初夜
「からだ…平気?」
ハルくんが私に言う。
「平気…」
明かりの消えたリビングで、
ソファーに身を沈めたまま、私は答える。
ーーー私、いま、ハルくんと…。
ブランケットで身体を隠す。
ーーーー急にすごく恥ずかしい…。
「あ、やべ…もう22時か…」
「ほんとだ…」
時計を見ると、もうすぐ22時になるところだった。
「離れがたいけど、行くよ…」
ハルくんが服を着ると、私の頭を撫でる。
「今度は鍵、かけてな」
「あ、うん」
返事をして立ち上がろうとすると、
ハルくんがそれを制すように座ったままの私の額にチュッと軽いキスをした。
「鍵、貸して?」
「え?」
「鍵かけたら、家のポストに入れとく。後で受け取っといて。」
「なんで?」
「歩けないかなーと、思って」
ーーーーハルくんの言葉にボッと赤くなる。
「鍵…玄関の小さな箱に入ってるの…」
私が赤面したまま、言うと、
「オッケー、じゃあおやすみ」
ハルくんがも一度キスをしてリビングを出ていく。
玄関の鍵が閉まったあと、
ポストの中にチャリーンと鍵が落ちた音がした。
シャワー浴びよう…。
ふらつく足取りでシャワーを浴びに行く。
お風呂からあがると、
お母さんが帰ってきていた。
「あ、おかえり…」
どぎまぎしながら、言う。
「ただいま、ごめんね今日。寂しい夕御飯になっちゃったでしょ?」
「あ、うん、大丈夫…」
ーーーハルくんと食卓に座って、
食べていた時間を思い返すと胸が暖かくなった。
「あら、なんか良いことでもあったのかしら?」
「え、なにもないよ…寝るね、おやすみ」
早口で言うと、二階の自分の部屋に行きかける。
ーーーあ、鍵…。
登りかけた階段を降りて、
玄関横のポストに手を伸ばす…。
あれ?ない…。
「あ、ポストに鍵入ってたから、そこの小箱に入れといたわよ」
お母さんが言う。
「おやすみ」
何か含み笑いして、お母さんがそう言うと、
リビングへ戻っていった。
ーーーもしかして、なんか気付いてる?
私はドキドキしながら、二階への階段を登っていった。