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【連載版】邪神に手駒として召喚されたらしいんですが(仮題)  作者: 龍凪風深
第一章 異世界に召喚されたらしいんですが
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第23話 白金騎士様の剣技は予想以上かもしれない


 「こんな所まで来るとは……余程その命、いらないようだな」


 目を瞬かせながら、自分を見つめる雪菜に何も言わずに、エレノアはそう言いながら、挑発的に笑うと、腰に差していたロングソードを抜き放ち、構える。


 新たに増えた人間に、小鬼ゴブリンが「ゲギャー」と声を上げる。

 エレノアは構わずに地を蹴り、距離を詰め、棍棒を振り下ろして来た小鬼ゴブリンを棍棒ごと横に切り裂き、横薙ぎに振るわれたショートソードを弾き、相手の心臓を貫く。


 次いで襲ってくる小鬼ゴブリンの頭上を軽やかに飛び越え、相手の首を落とし、剣を、棍棒を砕き、残りの小鬼ゴブリンを次々に斬り伏せる。

 血飛沫が舞う中、日の光りを反射してエレノアの金糸がきらきらと美しく輝く。


 軽やかな身のこなしに、一切の攻撃を受け付けない鋭い剣撃の白い鎧の女騎士。

 その姿はまるで、神話の戦乙女ヴァルキュリアのようであった。


 「……強い」


 雪菜の所へ一体たりとも向かわせないように注意しながら、戦うエレノアを見て雪菜はぽつりと呟く。


 流れるような剣捌きで、最後の小鬼ゴブリンを斬り伏せたエレノアが、くるりと雪菜に視線を向けると、駆け寄る。


 「セツナ、怪我はッ?! 大丈夫か?!」

 「あ、え、えぇ、お陰さまで……」

 「そ、そうか……! 良かった」


 焦った様子だったエレノアに、雪菜が自分は大丈夫だとアピールすると、エレノアは目に見えて安堵した。


 「エレノアさん、あの。他に小鬼ゴブリンの群れを見ませんでしたか?」

 「ああ、シルビィ達を追い掛けていた群れか? それなら安心しろ、今頃私の相棒が片付けているだろう」


 五人の逃げた方向から来たエレノアに、雪菜が問い掛けると、エレノアは雪菜を安心させるように微笑む。

 エレノアの言葉を聞いた雪菜は、ほっと息を付いた。


 「エレノアさん、ありがとうございました。また助けられてしまいましたね」

 「ああ、助けられて良かった。シルビィに、セツナが殿として残ったと聞いて肝が冷えたんだぞ」

 「すみません」

 「まあ、その判断があってこそ……いや、今はいいか。ああ、そうだ、礼を言うならばハルハナ嬢に言うといい」

 「ハルハナさん?」

 「ああ、水色髪のギルド連盟事務局の受付嬢だ」


 エレノアの言葉に首を傾げる雪菜に、そうエレノアは告げる。

 雪菜達の救助依頼を迅速にエレノアに頼んだのはハルハナである、と。


 「そう、だったんですか。でも、何故私達の救助依頼なんて……あの小鬼ゴブリンと関係が?」

 「ああ、そうだ。全てはギルドに戻ってから話そう。だから、一先ず帰らないか?」


 雪菜達の受注した依頼は小軟水体プチスライム討伐と薬草採取であり、救助依頼を出される要素はない。

 そもそも、冒険者に対して救助依頼は出ないのが普通。


 ならば、原因は小鬼ゴブリンであろうか、と雪菜はエレノアを見る。

 エレノアは小さく頷いて、そう言った。

 雪菜は素直にそれに従い、エレノアと共に街へ帰還する事となる。






 ◆◆◆◆◆◆




 あれから、エレノアが火球ファイヤーボール小鬼ゴブリンの死体を焼き払い、地面に転がった魔石を回収した二人は、街に帰還するべく歩いた。

 その途中、五人とエレノアの相棒と無事に合流を果たす。


 その際、涙で顔をくしゃりと歪めたいのりに抱き着かれ「い、生ぎでだあぁ……!!」と本気泣きされたり、それに加わるように美夜とシルビィが「無事で良かったッ!」といのりごと雪菜を抱き締めたり、永久に「栗原さん、ちょっと後で大事な話があるわ」と凄まれたりとあったが、全員無事のようだった。


 エレノアの相棒、黒いコートを身に纏い、無精髭を生やした黒髪オールバックに、焦げ茶色の瞳をした、顔に傷のある中年男性──グレン・ガンドビルが十数体の小鬼ゴブリンを一人で片付けたらしい。

 彼との軽い挨拶も終え、雪菜達は歩を再開させる。

 道中グレンとエレノアの話を聞きながら。


 グレンとエレノアは共に、Aランクの冒険者であり、ギルド白き剣(ホワイトブレード)の主要メンバー。

 グレンは狙撃手スナイパーであり、エレノアは騎士ナイトである。

 そんな話だ。


 グレンは寡黙だった。

 その為、殆んど話していたのはエレノアである。


 ギルドとギルド連盟は同じものではないのか、と話の途中で目を回す美夜の肩を、雪菜が慰めるように緩く叩いていた。


 エレノア達にばかり話させるも悪いような気がして、シルビィが所謂付与術士(エンチャンター)に近いものであり、雪菜が吟遊詩人バードである事、他の面子に決まった職業ジョブらしきものはない事を、一行は語るが、それ以上を語る事はなかった。


 寡黙なグレンの代わりのように、エレノアはよく喋った。

 初めての魔物討伐で死ぬ目に合った雪菜達を気遣って、雰囲気を明るく保ちたかったのかもしれない。


 エレノアの話は自分達の職業ジョブから離れると、アルルカの森には妖精フェアリーの隠れ里があるらしいだとか、火を起こす魔道具マジックアイテムがない時、小さな火の魔石を薪の上で砕くと(この時、注意しないと火傷するらしい)火の魔法が使えなくとも、簡単に焚き火が出来るだとか、水の魔石から取り出した水は飲める(飲み過ぎると腹痛を起こす)だとか、そんな事を語っていた。


 後は、隣国のプリシティア王国との境にあるフリジアット渓谷に氷結の王コンジェラシオン・ロワが眠っているだとか、ここから遠く離れた魔族の国の王、所謂魔王が放浪癖があるらしく宰相は胃痛持ちだとか、最近新しい宗教が出来たとか。


 余談だが、グレンに助けられてすぐ、永久が「グレンさんってさ、ヤの付く自由業の人だったりしないよな」と勘ぐったり、シルビィがその呟きに「?」を飛ばたり、いのりが怯えていたりしたらしいが、それはグレンの為にも話すべきではないだろう。


 一行はエレノアの良い情報なのか、よく分からない話と共に無事に街への帰還を果たした。

 街道をグレンとエレノアに連れられ、目指すのはギルド連盟事務局。




 他のクラスメイト等と遭遇する事なく辿り着いた局内に入ると、そわそわと室内を徘徊していたらしい受付嬢、ハルハナが慌てて駆け寄り、周囲に居た冒険者達は皆、雪菜達に視線を向けた。


 「ご無事で何よりです! ああ、エレノア様、グレン様! ありがとうございます!」


 雪菜達の安否を確認するように六人を見てから、ハルハナはエレノアとグレンに頭を下げた。

 それに、エレノアは「いや、冒険者として依頼を完遂したまでだ」と苦笑する。


 「ふふふ、いつも助かりますエレノア様。では、エレノア様、グレン様はお手数ですが四階の支部長室へお願い致します。セツナ様達は、こちら医務室へ。今回の件をご説明させて頂きます」


 ハルハナは小さく微笑すると、直ぐに切り替えるように、エレノア達には四階に、居心地が悪そうな雪菜達には医務室に行くように案内する。


 「また後で」と手を振ったエレノアと、無言で階段を上って行くグレンに一行は手を振り、ハルハナに案内されるまま、一階の医務室へ入った。

 扉が閉ざされるまで、様々な視線が雪菜達に降り注いでいた。


 「どうぞ、マサキ様はこちらのベッドへ。皆様はこちらの椅子にお掛け下さい」


 ハルハナに促されるまま、永久が正樹をベッドに下ろし、残りの五人は半円状に並べられた木の椅子に座った。

 ハルハナは医務室に居た白衣のお爺さんと、その助手らしい年若い少女に正樹を任せ、雪菜達の向かいに腰掛ける。


 「皆様、今回の件について知りたい事がいっぱいある事と存じますが、端的に申しますとアルルカの森にて小鬼ゴブリンの集落が発見されました」


 一呼吸置いて、ハルハナが真剣な表情で話し出す。

 小鬼ゴブリンの集落、その単語が出た瞬間、シルビィが「え?!」と目を丸くする。

 ハルハナは続けた。


 「貴方方がアルルカの森に向かった後、傷だらけのCランク冒険者が駆け込んできまして、小鬼ゴブリンの集落がある事が発覚致しました。それにより、ギルド連盟は本日アルルカの森へ依頼を追考しに行った唯一の冒険者パーティーである貴方方の救助依頼を発注。受注して下さったのがエレノア様達になります」

 「え、あの、ギルド連盟が何故冒険者の救助依頼を? 依頼の受注管理に付いてはギルド連盟に責任が発生したとしても、向かった先、冒険者の行動に置ける生命管理については自己責任になるのでは?」


 シルビィが困惑したような表情で見る。


 例えば、行った先で突然落石が起きたとして、それは落石の危険を察知出来ず、忠告しなかったものの責任になるだろうか。

 例えば、行った先で突然地震に見舞われたとして、それは地震が起きる事を知らず、地震を予測出来ず、注意勧告をしなかったものの責任になるだろうか。

 答えは否だ。


 起きていない事を忠告する事は出来ない。

 事前に予兆があるならば別だが。


 行った先で起きた不足の事態については自己責任の元、自分で対処する事。

 それはギルドの暗黙のルールの筈である。

 魔物に置ける被害は、災害と大差ない扱いなのだ。


 今回の小鬼ゴブリンの集落だって、予兆もなく唐突な出来事であった。


 ハルハナは、にこりと微笑む。


 「はい。冒険者、ギルドの大原則は自由。それ故の自己責任。けれど、その自由は規則や秩序あってのもの。ギルド連盟事務局側の規則にあるのです。親族、知人、友人より救援要請を依頼された場合、Dランク以上の冒険者であっても救助の依頼を発注する事。また、Eランク、Fランクの冒険者が不足の事態により生命の危機に曝されている場合、ギルド連盟は速やかに救助依頼を発注する事。その負担は前者を要請者とし、後者をギルドとする事。以上に則り、当ギルド連盟はシルビィ様達の救助依頼を発注させて頂きました」


 ハルハナが淡々と語り、最後に付け足すように「受付としては冒険者の方々を死なせたくはありませんから、依頼を発注出来ない時も、最大限の努力はさせて頂きます。ただ、Dランク以上からはギルド連盟が冒険者の救助単体の依頼を出す事が九十九パーセント出来なくなりますので、油断されませんようにお願い致します」と告げた。


 (大丈夫。分かってる。自己責任なんて、当たり前で……)


 改めて告げられた自己責任と言う言葉が、酷く重さを増したようで、雪菜は小さく息を吐いた。




.


やっと、主人公達がアルルカの森から街へと帰還しました!

エレノアさん達は、これから忙しくなりますが、Fランクの主人公達は駆り出されないのでそろそろほのぼの出来たらいいな、と言う願望(笑)


次回、更新もまた明日の19時以降を予定しております!



以下、おまけ。



 ◆◆◆◆◆◆



 シルビィの第一印象


 雪菜「マントWithマント、マント、マント」


 美夜「え、人形系美少女?」(笑)


 叶太「リアル兎耳ビスクドール系美少女」(真顔)


 精市「栗原さんが連れてきた兎耳獣人の少女かと」


 八重子「シルビィさん? 可愛い女の子。でも、兎耳は本物?」


 歩夢「うさ耳美少女!」




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