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リンゴのありか

作者: 中塩屋 治
掲載日:2018/10/06

例えば、あなたはリンゴの味を知らないとします。しかし、あなたはそれを文章として書かなければならない。さあ、どうしますか。あなたが適当なことを書けば、すでにリンゴを食べて、リンゴの味を知っている人から、嘲笑を買うことは必至でしょう。

この問題を解決する方法は、二つあります。一つは、あなたが直接経験することです。あなたが、リンゴを食べてしまえば良いのです。そうすれば、少なくともあなたの経験した事実であるリンゴの味を、堂々と発表することができるのです。

二つ目は、リンゴの味を知っている人に直接会うか、それとも間接的に本を読んだり、伝聞するかです。この場合、あなたは嘘か真か分からないが、一応リンゴの味を知ることができます。数多くの証言の中から、最大公約数を発見し、発表すればよいのです。

しかし、慎重に行わなければなりません。仮に一つのリンゴをみんなが食べたとしても、皆が皆、同じ表現をするとは限らないからです。或る人は、あまりにおいしかったものですから独り占めしたくて、嘘のことを言うかもしれません。正直な人は正直に、天邪鬼は天邪鬼に、どうでもいいやと思う人は隣の人の意見に同調するかもしれません。

あなたならどうしますか。忘れてはならないのは、リンゴはただ一つだけであったということです。

事実が一つであれば、真実が一つであるとは限りません。事実を得た人の数だけ、真実の存在は許されるのです。

あなたは、リンゴの味を人に伝えてはならない。リンゴの味を多くの人が味わえるように、一人ひとりがリンゴを頬張れるように、リンゴがそこにありますよ、とリンゴの在処を伝えなければならないのです。


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