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【連載版】邪神に手駒として召喚されたらしいんですが(仮題)  作者: 龍凪風深
第二章 ダンジョンに潜るらしいんですが
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第35話 スキルがエラーを起こすのには何か理由がある?


 異世界生活、七日目。

 宿屋、継続宿泊中。


 あの後、ガマの油採取を無事終えた雪菜達は、無事に帰還し、報酬を受け取った。


 今回の成果は、褐色蛙ガマフロッグ十五匹、フロッグ十四匹、幼蛙オタマ十七匹で、褐色蛙ガマフロッグの魔石が一個、銅貨五十枚、フロッグが銅貨四十枚、幼蛙オタマが銅貨三十枚であった。

 依頼報酬と合計して、全部で銀貨四十枚と銅貨二十枚の収入である。


 レベリングに関しては、雪菜がレベル10、勇人がレベル9、永久がレベル8、啓太がレベル8、正樹がレベル7、シルビィがレベル7、美夜がレベル7、雅がレベル7、いのりがレベル6、真弥がレベル5、南奈がレベル4にまで上昇していた。


 また、待機組と迷宮ダンジョンレベリング、路銀稼ぎ組が交代し、八重子、及び二グループ、三グループ、五グループ、六グループの面子は本日お休みだ。




 三グループ、女子部屋。

 ベッドの上に寝そべる美夜。

 鞄を整理するシルビィに、周囲に道具屋で安売りされていた薬草や小瓶を並べながら、いそいそと料理クックを試すいのり。


 ベッドに腰掛け、足を揺らしながら、歌を口ずさむ雪菜。

 それにより、発動された歌導術ステラトラグディが、雪菜の髪を舞い上げていた。


 昨日の時点でLV3まで上がり、更に自然を操れる度合いの上がったそのスキルをLV4まで上げようと、開いたままのステータスを見付めながら、雪菜は歌う。


 (…………あ)


 丁度、五曲目の一番のサビを歌い切ると同時に、ステータスに文字が浮かぶ。


『熟練度が一定値に達しました。歌導術ステラトラグディLV3から歌導術ステラトラグディLV4にレベルアップしました』


 LV4になった、と雪菜は歌を止める。

 そよ風を吹かせる程度だからか、減り方が遅かった魔力値の残りは今、三分の一程度だ。


 (『歌導術ステラトラグディLV4』、鑑定アプレイザル…………は?)


 雪菜はLVの上がった『歌導術ステラトラグディLV4』に、何が追加されたのかと、鑑定アプレイザルを使う。

 そして、表示されたLV4の項目、説明文に目を瞬かせた。


 (何これ、バグ? スキルエラー? そんな事あるの……?)


 思わず、眉間に皺が寄る。

 彼女の視線の先に映るのは、説明文の代わりのように、引かれた横棒。


 LV4────────


 本来スキルの説明が入る筈の場所には、横棒だけ。

 ただ、それだけだった。

 何の説明もなく、まるで表示エラーを起こしたように。


 雪菜は静かに目を細めた。


 (このままLVを上げたら、変わるんだろうか?)


 じっ、と件のスキルを見付めて、首を傾げる。

 そして、小さく息を吐き出すと、ステータスを閉じ、ばふんと音を立ててベッドに上半身を倒した。


 「…………っ、は……な、に?」


 雪菜が疲れたように目を閉じると、唐突に頭の中に、テレビの砂嵐のようなノイズが走り、困惑の声を洩らす。

 そのノイズのせいか、耳鳴りと頭痛が雪菜を襲い、思わず顔を歪めて頭を押さえた。


 (何、これっ……高、城くん?)


 ノイズ混じりの中に、僅かに声が混じる。

 小さくて聞き取り辛い、ノイズに掻き消されてしまいそうな声。


 聞き知っているけれど、何処か知らない切羽詰まったような叶太の声。

 念話テレパシーだ。


 シルビィが「どうしたんですかッ?! イノリ様?! ミヨ様?! セツナ様?!」と、焦ったような声を上げるが、今の雪菜には聞こえない。


 酷いノイズが響く。

 雪菜は何とか、叶太の声を拾おうと集中する。

 頭痛も、耳鳴りも治らない。


 ノイズの中、何処か震えたその声は、「届……て……か……? やべ……晋也っ……消え…………んせ……怪我、し…………強……かえ……レベル……た……奴、助けっ……頼むっ…………!!!」と言葉を紡いで切れた。


 (っ加鳥くんが消えた? 後は、多分、先生が怪我。強いかえ? レベル高い奴、助けに来てくれ頼む……)


 すうー、と治まってゆく頭痛と耳鳴りに、雪菜は何とか拾えた単語を脳内で繋げる。


 (何で……いや、今は考えてる場合じゃない)


 気合いを入れるように自らの頬を叩くと、雪菜はベッドから身体を起こして、立ち上がる。


 「あ、セツナ様! 大丈夫ですか?!」

 「私は大丈夫。だけど、緊急事態。ごめん、一緒に来て」


 心配そうなシルビィに、雪菜は早口になりながらもそう伝えると、シルビィは「え?」と一瞬戸惑いの表情を浮かべるが、直ぐにそれを振り払い、「はい」と頷く。


 「せつなん! あたしも行く!」

 「栗原さん!」


 雪菜同様に頭痛と耳鳴りに襲われていたであろう二人が、何とか立ち直り、声を上げる。

 が、「駄目。危険。待機」と素早く雪菜が言い放つ。

 二人はきゅっと唇を噛んだ。


 知っている。

 レベルも、実力も足らないと。

 それでも、雪菜が心配だからついて行きたい。


 二人共同じ思いを抱き、拳を握り締める。


 「うん、そうだよね。わかった! ちゃんと、待ってるから。せつなん、気を付けてね」


 美夜が真剣な眼差しで告げると、雪菜は「うん」と小さく頷いた。


 「あの、これ。私、ついて行けないから! 代わりに持っていって!」


 続いて、いのりが製作し、並べていた薬瓶達を雪菜に差し出す。

 雪菜は「ありがと」とそれを受け取り、頭陀袋に詰めると、手早く支度を済ませて部屋を出る。


 シルビィも雪菜に倣い、手早く支度を済ませて続いた。


 いのりに貰った薬瓶は、体力回復薬小ライフミニポーション十五本、解毒剤アンチドーテ五本、とよくわからない何かが一本であった。


 「栗ちゃん!」

 「栗原さん!」


 部屋を出るなり、勇人と永久が雪菜を呼ぶ。

 二人共、叶太の念話テレパシーを聞くなり、雪菜の元へ飛んできたのだ。


 「! 黒井くんは一緒に来て。青瀬くんは美夜の側に居て」


 一瞬、目を丸くしながらも、雪菜はそう告げて足早に歩き出す。

 それに勇人が慌てて「うん~!」と、雪菜の後を追い、永久が「え、あ、分かった!」と戸惑いながらも頷く。


 (戦闘は黒井くん、回復はシルビィさん……青瀬くん達には美夜と緑川さんの側に居て欲しい。なら、後は誰……?)


 雪菜の眉間に皺が刻まれる。


 「栗ちゃん、内のグループは無理。啓太はレベル8だけど、戦闘面はまだ不安。多分、レベル高い奴は各自で向かうからオレ等はさっさと向かうべきだと思う」


 不意に、思考する雪菜の袖を勇人が引っ張ったかと思うと、いつもの間延びした口調を消して、いつになく真剣な表情でそう述べた。


 「……ん、分かった。当面はこの三人で行こう」


 雪菜は小さく頷いて、足を早める。

 シルビィと勇人も頷き返し、それに続く。


 何故、待機組の叶太が迷宮ダンジョンに居るのか、と言う疑問を頭の片隅に追いやって、雪菜はシルビィ、勇人と共に宿屋を飛び出した。




.

叶太より、ヘルプを受信致しました。

これより、救助隊が参ります。

怪我人はあまり動かさず、隊員の到着をお待ちください。



次回更新は明日の19時以降を予定しております!


以下、おまけ。



 ◆◆◆◆◆◆



 in三グループ、女子部屋。



 いのり「ふんふんふーんふん」

 (薬瓶を並べながら鼻歌)


 美夜「ふわあぁー」

 (ベッドに寝そべりながら欠伸)


 シルビィ「……」

 (無言で鞄の整理)


 雪菜「~~」

 (歌で風を操作し、そよ風を起こす)



 イッツ、フリーダム!




.

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