第27話 追加でスキル取得
あれから、三グループの女性陣、男性陣共に自室に戻った。
自室に戻った女性陣は、宿屋の備え付けのお風呂にて入浴を済ませると、各々ベッドの中、布団の隙間へ身体を挟み込む。
寝間着は購入していなかった為、シルビィ以外の女子はネクタイ、またはリボンを外し、ボタンを二つ程外したYシャツ一枚の状態での就寝になる。
因みに、シルビィは薄水色のベビードールでの就寝だ。
静かになった室内で、雪菜は枕元に置いた携帯を手に取る。
電波はやはりなく、充電は残り五十パーセントであった。
(時刻が見れるのは便利か。でも、充電どうしよう)
省エネモードで少々暗い画面を見つめ、ぼんやりと思考する。
と、不意に携帯がバイブレーションした。
(え……? メール?)
美夜達の安眠を妨害しては大変だ、と雪菜は慌ててバイブレーションを止め、それの原因であるメールボックスの新着に、首を傾げた。
電波がない筈の携帯に届いたのは、一通のメール。
件名のないメール。
雪菜は息を飲むと、意を決したようにその新着メールを開く。
目に飛び込んできた本文には、『-geghKb:cma@d *dzG@y』と書かれていた。
そして、差出人は────
(私?)
不審なメールの差出人は、自分であった。
けれど、こんなメールを打った記憶など雪菜にはない。
おまけに、不可解なこの文字列は何だ、と眉根を寄せる。
(何かのアドレス? にしては何か可笑しい? 打ち間違い?)
それにしても、電波もないのに、このメールはどうやって届いたんだ、と雪菜は更に首を傾げる。
そして、小さく息を吐くと、意味が分からないとメールを閉じた。
ただ、間違って削除しないようにと、保護するのは忘れずに。
(メールの事は後で考えよう。私が私に送った事なら、いずれ分かる筈。今は明日行こうに備えて……)
雪菜は携帯の電源を落とし、枕元に置き直すと、「ステータスオープン」と小さく呟いて、ステータスを呼び出す。
レベル8
名前:セツナ・クリハラ
種族:人間
性別:女
スキルポイント:6000
体力値:6/22
魔力値:10/290
物攻値:15
魔攻値:48
物防値:12
魔防値:50
俊敏値:57
器用値:17
精神値:37
幸運値:7
称号
『異世界人』(偽証中)
『吟遊詩人』
『歌姫』(偽証中)
スキル
『言語翻訳LV1』
『歌LV10』
『歌導術LV1』 (偽証中)
『鑑定LV2』
『偽証LV2』
幸運値以外、上昇したステータス。
雪菜は既に確認済みだったそれを気にする事なく、続いて「スキル取得」と呟く。
ステータス画面に、追加で表示されるのは現段階で取得出来るスキル一覧。
(スキルポイントはまだ6000あるから、使えるスキルを新たに取得して置きたいな)
雪菜がスキル一覧に合わせて指を滑らせると、画面がスクロールしていく。
(ん? 『世界地図』と『収納魔法』? これ、欲しいな)
表示された二つのスキルに、雪菜は使えそうだと取得する。
『スキルポイント1000を消費して『世界地図』を取得しました』
『スキルポイント3000を消費して『収納魔法』を取得しました』
そうステータス画面に表示されると、スキルポイントが4000消費され、残り2000となった。
(少し残して置いた方がいいか)
雪菜はスキル一覧を閉じると、確認するようにステータスのスキル欄に目を向ける。
(うん、二つともちゃんと取得されてる。……え? あれ、何で世界地図だけLV10なの?)
視線の先、何故かLV10で取得されたスキルに、雪菜は首を傾げると、試しにそのスキルを使用した。
ステータスの隣に現れる、ゲームのような地図画面。
そして、何故このスキルが最初からLV10なのか、雪菜は理解する。
(そう言うことね。だから、LV10)
表示された地図画面は、殆んど真っ黒く塗り潰されていた。
その内、まるでパズルのピースのように、しっかりと表示されているのは、狼の森、ルイーン街、アルルカの森の三ヶ所だけ。
そこから、導き出される答えは──このスキルは、自分の行った場所を表示するスキル。
自分が一度でも足を運ばなければ、埋まる事のない地図スキルだと言う事。
(一度でも行けば記録されるなら、迷子防止になるし、あるかも分からない世界地図を記憶する手間は省けるか)
後、自分の現在地が赤い点として地図上に表示されるのは助かるな、と雪菜は世界地図を閉じた。
次いで、今度は、と『収納魔法LV1』に鑑定を使う。
『収納魔法LV1』
道具を収納出来る、自分専用の亜空間を生み出す魔法。
上限はLVによって異なる。
収納したものは、収納した時と同じ状態が保たれる。
但し、生きた生物は収納出来ない。
LV1、20kgまで収納出来る。
(うん、LV上げたら凄い便利そう)
雪菜はスキルの確認を終えると、ステータスを閉じる。
そして、そろそろ寝ないと明日もきっと早いのだろう、と瞼を下ろした。
やはり今日は疲れたのか、完全に遮断した視界が、雪菜を直ぐに深い深い眠りへ導く。
周囲からは小さく寝息が聞こえていた。
◆◆◆◆◆◆
天井も、壁も、床も、イスも、テーブルも、全て真っ白い部屋。
テーブルの上、置かれたチェス盤にだけ存在する黒以外、無機物は白一色のその部屋で、一人の青年はイスにだらりと腰掛けていた。
「ふふふ、賢いシャンテ・ラファーム。君にはご褒美だ」
床につく程に長たらしいさらさらの銀髪に、赤と青のオッドアイのその青年は、足を組んで笑う。
愉快そうに、新しい玩具を見つけた子供のように。
「神は傲慢だと言う。その通りさ。でなければ、こんな事にはなっていないよ」
青年は呟きながら、盤上のポーンを動かす。
「君達の見ている世界と、僕の見ている世界は果たして同じだろうか?」
青年は徐に足を組み替えると、片手で頬杖を付く。
「白のキングを世界と定義するなら、白のクイーンは何だろうね?」
空いてるもう片手で白のクイーンを掴み、弄ぶと、かたりと白のキングの隣に置いた。
「僕にとって、黒のキングを自分と定義するなら……黒のクイーンは────」
今度手に取ったのは黒のキング。
こつん──黒のキングを盤上から外すと、青年は黒のクイーンを手に取り、それで白のポーンを小突いた。
すると、白のポーンは見る見る内に黒に染まり、そして、最後には真っ黒なポーンになる。
「さあ、盤上で面白可笑しく踊れ。それが僕の最高の暇潰しになる」
青年の口角が、にんまりとつり上がる。
彼の脳内に描かれた物語はまだ始まったばかり。
彼の思考なんて誰も知らない。
彼の企みなんて誰も知らない。
強制的の終焉遊戯。
全ては彼の手の中へ。
鬨が上がるその時まで、世界の平和を祈ればいい。
己が正義だと言うなら、それを掲げて戦え。
悪を倒してみろよ。
どうせ、終わってしまえば、全ては無意味になるけどね、と彼は笑い続ける。
「英雄、君は今も世界を救いたいと願うだろうか?」
青年はふと、我に還ったように何処か遠くを見つめて、そうぽつりと零した。
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投稿完了!
これにて、一章目完結でございます!
主人公は、新たに二つスキルを取得です。
次回はキャラ設定の更新になるります。
更新は明日、19時以降を予定しております。
以下、おまけ。
◆◆◆◆◆◆
青年「僕は誰でしょう?」
……………………。
青年「え? 分からない?」
……………………。
青年「いや、まあ、ね。僕、名前出てないし分かり辛いかも知れないけどさぁ。そこはさ、ほら頑張ってよ!」
……………………。
青年「え……必要性を感じない? そんな~。僕が何者か分からなくてもいいって言うのっ?!」
……………………。
青年「そう……」(しょぼーん)
(とぼとぼ踵を返す。と、思ったら急に振り返り────)
青年「よし、分かった! 今から僕がそちらに言って僕についてみっちり教えよう!」(にこー)
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