表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】邪神に手駒として召喚されたらしいんですが(仮題)  作者: 龍凪風深
第一章 異世界に召喚されたらしいんですが
18/49

閑話 国王ガルシアと国軍大佐マリク


 軍事国家アルトロメリア、王城。

 謁見の間にて、王座を前に、マリクとイリス、両名が跪き、こうべを垂れていた。


 「おもてを上げろ」


 王座に座するは、炎のように真っ赤な癖のある長髪に、赤茶色の瞳をした男性──アルトロメリア国王、ガルシア・ヴァンタレス・アルトロメリア。


 ガルシアより許可の下った二人は「はっ!」と、顔を上げた。


 「申し開きはあるか?」


 ガルシアの平淡な声が、この室内にやけに響く。

 やっべ~、これどうすんですか~、、と言いた気に口元を引きつらせたイリスを尻目に、マリクは自らの口角を上げる。


 「いやはや、陛下。先に伝令した通りですよ」

 「ほう?」


 はっはっはっ、と今にも笑い出しそうな笑顔でマリクは言う。

 それに、ガルシアの瞳が細められ、イリスがイリスちゃんの休暇が終わたー、と内心で諦めたように笑った。


 「地を揺らすもの(フェンリル)に妨害されまして、任務は失敗致しました。わたくし共もそれはもう命からがらで……」


 軍服の袖を伸ばし、にやけた口元を隠すと、マリクはよよよと泣き真似をする。


 「茶番は要らんぞ。余の命を覚えているか?」

 「はい、しかと」

 「なれば、何故このような結果になった? お前ならば完遂出来ずとも失敗まではしないような、簡単な任務であろう?」


 ガルシアの鋭い眼光が、マリクを射抜くも、マリクは何処吹く風。

 隣でイリスは、素知らぬ顔で、会話の成り行きを見守った。


 今回、ガルシアがマリクとイリスの両名に、命じた任務は一つ。

 ウルフの森に設置された召喚陣より、召喚された邪神の手駒を保護し、自分の前に連れて来る事、だけである。


 「陛下はわたくしを買い被りすぎでは?」

 「買い被っているつもりはないが?」


 まるで睨み合うように、二人が見つめ合う。


 「……はぁ」


 先に視線を逸らし、折れるように溜め息を吐いたのはガルシアであった。


 「そうだな、余の買い被りすぎであったかもなぁ、マリク?」

 「えぇ、えぇ、そうですとも? ガルシア様?」


 片や諦めたような、呆れたようなガルシアに、片やふふふふと楽しげに笑うマリク。

 何とも言えないその光景に、イリスは一人苦笑する。


 (あーあ、本当、腹の探り合いならイリスちゃんの居ない所でやってくださいよ~)


 この二人はいつもこうだ、とイリスは小さく溜め息を吐く。

 ガルシアも、マリクも毎回何かしら企んでは、互いに腹の探り合いをする。


 腐れ縁。昔馴染み。なんて、言葉の似合う二人の関係。

 本人達と両親、それにマリクの直属の部下であるイリスくらいしか知らない関係。


 「ならば、再び命を下す。国軍大佐マリク・スーヴェル、並びに国軍中佐イリス・ロックバレー」


 ──今回逃がした邪神の手駒を保護し、余の前に連れて来い。

 見付けるまで、保護するまで、帰還は許さない。


 ガルシアはそう、淡々と命令を下した。

 二人は静かに、大人しく、「はっ!」と頭を垂れる。


 下を向いたマリクの口元が、三日月を描いた気がした。




 ◆◆◆◆◆◆



 あれから、謁見の間を後にしたマリクとイリスは、人の居ない城内の廊下を歩く。


 足取り重く、暗い雰囲気のイリスとは対照的に、マリクの足取りは実に軽やかであった。


 「う~、う~、う~」

 「何を駄々っ子のように唸っているんです、イリス?」

 「う~、だって~! 大佐のせいでイリスちゃんの休暇が~ッ!!? 明日お休みだったのに、イリスちゃんまた遠出なんてぇ~ッッ!!? イリスちゃんのぐーたら生活はぁ~ッッ?!!」


 うわーん、とまるでこの世の終わりのような表情を浮かべたイリスが、泣言を零す。

 それに、マリクは笑いながら言う。


 「はっはっはっ、人は道連れ世は地獄と言うではありませんか」

 「いや、言わないです」


 ことわざのような可笑しな事を言い始めたマリクに、イリスは思わず真顔になり、標準口調でばっさり返す。


 「そうでした?」

 「少なくともイリスちゃんは知らないです~」


 すっ惚けたように問い返すマリクに、イリスは口調を戻して告げる。


 「まあ、いいではありませんか。さあさあ、邪神の手駒を捜しましょう」

 「はーい。て、大佐また陛下の命に背くつもりじゃないですよね~?」

 「はて? 何の事やら?」


 また惚けるように首を傾げるマリクに、イリスら 目を細めた。


 「何かやるなら、イリスちゃんの知らない所でしてくださいよ~?」


 素知らぬ顔でそう告げるイリスに、 マリクはくすりと笑った。


 「善処しますよ。殺さないようにね」


 脅しが現実にならないように、精々足掻いてくださいな? 邪神の手駒?

 マリクはこれからの任務の事を考え、楽しげに言った。





.


これもカットした話です!

どの辺に入れようか迷ったお話。


国王と大佐と中佐のお話。


次回、更新は日付が変わった頃に投稿を予定しております!


本日は閑話に付き、おまけはお休みです。



.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ