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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
83/283

ハルくんとの時間

「茗子は今日何か作ったの?」

帰りながらハルくんが聞く。


ーーー良かった、いつものハルくんだ。


「うん、クッキーを…」

と言いかけて、一瞬言葉を止める。


「クッキー!俺、好き」

「作ったんだけど…さっき体育館に行く途中で、落としちゃって…」

「そうなんだ、残念」

ハルくんが優しく言う。

「ラップでくるんであったんだけど、やっぱり落としたのは…」

「なんだ、じゃあチョーダイ?」

「え…」

「中身は無事でしょ?」

「うん、まぁ…」

鞄からクッキーを出す。

包んでいたサランラップを開くと、

ハルくんがクッキーをつまんで食べた。


「ん、おいしい」

嬉しそうに言ってくれるハルくんに、

私は胸が締め付けられた。




「今日、ちょっと茗子の家行ってもいい?」

ハルくんが言う。

「え…」


ーーーーいつもは公園なのに、急にどうして?

ドキドキしながら思っていると、

「昨日のお礼、おばさんに言いたくて」

ハルくんが笑顔で言う。

「なんか、違うこと考えてた?」



家に帰ると、お母さんは居なかった。

置き手紙と夕御飯が用意されていた。


『お父さんに着替えを届けに行ってきます

夕御飯チンして食べてね』


ハルくんが後ろから手紙を覗きこむ。

「あれ、おばさん今日遅いんじゃないの?」

「そうみたい」

私が手紙をゴミ箱に捨てながら言う。


「じゃあ、夕御飯食べたらまた来る」

ハルくんがそう言うと、すぐに自分の家へ戻っていった。



ーーーシーンとした部屋に一人、急に心細くなる。


用意されていたごはんを温めて、

独りで食べ始めると、

ガチャッと玄関が開く音がした。

「茗子、上がるね」

ハルくんが来る。


「ハルくん…早かったね…」

「急いで食べてきた…茗子が心細いかなと思って」

ーーーハルくん…。


「本当に、急いで来たんだね…」

つい、クスッと笑みがこぼれた。


「ごはんつぶ、ついてるよ」

「え…」

ハルくんが左の口元に手をやる。

「違うよ、こっち…」

ドキドキしながら右側についていたごはん粒をとってあげる。


「ありがと」

照れたようにハルくんが笑う。


ーーー急に部屋が明るくなったみたい。



「そう言えばハルくん、今日昼休みうちのクラス来てたの?」

「あ、うん…」

私が尋ねると、ハルくんの表情が曇った。

「クラスの子に聞いたの…航くんと何話してたの?

今日茗子(かのじょ)を痴漢から助けてくれてありがとうってお礼を言いに行ったんだよ」

ーーーそうだったんだ…。

ハルくんの表情が曇ったように見えたのは一瞬で、

優しい声で言うと、

「それより、茗子、ごはん冷めちゃうよ?」

と微笑んで言った。




ごはんが食べ終わり、食器を片付けると、

テレビをつける。


うちのソファーに、

ハルくんが居て一緒に食後の時間(とき)を過ごせるなんて…。


なんだか夢みたい。


「ハルくん…はい、コーヒー」

「ありがと。」


ーーーまるで、新婚みたい…。

自分で意識して赤面する。


「茗子、顔赤いよ?」

ハルくんが苦笑する。


「おいで…」

ハルくんが隣に座った私の頬を包みこんで、

優しいキスをする。


「!!」


ーーーキスがいつもと違う。


「んっ…」

…ハルくんの舌が私の口の中に入ってくる。

「ふ…ぁ…」

なんだか自分じゃないような声が出てしまう。

ーーーなんだか、フワフワする…。


私はハルくんの腕にしがみつく。



暫くして、唇が離れると、

私の吐息が漏れた。


「本当は、もっと先もしたい…」

「へ…」

ハルくんの言葉に私の声が裏返る。

ーーーそれって…それって…。


「誰よりも先に俺が触れたいから…」

「ハルくん…」

「でも、茗子が嫌がるならしない。」

「嫌なわけ…ないよ」

ーーーハルくん…。


「茗子、触れても、良い?」

私は黙って頷くと、自分から初めてハルくんにキスをした。


ーーー私も、ハルくんに触れて欲しい…。


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