第24話 第一回グループ代表によるクラス会議開始
雪菜達はハルハナより、小鬼の集落の発見に伴い、Bランク以上の冒険者を召集、討伐隊を結成し、小鬼がこのルイーン街に攻めてくる前に、明朝、小鬼掃討戦を行う事、それに主力としてエレノアとグレンが加わる事、Fランクである、自分達には召集が掛からない事を聞きながら、正樹を診終わった医者の診察を受けた。
正樹は解毒も治療も問題なかったらしく、次いで診て貰った永久、美夜、いのり、シルビィは擦り傷程度の軽傷。
雪菜は小鬼に棍棒で殴られたのが効いていたらしく、太股を打撲、青紫の痣になっており、薬草を塗り込んだ湿布を貼られた。
治療費について、普通は一人、最低銀貨一枚掛かるそうだが、今回はハルハナが問答無用で行った為、「診察費用は私が持ちますので、安心してください。あ、他の方には内緒ですよ?」とウインクと共に告げられ、払わせては貰えなかった。
その後は、ハルハナにお願いして、依頼完了の手続きを行い、薬草採取六人分で銀貨十八枚、小軟水体討伐一人分で銀貨五枚。
加えて、小軟水体の魔石二十個で銀貨六枚(一個、銅貨三十枚)となった。
魔石の換金後は、初の依頼完了後に説明されるらしい事を、説明される。
冒険者がランクアップするには、依頼の達成回数が一定値に達するか、ランクアップの為の依頼を達成しなければいけない事。
また、依頼の達成数や魔物の討伐履歴が、情報共有機に記録される、との事。
そして、雪菜達は医務室の医者等とハルハナにお礼を言うと、丁度上から下りて来たエレノア達にも同様にお礼を述べ、ギルド連盟事務局を後にする。
エレノアに別れ際、雪菜は「今日の一件、小鬼の討伐については落ち着いてから話そう」と耳打ちされていた。
現在の時刻は午後五時過ぎ辺り。
ギルド連盟事務局を後にした雪菜達が捜すのは、勿論修也か八重子である。
まだ気絶している正樹を永久が背負っている事から、今日の一件を問い詰められるのは必至。
一行は少々憂鬱としながら、街中を歩く。
程なくして、中央広場に自分達以外の生徒が集まっているのを発見し、一行は無事に合流する。
当然の事ながら、教諭二人には事情聴取され、大まかに魔物討伐や小鬼について語り、物凄く心配されたと同時にこってりと絞られた。
他の生徒達も、何だ何だと聞いていた。
それから、全員集合し終えた一同は、今日はもう皆宿に戻って休む事となる。
宿屋に戻り、部屋の中で一同は各々の時間を過ごした。
時刻は午後七時を過ぎ、丁度皆が晩ご飯(宿屋で追加料金、銅貨三十枚だった)を食べ終えたであろう時に、叶太より全クラスメイトに伝言が通達された。
内容は、「あー、テステス。こちら叶太。遠野先生から伝言でーす。これより第一回クラス代表会議を行うらしいんで、グループから一名代表を選出し、豚の丸焼き亭にお越しくださーい。以上!」との事である。
各グループは代表を誰にしようかと話し合い、見送った。
豚の丸焼き亭、一室。
修也、八重子、及びグループリーダー六人が集まり、円を描くように椅子に腰掛けて、これから第一回クラス代表会議は開始される。
「では、点呼を取る。一グループリーダー赤坂精市」
「不本意ながら、二グループリーダー黒井勇人~」
「 三グループリーダー栗原雪菜。選出式で私の意味が分からない」
修也、八重子の教諭等が見守る中、精市から始まり点呼を取る。
「四グループリーダー久東貴李。和泉に押し付けられてね?」
アシンメトリーの黒髪に、赤茶色の瞳のそこはかとなく色気の漂う男子生徒──理科研究部所属、久東貴李が苦笑した。
「五グループリーダー 綾辻林檎よ。叶太くんと満瑠がやってくれないから来たの」
くるくると巻かれた赤茶色の短髪に、ぱっちりの暗紫色の瞳の、小柄で可愛らしい女子生徒──美術部所属、 綾辻林檎が不服そうに唇を尖らせる。
「六グループリーダー白石幸村。紗月ちゃんにお願いしたら却下されちゃった」
ふわふわの白髪に、色素の薄い灰色の瞳の儚げな雰囲気の男子生徒──剣道部所属、白石幸村がふふふと笑う。
以上が、グループリーダーである。
因みに、リーダーが不在の際にグループを取り仕切るのは副リーダーであり、副リーダーは一グループ目が小西愛衣、二グループ目が九重雅、三グループ目が青瀬永久、四グループ目が桃智和泉、五グループ目が高城叶太、六グループ目が影山紗月だそうだ。
「これより第一回クラス代表会議を始める。進行役は俺が務めさせてもらう。異議があるものは今聞くが?」
そう言って精市は、五人の顔を見遣る。
特に挙手もなければ、異議の言葉も上がらない。
「では、このまま続けさせて貰う。今回の会議内容、第一の議題は今後の方針についてだ」
「方針? 方針なんて簡単だわ。帰り方を探す、でしょう?」
精市の口にした議題に、林檎が目を瞬かせて、当たり前でしょ、と言いたげな顔で首を傾げる。
「ああ、帰り方を探すのは決まりだろうが、今後の動きについてはまだだろう?」
「そうだね。このままこの街に留まるか、移動するかって事だろう?」
「まあ、そうだ。だが、俺はこの街に留まるのはおすすめしない」
口元に笑みを浮かべて貴李が問うと、精市が頷き意見を述べる。
「ん~、この街じゃ、帰り方見付けられなさそうだもんねぇ」
「おまけに、軍人二人が追ってくる恐れがあるし?」
勇人と雪菜が、精市に同意するような事を告げると、幸村も「僕も街を出た方がいいと思うよ」と頷く。
「なら、いつ出るの?」
「綾辻さんはいつがいいと思う?」
「わたし? わたしはせめて後一週間はここで異世界について学びたいわ」
「そうか、綾辻さんは一週間だな。他はどうだ?」
精市は他に意見は、と問う。
「私も一週間でいいと思うよ。一週間程度なら、例え軍人二人が追って来たとしても、やり過ごす事は可能かと」
「そうだね。直ぐにこの街を立つには、俺達は余りに無知だ」
雪菜と貴李が林檎に同意する。
それに幸村、勇人も頷いた為、第一の方針は一週間後にこの街を立つ事で決まった。
精市が確認するように見守っていた教諭二人を見ると、二人共納得したように頷く。
「では、次の議題……にいく前に、栗原さんの報告を聞こうか」
精市がにこりと微笑む。
それとは対照的に、雪菜はひくりと口元を引きつらせた。
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会議開始!
次回は主人公がお説教される、かも?笑
長くなりそうなので一旦、区切り。
もう直ぐ、一章目終わります!
次回更新も、明日の19時以降を予定しております!
以下、おまけ。
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修也「……はぁ」
八重子「遠野先生……?」
修也「中田先生……」
八重子「大丈夫ですか?」
修也「あまり、大丈夫ではないですね」
八重子「栗原さん達ですか?」
修也「まあ、そんな所ですね。はぁ」
八重子「しっかりしているようで、無茶しがちなんですよね。彼女達……」
二人「「はぁ」」
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