第17話 ギルド連盟に加入してみよう
ごめんなさい、寝落ちしてました!
お待たせしました、17話目です。
「皆、集まったな」
中央広場の端、行き交う人混みに紛れるように三十二人と一人は無事に集合していた。
グループごとに固まった彼等、彼女等は、話し始めた修也の言葉に耳を傾ける。
補足すると、シルビィは目深にフードを被り直しており、一応と言った感じで話を聞いていた。
「今日は必要なものの買い出しと、街の散策と言う事で自由行動とする。あまり大人数で固まると悪目立ちするから気を付けろよ。引率は俺と中田先生で、心配なグループに付く事にする。では、節度を持って行動するように。以上」
シルビィが居る以上、下手な会話をする訳にはいかず、修也がそう話を切り上げる。
それと同時に、シルビィを除く皆の頭に、叶太から念話で「今日やる事に、情報収集も加えてなー?」と補足が入った。
皆、「了解」と返し、行動を始める。
雪菜も早く動こうと、永久にシルビィを任せてから、修也が「一、二グループは大丈夫だとして、後は……」と、思案している所に声を掛けた。
「遠野先生」
「何だ、栗原?」
「お願いがあります」
「お願い? 聞いてやれるかはものによるが?」
「私達にギルドに行く許可が欲しいんです」
雪菜のお願いを聞いた修也が、「ギルド?」と首を捻るも、雪菜は許可を得るべく続ける。
「ギルドに入れば、国境を渡るのに必要なものを貰えますし、仕事を請け負い、お金を稼ぐ事も出来ます。なので、私達が行ってきてもいいですか? その結果はしっかり報告しますから」
淡々と語る雪菜に、修也は難しい表情を浮かべた。
「分かった。俺が一緒について行く。それなら許可をしよう」
「駄目です」
「何故?」
「遠野先生は分かっている筈です。他の面子が中田先生一人だけでは手に負えない可能性があるかと。特に加鳥くん。彼は異世界と、浮かれている節があります」
同行しよう、と持ち掛けた修也の言葉を、雪菜はばっさりと切り捨て、追い討ちのように付いて来れないような意見を出す。
「そうだな。だが、それならお前達を訳の分からない場所に行かせる訳にはいかない」
「これは必要な事です、絶対に。金銭が底を付いてから職を探すのでは遅いし、だからと言って全員の仕事を見付けられる可能性は低いかと思いますよ? それに、帰り方を探すに当たり、何れ他国へ行く事になった時、既にその方法を取得していた方が楽になります」
「ああ。だから、俺か……中田先生がついて行く。今日は無理だが、明日では駄目なのか?」
「何れは全員向かう事になると思うので、私達が先駆者として行きたいんです。スキルを傲っている訳ではありませんが、私は身を守るスキルを会得していますし……仮に危険に遭遇した際は、他のグループより安全性が高いと思われます」
ギルドがもし、自分の知識通りのものならば、必ず遠野先生は加入を止めるだろう。
そう思考した雪菜は、何とか修也を説き伏せようと弁を労する。
修也は今だ難しい顔で、眉間に皺を刻む。
「早急すぎないか?」
「いいえ、早急なくらいが丁度いいんです」
「ギルドが何か分かっているのか?」
「私の想像が正しければ、はいですが、間違っていれば、いいえです」
全く折れる様子のない雪菜に、修也が小さく溜め息を吐く。
「……どうしたら、諦めてくれる?」
「手足が折れて動けなくなったら諦めますよ?」
「はぁ……本当、このクラスは問題児だらけだな」
「今に始まった事じゃありません」
雪菜がくすくすと笑い、修也に告げる。
修也は、遂に「お前は入学当初から変わらないな。降参」、と苦笑しながら両手を緩く上げて、「自グループ、及びギルドの偵察は任せたぞ、栗原」と肩に手を置いた。
雪菜は「はい」と頷き、自分のグループへと戻って行く。
修也はその背中を心配そうに見つめていた。
◆◆◆◆◆◆
修也の説得を無事に成功させた雪菜は、シルビィの案内の元、グループ全員でギルド連盟事務局へと向かった。
目的地は、時計塔の直ぐ隣。
『ギルド連盟事務局』、と大きく書かれた看板の掛かる、真っ赤な屋根に、緑の外壁の大きな建物であった。
屈強な男や、獣人、武器を持った者達が扉を潜るのを遠目で眺めた後、「よし」と雪菜達はギルドの敷居を跨ぐ。
内装は、ある一角には大量の紙の貼られた掲示板が複数設置してあり、隅に木のテーブルや木のイスが複数置かれ、座るスペースがある。
また、二階、三階、四階と続く階段があり、受付カウンターと思わしき場所は三ヶ所で、雰囲気は図書館の受付か、市役所の受付のようだ。
雪菜とシルビィがすたすたと受付に向かうのに、美夜達も続く。
周囲から、不躾な視線が注がれる。
図体のいい強面な男と目の合ってしまった、いのりから「ひっ」と小さく悲鳴が零れるのに、美夜が「い、いのりん……だ、大丈夫大丈夫。せつなんが居るうぅ」と、まるで自分に言い聞かせるように告げる。
永久と正樹は、「え、俺達は?」「ただの肉壁だろ」と何とも言えない会話をしていた。
「いらっしゃいませ。こちら、ギルド連盟事務局ルイーン街支部、受付でございます。ご用件をどうぞ」
雪菜が受付カウンターの前に立つと、短い水色の髪の女性──受付嬢が、にこりと笑い掛けてくる。
雪菜は直ぐに口を開く。
「ギルドに加入したいんですが」
「後ろの方々もでしょうか?」
「……はい、まとめてお願いします」
受付嬢が雪菜の後ろに居る、シルビィ等を見て問う。
雪菜は一応確認するように、後ろを振り返ると、皆一様に同意するように頷いていた。
雪菜は一呼吸置いてから、受付嬢に返答する。
「かしこまりました。では、ギルド連盟及び運営、システム、補足等、ご説明させて頂きますね。我等、ギルド連盟は自由を掲げ、唯一、国に捕らわれず、縛られない独立組織であり、全国の街に支部を構えた大きな組織でございます。統括者はエメラルダ王国にあります、ギルド連盟議会、二十四席議会が担っております。ギルド連盟は加入された方々を総じて、冒険者と呼び、議会から又は方々から入る依頼をあちらの掲示板にて、紙媒体で発注。依頼は大きく分けて、人助け、討伐、採取の三種類。冒険者はそれを受注し、利益を得ます。冒険者の利益は、依頼料から数パーセント引いた金額となり、引かれた金額の半分はギルド連盟の運営資金に、もう半分は市税、または国税として納められます。また、ギルド連盟は人命救助を推奨し、魔物による災害など、人的被害に置いて国からの直接依頼、名指し依頼も請け負います。が、戦争については、その限りではありません。各々の自由意思は尊重しますが、ギルド連盟は一切の関与を致しません。これにより、ギルド連盟は維持され、不可侵の独立組織としてなり立っております。ここまでは、宜しいでしょうか? 何か分からない事などはございませんでしたか?」
「はい、平気です」
後ろで頭を痛そうに抱える美夜と、頭から今にも煙を吹き出しそうな正樹を、見ない振りをして雪菜は頷き、続きを促す。
それに、受付嬢は「続けさせて頂きますね」と話を再開させる。
「冒険者にはランクが存在します。上からSSS、SS、S、AAA、AA、A、B、C、D、E、Fとなり、そのランクによって受注できる依頼が変わり、自分のランク以上の依頼を受注しようとしても、受付にて受理されませんのでご了承ください。ギルド連盟、加入の際に必要な費用は一人銀貨五枚となっており、始めはFランクからのスタートになります。Eランク、Fランクの方々はDランク以上になるまでは月に三回依頼を受注し、達成しないと冒険者の資格が剥奪され、三ヶ月間再加入が出来ない状態になり、次回加入金額が銀貨一枚増加致しますので、お気をつけください。また、Dランク以上の方でも月に一回依頼を受注し、達成しないと翌月に冒険者登録の継続費用として銀貨三枚を頂きます」
小難しい説明を続ける受付嬢に、雪菜は黙って自分の知識との相違点を探す。
後ろで美夜と正樹が遂に撃沈し、きっと漫画であったなら、ぷしゅーと頭から煙が出ている事だろう。
「以上がギルドの説明になります。Dランク以上になりますと、ここに補足事項が追加されます。ギルド連盟とギルドの違いについてもその補足に含まれます。何か、ご不明な点はございますか?」
「いえ、問題ありません」
雪菜は後ろを気にしつつも、永久といのり、それにシルビィが必死に二人の理解出来そうな所を抜粋し、説明しているのが分かり、受付嬢にそう告げる。
「では、続いて手続きを開始させて頂きます。失礼ですが、文字を書く事は可能ですか? もし難しいようでしたら、こちらで代筆も行っております」
「では、代筆で」
「かしこまりました。お名前と年齢、性別をどうぞ」
「私がセツナ・クリハラ、女、十八歳。青髪がナガヒサ・アオセ、男、十八歳。緑髪がイノリ・ミドリカワ、女、十八歳。リボンがミヨ・チャゴシ、女、十八歳。黒髪がマサキ・ヤマシタ、男、十八歳。銀髪がシルビィ、女、で……」
「あ……! わたくし、十六歳でごさいます……!」
雪菜の言葉を聞きながら、受付嬢はさらさらと登録用紙にペンを滑らせる。
淡々とギルド連盟への加入登録を進める受付嬢と雪菜。
途中、シルビィの年齢が分からずに、振り返った雪菜にシルビィが慌てたように声を上げる。
「登録用紙への記入が完了致しましたので、続いてお一人、銀貨五枚のお支払いと、こちらに皆様の拇印をお願い致します。こちらには拇印を見分ける魔法が付与されておりますので、必ず名前と拇印が一致するようにお願い申し上げます」
受付嬢の言う通りに、加入費用を支払い、それぞれ登録用紙に拇印を捺した。
「はい、確かに。では、これより二重登録確認、及び新規登録確認をさせて頂きます。スキル、情報処理発動」
登録用紙を受け取ると、受付嬢はにこりと微笑み、魔道具である本型のケースにそれを入れると、目を閉じ、手を翳し、スキルを発動させた。
スキル『 情報処理』は対象から必要な情報を処理、照会、検索するスキルであり、ギルド連盟事務局の役員になるに当たり、必須のスキルだ。
そして、それと合わせて用いられる魔道具(本型のケース)、情報共有機は、二十四席議会により作られた、オリジナル魔道具であり、中へ入れたものの情報を記録し、同種類の魔道具と同機、情報を共有、またそのデータを元にギルドカードを発行する道具である。
(情報、検索中。照会、処理……)
頭の中を流れて消えて行く膨大な情報群。
それは今、必要なもの以外を脳に記憶する事はなく、情報検索が続けられる。
「情報処理が完了致しました。セツナ様、ナガヒサ様、イノリ様、ミヨ様、マサキ様、シルビィ様。貴方方が新規登録者である事が無事に確認され、登録が承認されましたので、ギルドカードを発行させて頂きます」
受付嬢はにこりと笑みを浮かべながら、情報共有機より出てきた、茶色のカード──ギルドカードを取り出し、雪菜達に差し出す。
「茶色がFランク冒険者のギルドカードです。ランクが上がりますと、そのランクに合った色のカードが新たに発行されされますので」
雪菜達は、受付嬢の説明を聞きながら、自分の名前が書かれたギルドカードを受け取った。
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やっとギルドです!
次回は依頼受注!
次回更新は、時間がずれまして、午後1時か夜11時頃の投稿を予定しております!
以下、おまけ。
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受付嬢「セツナ様」
雪菜「何でしょうか?」
受付嬢「後ろのお二方は平気でしょうか?」
雪菜「あー……はい、問題ありません。後でみっちり教えます」
受付嬢「そうですか。もし、もう一度説明が必要になりましたら、気軽にお声掛けください」
雪菜「ありがとうございます」
頭から煙を出す二人に対して、事務的な受付嬢と雪菜(笑)
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