第13話 お金目当てのゴロツキは何処にでも居る
あれから、買い物をして、道具屋を後にした五人は、街中を散策するように歩いていた。
因みに、買ったものは皮の鞄六個に、その中身として体力回服薬小六個、魔力回服薬小六個、マント五着、魔力を注ぐ事により明かりを灯す魔力角灯六個、水筒五個、斬る以外では傷付かず、燃やしても燃えず、劣化もしない魔法縄六つ、 飯盒(お米を炊いたりする鍋のような器具)と思わしき物六個に、クッカー(サバイバル用の鍋)と思わしき物、深型六個に、浅型六個、それにお玉などの調理器具を六個ずつである。
合計金額は、 金貨十五枚。
本当は端数があったが、そこは店主が先程のお詫びとしてまけてくれた。
買った道具の中で一番高いのは魔法縄で、二番目は魔力角灯らしい。
五人は、一人一個ずつ鞄を持ち、中身は男である精市と叶太のものが、重めになるように分配した。
そして、そろそろ、修也達と合流すべきか、と五人で話し合っていたのだが、そこに思わぬ邪魔が入る。
(……つけられてる。けど、ただの学生の私にバレるとか、随分と雑な尾行だな)
視線のみを背後にやり、内心で呟くと、前を行く四人に視線を移す。
すると、丁度精市が八重子に、叶太が歩夢に、何かを耳打ちしていた。
不自然にならないように気を付けてか、それは一瞬で、雪菜がそちらに顔を向けていなければ、気付かなかっただろう。
(赤坂くんと高城くんも気付いてる? 多分、街に居る限り撒いても意味ないと思うから……つけてる理由聞いてから伸す? いや、目的なんて十中八九お金だよね)
ふむ、と雪菜は少々思案した後に、今唯一お金を──金貨百枚を所持している精市に、声を掛けた。
「赤坂くん、一度荷物置きに宿に行くよね?」
「! ……そうだね。一度置きに行こうかな」
「じゃあ、私が旅道具見てくるから、お金貰っていい?」
「ああ、お願いしようかな」
突然の雪菜の訳のわからない問い掛けに、精市は一瞬眉を潜めたが、直ぐにその意図に気が付き、話を合わせる。
ちんぷんかんぷん、と言ったように頭を悩ませる八重子と歩夢は「さ、行こうなー」と叶太に背を押されていた。
「ん、了解。皆分の見とくから。お店で待ってるよ」
そう告げる雪菜に、精市は全てのお金を手渡し、代わりのように皮の鞄を受け取る。
雪菜はお金を受け取る際、一瞬精市に「念話。二重尾行。お金。囮」と耳打ちすると、スクール鞄にそれを仕舞い、ひらりと手を振って、四人とは別方向に歩き出す。
(こっちについて来た。やっぱり狙いはお金か)
別れ際、精市に口パクで「気を付けて」と告げられたのを思い出しながら、足早に歩く。
向かう先は、路地裏。
このまま歩いていても尾行が続くなら、寧ろ出て来て貰って返り討ちにする方がいい。と、考えたのだ。
雪菜には唯一身を守る、攻撃を防ぐスキルがある。
最悪、一人ならそのスキルを乱用すれば逃走する事も可能であるし、攻撃の通じない雪菜に相手側が諦める可能性も、無きにしも非ずだ。
(赤坂くん達が二重尾行してくれるとして、不審に思われないように少し歩いてからだとしたら……少々タイムラグが発生するか)
無言で通りを歩き、思考する。
すれ違う人々の数が、徐々に減って行く。
『栗原さーん、聞こえてるー?』
(! 高城くん?)
ふと、雪菜の頭に直接、叶太の声が響き、雪菜はそれに返事をするように、内心で声を上げる。
『ん、聞こえてんね~? 今からUターンして二重尾行に入るから、何処向かってるか教えて?』
(了解。先ず、丁度別れた所、左側、食堂のある道を真っ直ぐ……)
念話のスキルにより、雪菜は叶太達に、今自分が進んでいる道を案内する。
何処を曲がるか、目印は何か。
そうしている内に、自分は路地裏へと到着した。
(……で、そこを右に曲がった路地裏に居るから)
『うし、今行くから待ってて! くれぐれも無茶はしないよーに!』
ぷつん──電話が切れるように念話が終了される。
最後に、念を押すのを忘れずに。
雪菜「それは尾行者次第なんだけど」と小さくぼやき、溜め息を吐いた。
(さて、と。どう来る?)
路地裏に入り、くるりと後ろへ振り返る。
すると、丁度軽装な男三人が嫌な笑みを浮かべて、こちらに近付いて来るのが見えた。
「お嬢さんお嬢さん」
一人の男が声を掛けてくる。
雪菜は何でもないように返事を返す、「私に何かご用ですか?」と。
男達は更に笑みを深めた。
「俺達、とっても困ってるんだ」
「だからさ」
「そのお金をくれないか?」
予想通り過ぎる男達の言葉に、思わず雪菜の口から「はぁ?」と、低い声が零れる。
「お金がないなら働けばいいのでは? 何故、私達のお金を見ず知らずの貴方達に渡さなければならないのです? 馬鹿ですか? 阿呆ですか? 単細胞ですか?」
小さく息を吐くと、雪菜は心底呆れたように言う。
今度は男達から「あぁ?」と、低い声が零れる番だった。
「嬢ちゃんさぁ、今の状況分かってるか?」
「分かってますよ。お金を持った丸腰の私と、武器を持った三人の下衆野郎」
雪菜の言葉に、男達の眉間に青筋が刻まれる。
(三人程度なら……こいつ等程度ならいけるかな?)
男達が腰に下げていたダガーナイフに手を掛けるのを見ながら、雪菜は臨戦態勢を取る。
危なくなれば防壁の歌声を使用すればいい。
何より、尾行もまともに出来ないこいつ等にカツアゲされるようじゃ、私はこの世界で生きていけないような気がする。
雪菜はそう思考して、相手を見据えた。
と、同時に背後の道から、走る音が響く。
(増援?)
目の前に敵がいる以上、振り返る訳にもいかず、雪菜は道の端、壁を背にして、左右を見渡せるようにする。
三人の男が「あ?」と、足音の主を見た。
(仲間じゃない? なら、何? マントと……マントとマントとマント? うわ、マントがゲシュタルト崩壊しそう。いや、崩壊するにはまだ足りないか? )
男達を警戒しつつ、雪菜も眉を潜めて足音の主を確認する。
視界に映るのは薄汚れたマントと、それを追うマントとマントとマント。
激しく怪しい光景である。
そのマント達は、皆一様にフードを目深に被っている事から、顔は見えず、それが更に怪しさに拍車を掛けていた。
「た、助けてくださいッ……!!」
そして、追われていた小柄なマントは雪菜を視界に納めるなり、女性らしい高い声で、悲痛な助けを叫んだ。
雪菜に抱き着こうとするおまけ付きで。
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やっと、主人公が戦います。
次回、ゴロツキを伸す?笑
ここら辺からまた、お試し版とあまり変わらなくなります。
カットした話ならまた入りますが(笑)
次回、更新は日付が変わった頃に投稿を予定しております!
以下、おまけ。
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晋也「うおー! やべぇ、やべぇ、やべぇ!」(興奮)
修也「落ち着け、加鳥」(呆)
美夜「わぁー、しんちゃんってばテンションマックス」(笑)
晋也「うおー! けも耳! けも耳! けも耳ぃぃッッ!」(目きらきら)
永久「あれは駄目だろ」
正樹「だろーな」
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