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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
85/283

公認?

「ちょっと茗子、待って」

朝からせわしないお母さんが私の後をついてくる。

「なんで、私もう行くから」

私が玄関で靴を履きながら答える。

「いま、お母さんも一緒に出るからーー」


ーーーー一緒に出なくていいって…。


「おはよう、茗子」

「ハルくん…おはよ」

私はぎこちなくハルくんに挨拶する。


「おはようございます」

ハルくんが、私の後ろにいたお母さんにも挨拶する。


ーーーなんか、気まずい。


「あら、春くん!おはよう!もしかして今日も茗子を待ってたの?」

「はい。あ、一昨日は夕御飯ご馳走さまでした、おいしかったです!」

ハルくんがお母さんににこやかに挨拶する。


「嬉しいわー、また食べにいらっしゃいね」

「ありがとうございます。おばさん、実は話したいことがあったんです…俺たちーー」

「わぁーーっ、ちょっとハルくん…」

言いかけたハルくんの口をあわてて手で押さえる。


「何なの、茗子、そんなにあわてて」

クスクス笑いながらお母さんが言う。

「知ってたわよ?あなた達が付き合い出したことなら。」


「「え…」」

私とハルくんの声がハモる。


「春くんのお母さんも、気付いてわよ」

軽くウインクすると、

春くん、茗子をよろしくねーと手を振りながら会社へいそいそと行ってしまった。




ーーーーお母さんも、ハルくんのお母さんも…

知ってたなんて…。


「バレバレだったか…」

ハルくんが照れたように笑うと、私の手を繋ぐ。


「じゃ、堂々と行こうか!!」

「うん」


こうして手を繋ぐだけで、

ハルくんへの気持ちで胸が暖かくなる。



「ハルくん、そういえば来月の男女混合スポーツ大会、何に出るの?バレーボール?ソフトボール?」


「サッカーかなー。今日決まると思う。」


ーーーサッカーか…。私には無理かも。


「茗子は?」

ハルくんが私の顔を見て尋ねる。

ーーーそれだけのことなのに、愛しくて幸せを感じる。


「私は…バスケにしようかな~。うちのクラスも今日決めるつもり!負けないよ!!」

「お、言うねー」

私の言葉にハルくんが笑う。






「じゃあまた」

「うん、またね」

靴箱の場所が違うので、

いつも私の靴箱の近くで別れる。



ハルくんが行ってしまうのを、

少し名残惜しくて見送ると、私は靴を履き替えようとして驚く。


ーーー上靴が、ない…。

確かに昨日帰るとき、入れたのに。



仕方がないので、

職員室までスリッパを借りに行く。


ーーーこれは、嫌がらせ?ひどい…。


私がイライラしながら、

歩いていると、日直の日誌を持った航くんが、職員室から出てきて、こちらへ歩いてくる。


「おはよ、茗子ちゃん」

私が目をそらして、すれ違おうとすると、

航くんが私に声をかけてくれた。


「え…」

ーーー話し掛けないでって、言ってたのに…。


私が驚いて挨拶しそびれていると、

航くんが私の足元を見て驚いたように言った。

「茗子ちゃん、上靴履かないの?」

「あ、うん…それが、朝来たら無くなっていて…」


「マジかよ…探すの、手伝おうか?」


「ううん、明日買うから大丈夫。今日はスリッパを借りようかと思って」



ーーーーーなんで、

もう話し掛けないでって言ってたのに…。


中学の時に戻れた気がして、

私は泣きそうになった。


「許せねーな、幼稚な真似して!!」


ーーー航くんは、

上靴が無くなって泣きそうになっているのかと思ったのか、私の代わりに怒ってくれている。



ありがとう。

航くんは、本当に優しいね…。


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