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機械にも見える夢を君に。  作者: 冬木 冷音
2/10

02話〜嘘〜

人命救助のための瓦礫撤去用ロボが開発され、話題沸騰した年から20年。科学は凄いスピードで進歩し、今では工業、農業、漁業、接客業、医療、仕事がロボットに代わり始めた。

ロボットは、地球温暖化防止の機能も備えられており、ヒトの血液に含まれるヘモグロビンの反転素材として発見された“イモグロセル”を使用している。ヘモグロビンが酸素を運ぶのに反対して、イモグロセルは、二酸化炭素を運びエネルギーとして使用する。イモグロセルは緑がかった青色で、それにより、ロボットは血液(詳しくはエネルギー溶液)が青色になる。

最初は便利だと思う人が多く、賛成の声が上がったが、機械普及から2ヶ月ほどが経つと、人件費カットのために大規模なリストラが色々な企業で行われた。仕事を失った人たちは、“機械失業者”と呼ばれ、機械失業者は政府に“機械殺し”のデモを起こした。


最初は数人だったのだが、どんどん人数は増加し、最終的には5万人にも及んだ大きなデモに発達した。


政府側も機械失業者の心を汲み取り、機械の製造及び使用を禁止し、破壊することと、人を使っての業務が義務付けられた。それにより機械失業者は減り、デモはどんどん無くなっていた。




ロボットには、工業や農業用の“作業型”から、接客用の“人型”の2つがあるが、間近で見ても、詩は人にしかみえない。

「青色…そうなのか?」

詩に問う。

「私ね、今まで自分がこんなのだって知らなかったの。みんなと同じ人間で、ただ何もない一人の人間だと思っていたの。けどね、家で裁縫中に針が一瞬刺さっちゃって…そしたら、青かったの。」

詩にとって、いいや俺が詩だとしても同じだろう。

ーー人間として生まれてきて。

ーーー人間として育ってきて。

ーーーーけれど自分は人間でなくて。

気付いた時は、詩の言った通り『生きる』が分からなくなるんだろう…


いろいろなことを考えるうちに、遠くから車のエンジン音が聞こえてくる。白と黒で塗られた車。パトロール中なのだろうか。早くはなく、普通のスピードだ。


「詩!急いでその傷を隠せ!パトカーが来る!」

どんどん近づいてくる。あとおよそ50m。

「本当に?早く隠さないと…」

慌てて脱いだ服を着始める詩。

俺らに気がついたのか、スピードを緩め近くで止まる。

「ギリギリオッケーだよ。」

制服に着替えた詩は、やはり人にしか見えなかった。


「君たち、こんな夜に公園でなにをしてるの!」

少し怒り気味の口調で警察官に質問される。

なんて言おうか…もちろんロボットに関しての話は今は良くない…

「えーっと私の彼氏と公園で会う約束をしてたんです!これからどこへ行くかは想像にお任せしますよ!」


彼氏!?嘘だとは分かっていても、こちらが赤面してしまうほどの唐突の発言だった。

しかもなんだ、これからどこへ行くかって…それは夜にカップルがすることって。。。それを平気で言える詩もすごい…


きっと同じことを考えたのだろう。

警察官は慌てて「あまり夜遅くまで帰らないようにな!」と、訳の分からぬことを言って帰っていった。


「どう?私の名演技!」

「どう?って焦ったよ!」


先ほどの唐突に脱ぐことがあったが、もう少し選択肢はなかったのだろうか。

「けどありがとうね、君がなにも言わなかったから、不自然なく通り過ぎていったよ。気づかれていたら私は終わりだからね…」


詩の悲しそうな声が夜の草木が吸い込んで行った。

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