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いっこの差  作者: 夢呂
【第二章】
82/283

クッキー

放課後は彩と料理部に顔を出す。


正式に入部となり、今日はお菓子作りをする。

「今日はクッキーを焼きます」

ーーうまく、いくと良いな。

「彩、頑張って作ろうね」

朝の出来事を振り払うように、声を出す。

ーーー上手く出来たら、ハルくんに差し入れしよう。


私のせいで朝から心配かけて…

さらに痴漢に遭ったと聞いたとき、

ハルくんは私を責めず、ただ、

なにもしてやれなかったと悔しそうに言ってくれた。





クッキーが焼けたので、

片付けをしてバスケ部に向かおうとすると、

「ねぇ茗子」

彩に声をかけられる。

「春先輩と仲西くん、なんかあったの?」

「え?」

ーーー朝のことかと思ってドキリとする。


「なんか、うちらが昼休み菜奈のクラスに顔出してるとき、仲西くんが春先輩に呼び出されたらしいよ?」

「え…?」

驚いて目を見開く。

「なんで…?」

「だから、それを聞いてるんだけど?」

笑いながら彩が言う。

「茗子も知らないのか、気になるなー!二年のイケメン代表と一年のイケメン代表の話!」


「そうだね…」

ーーー私も気になる。



「あ、私、愛梨と菜奈待ってるからサッカー部寄るけど、茗子は?」

「あ、私はバスケ部に…」

「あぁ、差し入れね?」

察した彩がからかうように言う。

「私も仲西くんに差し入れって持っていこうかなー」


「彩と愛梨、航くんと仲良いよね…」

私が言うと、

「え!別に?普通じゃない?」

キョトンとした顔で彩が言うと、

「じゃあねー」

と、サッカー部へ行ってしまう。


私も、

冷えたクッキーを持って、バスケ部へ向かった。



体育館を覗こうと行くと、

他にも女子が覗いてキャーキャー騒いでいた。


「春くん、またスリーポイント決めたんだけど!!」

「マジカッコいい!!」


私が後ろから覗こうとすると、

二年の先輩が私に気付く。


「あ、“二股彼女”の相田さんじゃない?」

「今日は、バスケ部の方なのー?」

ーーーなんでそんなこと言われないといけないの?


私が黙っていると、

「ちょっと可愛いからって、調子にのってんじゃねーよ」

ドンッと押されて、

私が体育館への段差を踏み外してしりもちをつく。


「うわ、パンツ見えてるし…」

「だっさ…」

クスクス笑いながら、先輩達が行ってしまう。



ーーーーなんで、

ハルくんを好きなだけなのに…

こんな目に遭わないといけないの?



私は、

転んだ拍子に落としてしまったクッキーを拾うと、

体育館に背を向けた。


「めいこっ」

ハルくんが体育館から顔を出す。


ーーー見られてないよね?今の…。


「来てくれたんだ?今片付けたら帰れるからちょっと待ってて」

ハルくんが嬉しそうにそれだけ言うと、

すぐにバスケ部の仲間とモップがけをする。


私はそんなハルくんを見ながら、

急いでクッキーを鞄に押し込む。



ーーーハルくんを好きなだけなのに。











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