもらっていたのは助かった。

一月目でいきなり給料か家賃の未払いを出すところだった。


というか、店舗販売する商品の登録も一切していない。


いつの間にやらミスティが飲料水・砂糖・塩コショウ・粒胡椒だけは登録してくれてたみたいだけど……。


税金免除してもらっている今のうち、ガルフコーストさんとコリンズさん辺りを交えてリストを見てもらい他にも売れそうな商品をさっさと登録しておこう。

他と取り引きする前にめぼしい商品を見つけ出す意味合いもある(理由な)のだろうけど、仕方ない。


………どうせ暇だろうし、明日じゃ駄目かなぁ。


3人があーでもない、こーでもないと話したり動いたりするのを眺めながらさっさと済ませておくことを考えて走り書きしておいた。


因みに、その後お客さんが来ることもなく一日を終えました。


途中から3人は外で草むしりと花壇作りを始めたのでそのうち外回りもきれいになるだろうなぁ。










というわけでやってまいりました商業ギルド、ギルドマスター執務室。


お店の方はデライトとラッセルにお任せしています。


3人以外に同席しているのは頭が回っておっちょこちょいのミスティと人を殺せそうな凶悪な視線の持ち主ブルーヘブンさん。


正直ブルーヘブンさんには来てほしくなかった。

睨まれるからね。今のところは資料を睨みつけ、もとい眺めているので安心だ。


そして、初めて見る金髪金眼の優男。

挨拶もなしに持って行ったお手製日本産の商品カタログをざっと流し読みするなり


「素晴らしい!」


と叫び、大接近。

自分の手をぎゅっと両手で握ってくる。


「うひぃ」


気持ち悪くて変な音が漏れた。


「おっと、失礼。これはガルフさんから他の取引(些事)を投げ捨ててでも来てほしいと言われるだけの価値がありますよ。まぁ、ちょうど荷造りの途中だったので部下に任せることができたんですけどね。あぁ、申し遅れました。私、マイロ・ポニータと申します。気軽にポニーとお呼びください。ガルフさんやナストゥールさんとは懇意にさせて頂いております。よろしければハヤトさまもこの機会にポニーの名を覚えて頂ければと申し上げます」


「ハヤト殿、こやつは饒舌すぎるのが玉にきずだが有能な奴でのぅ。丁度よい機会なので声をかけて見た次第です。ポニーとナストゥール商会、彼らならハヤトさんの悩みを解決できるかもしれませんぞ」


「おや、ポニーと商品の紹介だけではなく私たちにも相談が?」


「親父殿、このカタログの中身(えさ)が成功報酬なのだろう。中々に厄介な案件がきそうだぞ」


「ブルー、わかってますよ。しかし、そのリターンは計りしれません。とりあえず我々は聞いても問題ない範囲だけ伺ってから対応を決めましょう」


「…………わかった」


「ポニーも同様でお願いしたしますぞ。荷のやり取りなら我がポニー商会は王都とシルイットだけでなくロストータ大陸各地に顔が効きますからな。それも、我が紹介筆頭の………」


「という次第です。大したおもてなしもできませんがそれぞれ忙しい身。早速ですがハヤトさん、話しても差し障りのない部分だけ、とりあえずお聞かせ願えないでしょうか」


ガルフコーストさんがポニータさんの話をぶった切る。


まぁいいかと、店の階段より向こうの話だけぼかして説明した。


あ、しょっぱなから経営危機に陥りそうになっている話も内緒だよ。

あ、そうだ


「あ、後コリンズさんとポニータさん。後で砂糖を1kgずつ査定してみませんか?1袋だけでしたら契約に許可がでておりますので」


ちらりとガルフコーストさんを見る。

少しウッとした表情を見せたが何も言ってこない。


残り3割に他者に販売を許可する契約をしているので問題ない。

ガルフコーストさんの目の前で提案したのはぼったくっていたらすぐばれるぞとのけん制とこの話をしても大丈夫な人か確認のため。

だめな相手なら後日教えてもらえるだろうし、断って無理やりに商品を求めてくるなら扉を閉じてしまってサヨウナラ、だ。


砂糖だけなら売れるものと大量に用意してしまったし、それが売れるなら休憩所が閑古鳥でも維持費どころか税金分の蓄えもできる。

まぁ、どっかの誰かさんから強請られなければこんなことも考えなくてよかったのだが……。


「それはありがたい話ですなぁ。こちらもハヤトさんの世界に商品を買い取っていただけるのであれば助かりますし、ナストゥール商会は可能な限り支援させていただきますぞ」


「あぁ、商売敵なら叩き潰すが客なら別だ。……よろしく頼む」


コリンズさんとブルーヘブンさんと握手する。


てか、ブルーヘブンさん、笑っても怖い。

目が鋭いだけに口元の笑みが何か企んでいる笑いに見えてしまいます。


「我がポニー商会も同様ですぞ。ハヤトさんが必要とされるものを海千山千超えて手に入れてまいりましょう。しかし、我が商会は規模を小さくして世界を周っているせいもあって、商品を持参しての御提案は難しいと思われます。ですので、ハヤトさんがこの商品をというものがあればポニー商会シルイット支店の者にお伝え下さい。この大陸から最高の品を探し御覧に入れましょう。買い取りについてもぜひとも此方からお願いさせていただきたい。このような品、大陸中を周っても見た事もないものばかり、この写真?というものを拝見しただけでも一級品………いや、特級品の商品(もの)ばかりだと一目でわかります。これなら王侯貴族の方々に定期的に納品を検討いただくことも………」


「あー、じゃあガルフコーストさんコリンズさんブルーヘブンさんは日本(じぶんの国)の方で売れそうなものの提案を、実際に収益を考えられるようであれば皆さんに上等なものを定期的に納品してもらうって事で……大丈夫ですか?」


「「異議なし(ですぞ)」」


「………あぁ」


「ポニー商会も構いません。ガルフさん、どうせならこのポニーに任せて仲介の……」


というわけで、ガルフコーストさんだけでなくナストゥール商会からも日本に売り込めそうなものを探してもらうことで話がついた。


因みに砂糖のお値段。


*********************

ナストゥール商会6,300ジル

ポニー商会6,150ジル

*********************


どちらもギルド買い取りより高かった。

来月の砂糖買い取りは最低でも追加で銀貨5枚は多く貰わないとね。


「デライトー。今日の売り上げは?」


「客数9人、お代り21杯。合計2,430ジル」


休憩所ことお店はやっぱり閑古鳥だった。


そして庭の草が短く切り揃えられ、日当たりのよい端の方には等間隔で石が置かれていた。


「あっ、店長。家主さんに花壇を作っていいか聞いてほしいなー」


と言われたので召喚しました、デキシーさん。


「そうね、問題ないよ。これから暑くなるから葉っぱまで食べられるラディッシュなんてどうだい?」


デキシーさん、ラッセルたちが植えるのは野菜じゃなくて花だと思うんですけど……。


収支

先週の残金902ジル

収入

店舗売上5,530ジル

砂糖売上12,450ジル


支出

給料1,000ジル×3


残高

15,882ジル


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