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【連載版】邪神に手駒として召喚されたらしいんですが(仮題)  作者: 龍凪風深
第二章 ダンジョンに潜るらしいんですが
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第43話 VS悪魔化


 「ッッ、あ、ぐ…………!!」


 シルビィへと伸ばされた男の手が、その白く細い首を掴み上げる。


 宙に浮かされた身体。

 地より離された両足が揺れる。


 「っステータス、オープン」


 視界の先で、首を絞められるシルビィの姿に、雪菜は焦ったように、ステータスを開き、横目で確認する。


 HPなどの基礎能力には、変化なし。

 レベル、称号にも変化はなし。


 スキルにも、変化なし────あるスキル、一点を除いて。


 (あ……)


 『歌導術ステラトラグディLV10』


 一つだけ。

 そのスキルだけが、レベルMAXであるLV10にまで上昇していた。


 (LV5、エラー。LV6、エラー。LV7、エラー。LV8、エラー。LV9、エラー………………何、これ)


 雪菜は素早く、歌導術ステラトラグディのスキル に鑑定アプレイザルを掛ける。


 LV10、奇跡の歌(プロセウケー)

 歌を媒介とし、代償を支払う事で奇跡を引き起こすユニークスキル。


 代償に縛りはなく、自分が持つものであれば、血でも、髪でも、命でも、臓器でも、感覚でも、何だって構わない。

 ハイリスクには、ハイリターンを。


 (奇跡の歌(プロセウケー)?)


 表示された鑑定結果に、雪菜は僅かに固まる。


 奇跡を引き起こすユニークスキル。

 奇跡、とは、果たしてどの程度が含まれるのか。


 それは、誰かの定義か、世界の定義か。

 はたまた、雪菜自身の定義によるものか。


 (ッ代償は血液、流れ出してるのも使えるでしょ)


 固まってる場合じゃない。

 迷っている暇もない。


 雪菜は身体を起こし、少々よろけながらも、立ち上がる。


 出来るかどうかじゃなく、やらなくちゃいけないのだ。

 生きる為には、身を守る力が必要だ。

 あいつに、殺されないだけの力が。


 「ぃ……ぁ……っ」


 シルビィは、緩やかに絞められる首に、苦悶の声を上げながら、男の手を精一杯叩く。

 けれど、男の手はびくともせず、力は緩まない。

 気道は故意的に閉ざされ、徐々に酸素が肺へと運ばれなくなる。


 ────苦しい。苦しい。苦しい。


 酸欠による苦しみからか、彼女の目尻に溜まっていた涙が、遂に溢れ、頬を伝って零れ落ちた。


 「I am ready」


 雪菜は一気に駆け出す為に、足を踏み込む。

 それと同時に──歌を歌う。


 「This body is a steel blade」


 奏でる音色は、激しく攻撃的。

 使用するスキルは歌導術ステラトラグディLV10、奇跡の歌(プロセウケー)

 歌に乗せて望む奇跡は、今を戦う力。


 痛みの軽減。

 身体能力ステータスの上昇。

 風による加速。


 頭から頬へ。

 顎から地へ。

 流れ落ちた筈の血液が、対価しとて消費されているのか、宙で掻き消える。


 「My heart has cooled down」


 痛みは和らぎ、ふっと軽くなる身体。

 脳内でイメージした通りに、能力が発動する。


 雪菜は身体の痛みが軽減されているのを感じながら、歌による加速に乗り、地面からダガーを拾い上げ、男との距離を一気に縮めた。


 「?!! ……っんだよ、急に?!」


 雪菜は瞬時に、男に向けて手を振り下ろす。

 歌は奏でたままで、風の刃の付加を、と望みながら、シルビィの首を掴む男の手へと。


 雪菜の持つダガーを包むように、風が逆巻く。

 男は自らの腕が切り落とされるような錯覚を覚え、反射的にシルビィの身体を雪菜に放り投げて、後ろに飛び退く。

 その頬を、僅かに冷や汗が伝う。


 雪菜は投げられたシルビィの身体を、素早く抱き留めた。


 「せつ、な……さ、ま?」

 「うん、雪菜だよ。シルビィさん、今からあいつをどうにかするから、皆の所で待っててね」


 けほ、けほ、と噎せながらも、シルビィが雪菜の名前を呼ぶ。

 雪菜はシルビィを安心させるように、そう言って微笑み掛けると、横抱きに抱き上げ、倒れ伏す精市達の傍へと下す。


 「可能だったら、待ってる間、赤坂くん達の治療をお願い」

 「は、い……はい、セツナ様」


 シルビィが小さく頷くのを見届けてから、雪菜はダガーを構え、男と再び対峙した。

 男は何処か、雪菜を警戒するように睨む。


 「てめぇ……何のスキルを使いやがった……?!」

 「……Black sky just overlooks me」


 雪菜は男の問いには答えずに、再び歌い出す。

 男は眉根を寄せると、舌打ちして、雪菜に向け、手を翳した。


 (脳のリミッターを外す。身体が破壊がされないように補助。痛みの軽減。シルビィさん達及び、私に結界)


 雪菜は男を見据えながら、素早く思考を巡らせる。


 「悪魔の風(デモンゲイル)!」


 男の掛け声と共に、先程と同様に黒い風が吹き荒れ、雪菜の張った結界を激しく切り付ける。

 が、雪菜は構わずに、結界を維持したまま駆け出す。


 (早く、もっと早く)


 身体能力の向上に加え、風を纏って加速する。

 雪菜はその勢いのままに、男に向けてダガーを突く。


 男が横に上体を反らして、ダガーを躱すと、今度は男の首元目掛けて、左足による上段蹴り。

 それも右腕で防がれると、今度は男の顎を蹴り上げんとして、右足を振り上げる。


 「っくそ、何だってんだ!」


 最初より速度も力も上がっている雪菜の攻撃に、男は不機嫌そうに吐き捨てながらも、上体を反らせて躱す。

 そして、距離を取るように後ろに飛び退いた。


 「悪魔の泡(デモンスプラッシュ)!」


 男は手を翳し、声を張り上げる。

 その声に反応するように、空気中の水分が集まり、真っ黒な球体──幾つものサッカーボール大の泡を作り上げた。


 男が手を上下に動かすと、それは一斉に雪菜に向かう。


 「Salvation is not given to me」


 雪菜は変わらずに、歌い続ける。

 黒い泡は雪菜に触れる事なく、全て張られた結界に阻まれ、地面へと弾け飛ぶ。

 散った泡は、地に触れてじゅうっと音を立てた。


 (酸?)


 雪菜は飛び散った泡を見て、首を傾げながらも、ダガーを構え直す。 

 男が狼狽したように、「何で効かない?! 何でそんな強度の結界を張って魔力が続く?!」と吠えた。


 男の言葉に、雪菜が開きっぱなしのステータスを横目でちらりと見遣ると、ステータスは雪菜の願いに応じて加速度的に上昇していた。

 その上がり方は、目に見えて異常と言えるだろう。 



 レベル14

 名前:セツナ・クリハラ

 種族:人間ヒューマン

 性別:女


 体力値:214/34+200(スキルにより上昇中)

 魔力値:2135/410+2000(スキルにより上昇中)

 物攻値:21+100(スキルにより上昇中)

 魔攻値:78+500(スキルにより上昇中)

 物防値:18+100(スキルにより上昇中)

 魔防値:80+500(スキルにより上昇中)

 俊敏値:87+500(スキルにより上昇中)

 器用値:23+100(スキルにより上昇中)

 精神値:43+100(スキルにより上昇中)

 幸運値:7


 称号

 『異世界人ストレンジャー』(偽証中)

 『吟遊詩人バード

 『歌姫ディーバ』(偽証中)


 スキル

 『言語翻訳トランスレイションLV1』

 『ソングLV10』

 『歌導術ステラトラグディLV10』 (偽証中)(薬品の効能によりLV上昇中)

 『鑑定アプレイザルLV3』

 『偽証フェイクLV2』

 『世界地図ワールドマップLV10』

 『収納魔法アイテムボックスLV1』




 幸運値以外全てのステータス値に、スキルによる補正が掛かっていた。

 それも、数レベル上がった程度では手に入らない上がり方をしている。


 まだレベル14である今の雪菜には、有り得ないようなステータスだった。




.




凄い所で一区切り。

雪菜のチート発揮です!



以下、おまけ。



 ◆◆◆◆◆◆



 帰還組の道中1



 フロッグ「ゲコォッ!」


 幸村「邪魔だよ」


 (飛び掛かってきたフロッグを斬り伏せ)


 フロッグ「ゲコ」


 幸村「五月蝿いなぁ」


 (また飛び掛かってきたフロッグを斬り捨て)


 フロッグ「ゲk」


 幸村「しつこいのは嫌われるよ?」


 (またまた飛び掛かって……以下、略)




.

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