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【連載版】邪神に手駒として召喚されたらしいんですが(仮題)  作者: 龍凪風深
第一章 異世界に召喚されたらしいんですが
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第18話 プチスライムを狩りに行こう


 ギルドカードを無事に手に入れた六人は、依頼発注掲示板の前へ行き、依頼を選ぶ。

 Fランク冒険者の受注出来る依頼は殆んど採取である。


 「採取の見分けは、美夜の鑑定アプレイザルに頼るとして……取り敢えず、薬草採取の依頼を全員受けるか? 複数人受注可、らしいし?」

 「うん、いいんじゃないかな」


 永久が掲示板の、ありふれた依頼に目を止め、皆に同意を求める。

 先ず、いのりがそう肯定し、続いて他のメンバーも頷いた。


 そして、正樹が「後、なんか受けるのか?」と問い、「んー」と、また皆で掲示板を見つめる。


 (あの時の軍人二人は私達を邪神の手駒と呼び……抹殺、或いは捕縛すると言っていた。軍人二人は強い。恐らくレベルが高く、ステータスは私達とは比べ物にならないくらい高いだろう。今の私達では……)


 対峙する事はおろか、逃げる事も叶わない。

 ならば、対処として何をするべきか。

 自衛の為には、レベルを上げ、スキルを自由に使用可能にするべきではないか?


 雪菜はそう思考して、Fランク唯一の魔物討伐依頼──小軟水体プチスライム二十体討伐の依頼を見つめた。


 「私は小軟水体プチスライム討伐の依頼を受けるよ」

 「は、ちょ……せつなん?!」


 不意に口を開いた雪菜に、美夜が目を丸くして、驚愕の声を上げる。

 次いで、いのりと正樹が、美夜の心の声を代弁するように、「討伐依頼なんて危険じゃない?!」と雪菜に詰め寄った。


 シルビィが居る手前、どうやって説得しようか、と雪菜は首を捻る。


 「? そんなに焦らずとも、小軟水体プチスライムならレベル1の冒険者でも倒せますよ?」



 頭を悩ませる雪菜を救ったのは意外にもシルビィで、あっけらかんとして、五人にそう告げる。

 五人は一瞬きょとんとした後に、「え?」と零す。


 「確かに軟水体スライム補食プリデイション溶解ディサルーシャンのスキルは厄介かもしれませんが、小軟水体プチスライムはレベル、スキルの熟練度、共に低いですから、セツナ様なら勝てるかと」


 雪菜に視線を向けた後、シルビィがにこりと微笑み解説する。


 「そうなんですか……?!」


 美夜が目を瞬かせる。

 次いで、正樹、永久、いのりの三人が「まあ、それなら」と零す。


 「じゃあ、問題ないね。依頼、受注するよ」


 皆の妥協するような反応を確認し、雪菜はすたすた、と受付カウンターに向かう。

 その後を、「即決?!」「早?!」と四人が追い掛け、シルビィも頭に「?」を浮かべつつも、それに続いた。




 ◆◆◆◆◆◆



 依頼について。

 受注した依頼を破棄する場合は、キャンセル料として報酬額の半分を支払う事となる。


 魔物は全て、体内に魔石を保有している為、討伐依頼の際は、討伐した証として、魔石をカウンターに提示する事。


 達成確認が取れた後は、魔石の売買の有無を問い、是であるならば、受付にて鑑定具を用いて査定の後、買い取る。

 勿論、素材の買い取りも歓迎だ。


 尚、命に関わる依頼を受注、または依頼の追考中の怪我や生命の危機に関して、例え死んでしまったとしてもギルド連盟は一切責任を負わず、全ては自己責任とする(但し、場合によっては例外が生じる)。


 以上、上記の事柄は、冒険者が初めて依頼を受注した際にギルド連盟事務局の受付より説明されるものである。




 あれから、薬草採取六人分(三束程で一人分である)と小軟水体プチスライム討伐一人分の依頼を受けた六人は、武器屋にて人数分のダガー、ダガーを入れておくホルダー、体力回復薬小ライフミニポーション魔力回復薬小マジックミニポーション、それに薬草を入れる為の籠と魔石を入れる為の頭陀袋ずたぶくろを計六個ずつ購入し、街を出る。


 薬草があり、小軟水体プチスライムが生息しているらしい場所への行き方は、シルビィが知っているそうで、「わたくしがご案内致しましょうか?」との提案により、シルビィ案内の元、ルイーン街から少し歩いた先──アルルカの森に来ていた。




 「鑑定アプレイザルー! 鑑定アプレイザルー!」


 美夜がそこらに生えた草に向かって、片っ端からスキルを使用していく。

 美夜の視界に映り込むのは数多の文字。

 雑草、雑草、茂み、雑草、茂み、雑草、雑草、茂み、薬草、雑草、雑草、雑草、雑草、茂み、毒消し草。


 草の羅列に、一瞬だけくらりと目眩を覚えながらも、視界を掠めた薬草の文字に「あったよー!」と摘んでいく。

 ついでのように、毒消し草も。


 「茶越さん、凄い。もう籠が一杯……」

 「鑑定アプレイザルって凄いんだなぁ」


 アルルカの森の浅部を散策しながら、美夜の活躍により、次々と溜まる籠の中身に、いのりと正樹が感嘆の声を零す。

 美夜は「えへへ、もっと褒めてもいいんだよ?」と

、得意気に笑った。


 「それくらいで六束ないか?」


 ふと、永久が緑色の敷き詰まった籠を覗き、告げる。

 雪菜も同じ事を思ったらしく、「もう六束越えてると思うよ」と声を掛けた。


 「確かに! ちょっと張り切り過ぎちゃったかな?」

 「ふふふ、初依頼ですからね? 張り切っちゃうのは仕方ないかと」


 あはは、と苦笑する美夜に、シルビィが柔らかく微笑む。


 「じゃあ、次。小軟水体プチスライム二十体か……もし、戦うの嫌だったら森の外で待ってて? 私が勝手に受注した依頼だから」


 雪菜は改めて、戦闘を行うか否か、皆に逃げ道を作るように言う。


 が、「せつなん一人に任すとか有り得ない! 一人じゃ危険でしょ?!」と声を上げた美夜を皮切りに、永久が「美夜に激しく同意」と言い、いのりが「栗原さんだけになんて、そんな……」と首を振り、正樹が「そーそ、女の子だけに戦わせたら俺等の居る意味がないよなぁ!」と頷く。


 次いでシルビィも「魔物討伐の経験はありませんが、わたくしもお供致します!」と声を上げた。


 「ん、分かった。ちゃんと、気を付けてね」


 雪菜は五人を一瞥いちべつした後、警戒するように、森の中へ歩を進めた。

 五人は笑顔で頷き、雪菜の後を追う。


 そうして、雪菜達は浅部にて、小軟水体プチスライムを捜索した。


 「あ! 発見です! セツナ様!」


 シルビィが右側に、子犬程度の大きさで橙色の、見た目は現代産無機物スライムのような軟体生物──小軟水体プチスライム 二体を発見し、声を上げる。


 雪菜は素早く腰元のホルダーからダガーを引き抜く。

 隣では、美夜が鑑定アプレイザルのスキルを使用し、対象のステータスを口頭で告げた。



 レベル1

 名前:名無

 種族:小軟水体プチスライム

 性別:不明


 スキルポイント:10


 体力値:10/10

 魔力値:3/3

 物攻値:6

 魔攻値:4

 物防値:8

 魔防値:4

 俊敏値:3

 器用値:4

 精神値:2

 幸運値:2



 「っは!」


 美夜にステータスを聞き、大丈夫だろう、と判断した雪菜が五人に「やるよ」と声を掛け、地を蹴る。


 永久がコンマ数秒遅れて、「お、おう!」とダガーを抜いて駆け出すと、シルビィが「あ、わっ……! 勇ましい腕(ブレイヴアーム)!」と慌てて、物攻値上昇のスキルを詠唱し、雪菜と永久の二人に掛けた。


 (感触は、現代産と同じ感じ? うん、大丈夫。いける……!)


 雪菜はダガーを逆手に持ち、小軟水体プチスライムに向けて降り下ろす。

 ダガーの切っ先が水のような軟体に、ずぶりと音を立てて突き刺さる。


 小軟水体プチスライムが反撃のように、その軟体をくねらせ、雪菜に向けて身体を伸ばすが、雪菜はそれも素早く切り落とし、再びダガーを深く突き刺す。

 二度、三度、繰り返した所で、小軟水体プチスライムは力尽きたように、どろりと地面に溶けて消えた。


 湿った地面と、小石程度のくすんだ橙色の魔石を残して。


 「一体目……」


 雪菜は小さく呟くと、頭陀袋に魔石を突っ込む。


 ──最初の討伐は小軟水体プチスライムで良かった。

 生物を殺している筈なのに、そんな感触も感覚もない。


 死体の生々しさも、悪臭もないから、少なくとも吐き気に襲われている隙に殺される、なんて馬鹿みたいな展開にはならない、と思う。

 それに、初めてならやり易い相手がいい。


 雪菜はそう思考しながら、「うし、終わったぞー」と手に入れた魔石を握り、手を振る永久を見つめ、小さく息を吐く。


 「栗原さんも青瀬くんも凄い」

 「流石はせつなん!」

 「トワ……はいいとして、栗原さん意外と強いんだな」


 いのり、美夜、正樹が拍手しながら、賛辞を送る。

 次いで、シルビィが「やりましたね!」と微笑む。


 「俺ってば、やる時はやる奴だからさ! シルビィさんも支援ありがとうございます」

 「青瀬くん、あんまり調子に乗ると後で痛い目見るよ。シルビィさん、支援ありがとうございます。ダガーが振るい易かったです」

 「い、いえ、そんな……!」


 ダガーをホルダーに戻しながら、お礼を言う永久と雪菜に、シルビィは取れんばかりに両手と首を左右に振る。


 「それにしても……スライムってさ、もっとこう、ね? 白目と黒目付いててにやーて感じの口があってさ、青色で頭のてっぺんが角みたいになってる奴じゃないんだな」

 「? 青い軟水体スライムは存在しますがそんな目と口の付いたものは……分かりません」


 ふむ、と思案するように、顎に手を添えながら呟いた正樹に、シルビィが首を傾げながらも、自分の知る情報を告げる。

 隣で永久が「現実に基ゲームを持ち出すなよ」とツッコむ。


 「ゲーム、ですか?」

 「な、何でもないですよー?」

 「さ、さあ、行きましょう?!」


 きょとんと更に首を傾げたシルビィに、美夜といのりが、誤魔化すようにその背を押しながら、歩き出す。

 そうして、一行は小軟水体プチスライム討伐を開始した。




.


プチスライム討伐です!

初依頼と言えばスライムですね(笑)


次回、更新は日付が変わった頃に投稿を予定しております!


以下、おまけ。



 ◆◆◆◆◆◆



 正樹「うーん、やっぱりスライムにはあの顔がなくちゃなぁ……」


 永久「まだ言うか」


 正樹「まだ言うさ。スライムと言えば……!」


 永久「もういいわ!」


 正樹「…………」(しょぼーん)




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