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【連載版】邪神に手駒として召喚されたらしいんですが(仮題)  作者: 龍凪風深
第一章 異世界に召喚されたらしいんですが
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第25話 第一回クラス代表会議の結果が出たそうです


 「私の報告はもう済んだ筈なんだけど」


 雪菜がちらりと教諭二人を見ると、八重子が「栗原さんの報告はまだ大雑把にしか聞いてないと思ったんだけど……」と呟き、修也が「細かい所は聞いていないな」と告げる。

 確かに、雪菜はギルドに登録し、依頼を受け、魔物に襲われたとしか話していなかった。


 それにより、五人のグループリーダーから一斉に視線を貰う事となり、雪菜は小さく溜め息を吐く。


 「ギルドの細かい説明は省きます。登録する時に受付の方に聞いてください」


 そう前置きをして、雪菜は語り始める。


 ギルドの登録に、大雑把なギルドのシステム。

 他国に渡る為には、Dランク冒険者以上のギルドカードが必要になる事。


 今日、小軟水体プチスライムの討伐依頼と薬草採取の依頼を受け、その帰りに小鬼ゴブリンに襲われ、逃げた事。

 Aランク冒険者に助けられた事。

 ギルドでの手当てと、報酬の事。


 小鬼ゴブリンの集落が発見され、街が襲われる可能性がある事。

 その為、討伐隊が組まれ、明朝に掃討戦が行われる事。


 また所々、省きながらも雪菜は今日一日の濃い体験話を語った。


 「栗原、一ついいか?」

 「何でしょうか、遠野先生?」

 「お前達のグループは、生き急ぎすぎじゃないか?」 


 はあぁぁ、と深い溜め息を吐き出す修也に、雪菜は苦笑した。

 修也は、「俺が許可したのも悪いのか」と頭を抱える。


 「栗原さん、あんまり危険な事は……」

 「中田先生。この異世界じゃ、何処に居ても危険だと思いますよ?」


 諭すように告げる八重子に、雪菜は苦笑気味に言う。

 八重子は「だとしても、気を付けてね」と心配そうに返し、雪菜は小さく頷いた。


 「話は分かった。ありがとう、栗原さん。では、第二議題、まあ、これは第一の延長になるが……この街での一週間の行動について話そう」

 「あ、待って待って、精ちゃん!」

 「何だ、勇人?」

 「まだ俺の聞きたい事、栗ちゃんに聞いてない~」


 にこっ、と緩く笑った勇人に、精市は首を傾げ、「質問なら早めに頼む」と促した。


 「あんね、俺凄い気になったんだけど。栗ちゃんの今のレベルって何レベ~?」


 勇人が小首を傾げ、当人を除くこの場の全員の視線が雪菜に向く。


 「黙秘権を行使します」

 「いや、これは警察の取り調べでもなければ裁判でもないけど?」


 真顔で即答する雪菜に、貴李は苦笑し、「まあ、黙秘権は人権の内ではあるが」と続ける。

 雪菜はちらりと修也を見た。


 「栗原、もうこの際洗いざらい吐いたらどうだ?」


 自分に向けられた視線に気が付いた修也が、再び溜め息を吐く。


 「洗いざらいと言われても……はぁ。8、レベルは8まで上がったよ」


 殿を務めた際に、討伐した小鬼ゴブリンは十体。

 恐らくレベルが高かったのであろう。


 自室でステータスを見直す雪菜の目に飛び込んできたのは、レベル8の文字。

 今日だけで、一気にレベルが7上がった事になる。


 「く、栗原さん、因みに倒したのはその弱いって言う小軟水体プチスライムだけ?」

 「……小軟水体プチスライム六体と、小鬼ゴブリン十数体。討伐しましたよ」


 八重子が恐る恐ると言った風に問い掛けると、雪菜は肩を竦めて言った。


 「栗原ちゃん、て随分と強かったのね」


 ほう、と感心するように林檎が呟く。

 雪菜は「まあ、護身術程度なら出来るかな。兄が自衛官で色々教わったと言うか、自分の身は守れるようにしとけと言われて叩き込まれたと言うか……そんな所?」と曖昧気味に零す。


 「ああ、そう言うこと」

 「自衛官仕込みとか、そりゃあ栗ちゃん強いよねぇ」


 幸村と勇人が納得したように頷く。


 「栗原、お前……生き急いでるんじゃなく、死に急いでるのか」


 呆れたような表情を浮かべ、修也は本日何度目かの溜め息を吐いた。


 「確かに。討伐隊が組まれるくらいなんだから、小鬼ゴブリンは厄介なんだろう? それを女生徒が討伐するなんて、死に急いでるようにしか見えないね」

 「別に死に急いではいないよ。不足の事態になったから対処しただけ。それに、小鬼ゴブリンが脅威になるのは五体以上の群れからで、一、二体なら男子なら討伐可能な筈」


 貴李の言葉に雪菜が弁解するように告げる。


 「栗原さんが強いのは分かったが……次に進んでも問題ないか?」


 このまま雪菜の話が続きそうな雰囲気を、精市が破るように咳払いする。

 そして、方針についての話し合いを再開しないか、と声を掛けた。


 皆は各々、ああと頷いたり、苦笑したりしながら、それを了承して、精市の話に耳を傾ける。

 また、修也と八重子も「すまないな」「ごめんね?」と見守りの体勢に戻った。


 「栗原さんの話を踏まえた上で、先程言ったこの街の滞在中、一週間で何をするか。また、何をすべきか。それをこれから考えたい」


 引き続き議題は今後の方針だ。

 ただ、内容はこの街で一週間やる事と、限定的である。


 「はいはーい!」

 「勇人」

 「一週間、宿屋でダラダラだらけよ~? めっちゃ寝たーい」

 「却下」


 元気よく挙手した勇人だったが、精市に即答でばっさり切られ、「ガビンッ……!」と声を上げ、項垂れる。


 「俺は生活費と炉銀を稼ぐべきだと思うが?」

 「わたしもそう思うけど……取り敢えず、皆ギルドに行くんでしょう?」

 「そうだね、国を渡るのに必要らしいし。おまけに、僕等が不審に思われずお金を稼ぐ方法は冒険者になる事だろう」

 「一週間、て期日の事もあるしね」


 精市が話を進めるように告げると、それに林檎と幸村、貴李が乗る。


 「では、生活費と炉銀を稼ぐ為にもギルドの登録はするとして……問題は依頼だな」


 お金を稼ぐ為に、ギルドに登録するのはいいが、依頼を選別しなければ危険ではないか。

 精市はそう思考し、頭を捻る。


 「ギルドに登録したては採取系の依頼しか受けられないよ。ああ、小軟水体プチスライム討伐依頼なら受けられるけど」

 「採取、にしても採取するものの見分けに困るわ」

 「そう、そこが問題だね。私のグループは採取は美夜のスキルあってだったし」


 例え、この世界の住民に取って、薬草を見分けられるのが当たり前だったとしても、異世界人で自分達にはそんな事無理な訳で、そうなると各グループに鑑定アプレイザルのスキルが必要になる。


 「んー、薬草と毒消し草の見分けなら、教えられるけど」

 「なら、最初はその採取の依頼を受けてお金を稼げばいいんじゃないかい?」


 考えるように呟く雪菜を見て、幸村が提案を口にする。


 「そうだな。最初はそれでいい。第二の方針はギルドに登録し、お金を稼ぐ事。ああ、付け足すようで悪いが、後、この世界についてを学ぶ。と言う事でいいだろうか?」


 精市がぐるりと見回すと、全員「異議なし」と頷く。


「では、最後。第三の議題、スキル、レベルについて話そうか」


 第一、第二が今後の方針と来て、最後の議題はスキルとレベル。

 この世界で目覚め、いつの間にか身に付けていた不思議な力について。


 「スキルは使いこなせた方がいいだろうね」

 「んー、自衛が出来るに越した事はない」

 「イヤよ。スキルとレベルを上げるには戦わなきゃならないんじゃないの? わたしはお断りだわ」

 「俺は~、うん、だらけたい~」


 スキル、レベルアップをするべきと考えるのは幸村と貴李。

 それを拒否するのが、林檎と勇人。


 精市はこのメンバーの中で、唯一レベルが上がっている雪菜に、最後の意見を聞くように、視線を向けた。


 「私的には、スキルもレベルも上げるべきだと思う。さっき小鬼ゴブリンの話をしたように、この世界には魔物、て言う人間を襲う生物が存在していて、場合によってはそいつ等は街を襲う。その時、自衛が出来ないのはまずい。それに、この街を出るのにも、この国を出るのにも、魔物に出会し、襲われるリスクがある。ギルドの依頼をこなすのだって、注意してても魔物と戦う事になる可能性は零じゃない」


 淡々と語る雪菜に、「確かに」と皆頭を悩ませる。

 林檎は尚も、「イヤよ。そう言うのは男子の仕事でしょう?」と首を横に振った。

 その姿はさながら、我が儘なお姫様のようだ。


 彼女は、綾辻財閥のたった一人の愛娘、お金持ちのご令嬢なのだから、多少我が儘なのも、お姫様のようなのもある意味仕方ないのかもしれない。

 それを許容するかは、別問題として。


 「綾辻さん。誰も女生徒の綾辻さんを一人で戦わせたりはしないよ」


 宥めるように精市が言った。

 林檎はぷくー、とハリセンボンのように頬を膨らます。


 「勇人の意見はただのだらけ病として処理するとして……戦える可能性及び、そう言ったスキルのある者、戦う意思のある者は、スキル、レベルを共に上げる為に魔物を討伐する事、でどうだろう?」


 精市の最終確認に幸村、貴李、雪菜は「異議なし」と答え、林檎と勇人は「わたしが戦わなくていいのならいいわ」「戦う意思のない俺に、だらけ時間が提供されるなら~」と似たような事を言って頷く。


 精市は意欲的でない二人に苦笑しながら、修也と八重子に顔を向け「と、決まりましたが?」と会議結果についての意見を求めた。


 「……ああ、問題ないだろう。俺の考えと大差ない。魔物討伐については生き急ぎたいのか、とツッコミたい所だが、郷に入っては郷に従え、ではないが、この世界で生きる為にそれが必要である事は、栗原の話で大体は理解した。確かに、危険だらけの世界で自衛出来ないのは問題だろう。帰り方を探す為に、何処に行かなければいけないかもまだ分かっていないし、そこが危険でない保証もない。軍人の件もあるしな。だが、無理強いも無理もしないのを大前提として欲しい。全ては、自分を生かす為の行動である事を忘れないで欲しい」


 修也は椅子から立ち上がると、極めて真剣な表情で語った。

 会議結果について、肯定的のようである。


 生徒達と、それに八重子も真剣に修也の話を聞いた。


 「俺の話はこんな所だが……中田先生、何かありますか?」


 突然話を振られ、八重子が「私ですかっ?」と肩を跳ね上げた。


 「遠野先生の後に話す事ってあまりないように感じるけど……。私はこの通り、頼りない教師かもしれない。けど、皆と一緒に帰り方を探す為に尽力したい。ただ、今の貴方達に言って置くことがあるとしたら、仲間と命を大切にしてください。それは、貴方達にとって掛け替えのないものです」


 修也が椅子に座り直し、変わりのように八重子が立ち上がる。

 そして、教師としてこんな可笑しな状況の中でも、それだけは覚えていて欲しい、と願いを込めて言葉を紡ぐ。


 「先生方、ありがとうございます。この会議内容、先生方の言葉、全て代表として選出された俺達が責任をもって伝えます」


 精市がそう二人に会釈し、残り五人もそれに続いた。

 こうして、第一回クラス代表会議は幕を閉じる。




.


以上で会議終了です。

次回は反省会……?


代表

カリスマ→精市

だらけ病→勇人

歌姫→雪菜

お嬢様→林檎

色気→貴李

儚げ→幸村


で、お送りしました(笑)


次回更新も明日、19時以降を予定しております!



以下、おまけ。



 ◆◆◆◆◆◆



 シルビィ「セツナ様は?」


 美夜「んー、お話し合いに行きましたよー」


 シルビィ「お話合い、ですか?」


 美夜「うんうん」


 いのり「多分、この街の滞在期間とかそんな事だと思うよ?」


 シルビィ「そうなんですか!」


 二人「「そうなんです」」




.

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