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【連載版】邪神に手駒として召喚されたらしいんですが(仮題)  作者: 龍凪風深
第一章 異世界に召喚されたらしいんですが
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閑話 駆け込み冒険者と特別依頼の発注


 丁度、雪菜達が依頼追考の為に、アルルカの森にて小軟水体プチスライムを討伐していた頃。

 とある一人のCランク冒険者の男が、ギルド連盟事務局に駆け込んできた。


 「は、は、ははは、ハルハナさんッッ!!!」


 ばん! ────荒々しく扉が開かれたかと思うと、そこから現れた土埃などで薄汚れた男が、受付カウンターに向かう。

 局内に居た冒険者達は、「なんだなんだ?」と興味深そうに視線を送る。


 よく見ると、男にはあちこち切り傷があり、ぽたぽたと腕や足から血が垂れていた。


 「ど、どうしたのですか? そんな……ボロボロで……」


 水色髪の受付嬢──ハルハナが痛ましそうに男を見遣り、問い掛けるのに、男は真っ青な顔で叫ぶ。


 「ご、小鬼ゴブリンだ!! 小鬼ゴブリンが、集落をッッ……!!! アルルカの森にッッ!!!?」


 男の叫び声に、局内が一瞬で水を打ったように静まり返る。

 局内の全ての視線が男だけに、注がれた。


 「?! フユユキ!! 至急支部長にこの事を報告!! 小鬼ゴブリン集落、討伐の依頼を発注します!!」


 ハルハナも目を見開き、一瞬固まるが、そこはプロ、直ぐ様持ち直し、隣のカウンターの長い橙髪の受付嬢──フユユキに指示を飛ばす。


 急に飛んできた指示に、フユユキは「はいぃぃ!! 先輩ッッ!!」と上階へと駆け出した。


 (小鬼ゴブリンの集落。今回の発見は早い? 遅い? 早ければ数は居れど、強い個体は居ない筈。遅ければ、強い個体が生まれている可能性がある……っあ!!!)


 ハルハナはカウンターから出ると、眉間に皺を刻み、冒険者の男を医務室へ通しながら、思考を巡らす。

 そして、はた、と思い出した。


 ああ、つい先程、入ったばかりの新規冒険者達が依頼の受注を……あの人達は今、アルルカの森にッ……!!


 思い出された事柄に、ハルハナの顔が青褪めていく。


 Cランク、Dランクの冒険者が小鬼ゴブリン単体と遭遇した際の生存率を九十五パーセントとし、小鬼ゴブリンの群れと遭遇した際の生存率を三十五パーセントとするなら、Eランク、Fランクの冒険者の場合の生存率は──前者が三十パーセント、後者が十パーセントである。


 何故、ここまで下がるかと言うと、Cランク、Dランクの冒険者には魔物討伐の依頼が複数あるのに対して、Eランク、Fランク冒険者には魔物討伐の依頼は小軟水体プチスライム討伐のみ。

 よって、Eランク、Fランクの冒険者はCランク、Dランクの冒険者より、圧倒的に実戦経験が少ない。


 それに加えて、今回問題となるFランク冒険者は登録し立ての冒険者。

 恐らく、生存率は更に下回るだろう事が予測された。


 何せ、彼等、彼女等はハルハナが依頼の受注処理を行う際、確かに、“今回が初めての魔物討伐だ”と話していたのだ。


 ハルハナは医務室の者に、冒険者の男を任せると、慌ててカウンターに戻る。


 「だ、誰か……!! 今ここにAランク以上の冒険者の方はいらっしゃいませんかッッ?!!」


 ああ、駄目だ。

 あんな若い子達を死なせるなんて。


 ハルハナは焦ったように声を張り上げた。

 その声は僅かに震えていて、何処か鬼気迫るものがあった。


 早く、早く、誰かに救助の依頼を頼まなければ、と。


 けれど、その声に反応してくれる者は居ない。

 この場には、Bランク以下の冒険者しか居なかったのだ。


 ハルハナの顔が見る見る内に、絶望に染まっていく。

 そして、ハルハナは思い出したように、最後の手段のように、名指しでとあるAランク冒険者を呼んだ。


 「!! え、エレノア様! エレノア様はいらっしゃいませんかッ?!」


 白金騎士、エレノア。

 ハルハナの最終手段は、騎士道を貫く優しい女騎士に依頼を託す事だった。


 ハルハナは続けて、「エレノア様の所在を知りませんか?!」と声を張り上げる。

 けれど、誰もが首を横に振った。

 エレノアの所在など、誰も知らなかったからだ。


 (討伐隊を組むなら、Bランクの冒険者でも小鬼ゴブリンの群れを低リスクで狩りに行ける。けど、討伐隊を募る時間はない。だからと言って、不特定多数の敵に、Bランクの冒険者を数名派遣しても怪我人を増やす可能性が高い)


 ハルハナは俯き、ぎゅっと両の拳を握り締め、唇を噛んだ。


 どうする? どうする?

 ぐるぐると、その言葉だけが頭の中を巡る。


 殺伐としたその空気の中、それを破るように扉が開かれた。

 この場の者達の視線が一斉に、扉を開けた者に向く。


 「……そんなに見つめられると穴が空きそうなんだが?」


 件の女騎士、エレノアは何故こうも自分に視線が向いているのか分からずに、首を傾げる。

 ハルハナは目を丸くすると、慌ててカウンターから飛び出し、エレノアに駆け寄った。


 「エレノア様! 至急、受注して頂きたい依頼がございます!」


 声を荒げ、そう告げてくるハルハナにエレノアは僅かに眉根を寄せた。


 ギルド連盟から直接依頼の話を持ち掛けられる時は、いつだって急を要するものや、人命の掛かっているものが多いからだ。

 この場の空気とハルハナの様子から、今回も例外なく、そのどちらかだろうと、エレノアは思考する。


 「依頼内容を聞かせて貰えるか? ハルハナ嬢」

 「はい!」


 エレノアの問いに頷くと、ハルハナは依頼の内容を話し始めた。


 Cランクの冒険者が小鬼ゴブリンに襲われた事。

 その冒険者が、アルルカの森に小鬼ゴブリンの集落を発見した事。

 今、アルルカの森には新人の冒険者達が居るだろう事。


 そして、これより小鬼ゴブリンの掃討依頼が発注され、小鬼ゴブリン討伐隊が組まれるだろ事と、その間に先駆けとして、新人冒険者達の救助に向かって欲しい事。


 「恐らく、小鬼ゴブリン討伐隊を結成している間に、彼女達は殺されてしまうでしょう。支部長に至急、追加の依頼発注をお願いするつもりです。受けて頂けませんか?」

 「ああ、問題ない。新人をみすみす死なせる訳にはいかないからな。その依頼、私とグレンが受けよう」

 「ありがとうございます!」


 引き受けると頷いたエレノアに、ハルハナがお礼の言葉を述べると、エレノアは「依頼の受注処理は任せた、ハルハナ嬢。私はグレンに声を掛けてアルルカの森へ向かう。支部長にもよろしく頼む」と告げ、踵を返す。


 「はい、エレノア様。よろしくお願い致します!」


 ハルハナはそう言って深々と頭を下げると、エレノアの華奢だが何処か頼もしい背中を見送った。




.




 

エレノアさんが行動開始!

主人公達の救出は間に合うのか、はたまた主人公達が自力で助かるのかは、次回以降で!


閑話につき、おまけはお休みです。


次回、更新は夜の7時を予定しております!



.

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