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【連載版】邪神に手駒として召喚されたらしいんですが(仮題)  作者: 龍凪風深
第二章 ダンジョンに潜るらしいんですが
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第30話 受付嬢フユユキは元気があり余っているらしい


 「セツナ様……?」

 「何でもないよ。行こうか」


 きょとり、と自分を見付めるシルビィに、雪菜は何でもないと首を横に振り、また歩き出した。


 遠くから他のグループの戦う声が聞こえた。







 ◆◆◆◆◆◆



 異世界生活、五日目。


 あの後、雪菜達は幼蛙オタマを狩り続け、永久、正樹、美夜、いのりの四人が皆レベル3になった所で八重子と合流し、帰路に着いた。


 八重子や、他のグループも無事にレベルが上がったらしい。

 林檎のように戦闘を拒否したものを除き、だが。


 本日は、修也及び、一グループ、四グループがまた迷宮ダンジョンに向かうらしく、八重子と他のグループはお休みになった。

 それは、雪菜達のグループも例外なく、各々部屋で思い思いの事をして過ごす。


 ただ、魔石をまだ売りに行っていなかった為、雪菜と美夜、それに永久の三人はギルド連盟事務局に赴いていた。


 その道中、雪菜はスキルのLVを上げるべく、色んなものに鑑定アプレイザルを使っていた。


 「あの人、ハルハナさんお取り込み中みたいだな」


 事務局の扉を潜り、真っ直ぐに向かうのは受付カウンター。

 恐らく依頼の受注処理を行うハルハナを見付け、永久が呟く。


 雪菜は小さく頷き、仕方なく隣の受付カウンターに声を掛けた。


 「あの」

 「はい! こちらギルド連盟事務局、受付でございます! ご用件をどうぞ~!」


 橙髪の受付嬢──フユユキがにこりと笑う。


 「魔石の査定と買い取りをお願いします」

 「はい、畏まりました! では、カウンター上に魔石を置いてください! 量が多い場合は恐れ入りますが、入れ物事お願いします!」


 雪菜はフユユキの指示に従い、頭陀袋に入れたまま魔石をカウンターに置く。

 フユユキはそれを受け取ると、付け足すように「あ、えーと、ギルドカードもお願いします! 後、お一人で討伐された訳ではない場合、名前と性別、討伐数を言って頂ければ正確に登録致しますので~」と告げた。


 それに、雪菜は頷き、自分のギルドカードを渡し、シルビィ含むグループの名前、性別、討伐数を言う。

 フユユキはギルドカードを確認し、告げられた名前、性別、討伐数をメモする。


 「では、査定致しますので、あちらに掛けてお待ちください。終わり次第、お呼びしますので!」


 そう言って、フユユキは隅のイスを手で指し示す。

 そして、雪菜達は頷いて、そちらに向かい、イスに腰掛けた。


 「ねーねー、せつなん」

 「何? 美夜」

 「あのね、凄く気になったんだけどね」


 美夜は周囲に聞こえないような、至極小さな声で雪菜に声を掛け、「どうして、異世界で言葉が通じてるんだろう?」と誰もが忘れてしまった疑問を口にした。


 「それは……」


 十中八九、言語翻訳トランスレイションのスキルのお陰だろう。

 雪菜は、そう答え掛けて、言葉を詰まらせた。


 (あれ、待って。何か、可笑しい。言葉が通じるって事は、皆言語翻訳(トランスレイション)のスキルを所持している、て事で……でも、何で皆そんな便利なスキルを持ってる? もしこの世界に飛ばされたのが事故なら、そんなスキル……いや、それを言うならスキル自体保持しているのが可笑しくなる。やはり、私達は何者かに故意に呼び出された? けど、異世界人が総じて特殊スキルを身に付けられるなら、また話は変わるし……)


 誰もが図ったように、触れなかった疑問。

 自分達を呼び出した何者かの存在の有無。

 まるで、端から知っているから、今更話す事でもないと、勝手に脳が判断したような。


 雪菜は開き掛けた口を閉ざし、僅かに眉根を寄せる。


 「言語翻訳トランスレイションのスキルのお陰、て言うのは分かるんだ。あんまり、スキルっぽいスキルじゃないから誰も何も言わないけど、多分、皆持ってるよね?」


 確認するように口にする美夜に雪菜が頷く。

 すると、外野にされ掛けていた永久が、会話に割り込むように「持ってるぞ」と、美夜の頭をチョップした。


 美夜は、「トワちゃん、痛い」とジト目で永久を見る。

 永久は「わざと」とにっこり笑った。


 「それで? 言語翻訳トランスレイションのスキルを覚えてるのが可笑しいって?」

 「うん、まあ、そんな所」

 「確かに、可笑しいかもな」


 曖昧気味に頷く雪菜に、永久は「んー」、と顎に手を添える。


 「ま、もしこの世界に来た異世界人は皆言語翻訳(トランスレイション)のスキルを与えられるんだとしたら、また話は変わるだろうけど」


 永久は声を潜め、「続きは次のクラス代表会議で頼むよ。こんな所で話に夢中になって、聞き耳でも立てられてたらやべぇし」と続ける。

 雪菜は「そうだね」と苦笑して頷き、最初に話を振った美夜は「あ、ごめん……」と肩を落とし、口を結んだ。


 (もし、あの軍人二人の言葉を信じるのなら……私達を召喚したのは邪神の可能性があって、都合よくスキルを保持しているのはそいつが与えたから……?)


 何となく、それがしっくりきてる気がする、と雪菜は思考する。

 そして、それは同時に自分達の足場が酷く不安定である事を示しているようで、不快に思った。


 「え? 受付嬢さん?」


 不意に受付カウンターに視線を遣った美夜が、首を傾げて呟く。

 雪菜と永久はそれを不審に思いながら、美夜の視線を辿り、同様に首を傾げた。


 「セツナ様!!」


 受付カウンターより、慌ただしく出て来たフユユキが近くまで来ると、大きな声で雪菜の名前を呼ぶ。


 そのせいか、ちらほらと周囲から視線が集まり出し、次のフユユキの言葉が決定打のように、局内の略全ての視線が雪菜達に集中した。


 「Fランクで小鬼ゴブリンの群れを討伐したって本当ですかッッ?!!」


 視線を気にする雪菜達に気付いていないのか、驚愕の色を孕んだ声で、フユユキはそう叫んだ。

 局内が僅かにざわつき、ひそひそと何かを話し出す。


 受付業務を熟していたハルハナが、ぎょっと目を剥いてフユユキを見るのに気が付き、雪菜は内心でヘルプを飛ばした。




.


長くなりそうでここで一区切り。

と、思ったらそんなに長くありませんでしたね(笑)


次回、更新も明日の19時以降を予定しております。



以下、おまけ。



 ◆◆◆◆◆◆



 正樹「暇だなぁ」


 いのり「そうだね、今日は特にやる事もないし」


 シルビィ「久々の、お昼寝……」(むにゃむにゃzZ)


 正樹「シルビィさんは爆睡してるし……筋トレでもするか?」


 いのり「…………っえ」


 正樹「よし! 先ずはスクワット百回、腕立て百回、腹筋百回な!」


 いのり「えっ、えっ、えっ…………?!!」


 正樹「で、その後は……走り込みもするか!」(いい笑顔)


 いのり「ひ、ひええぇぇッッ…………?!!」(汗)



.



 

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